カフェTimeと 現実

最近体が重い。
そう思ったのと、年明けを迎えたのはほぼ一緒のタイミングだった。
私は元々ダイエットが好きで、良く鍛えていた。
20歳の時に筋トレにハマって、そこからボディーメイクの魅力に取り憑かれてからは周りが距離を置くレベルの筋トレ馬鹿になっていた。
しかし、20代も終わりを迎えると食欲と運動欲のバランスが傾く。
運動量を増やしても体重が落ちにくく、食欲だけが増加する。
そこからはもう負のスパイラル…
29歳を迎え人生初のリバウンドの真っ最中だった。
 うん、このままではまずい。
 非常に良くない。
三十路にもなると時間とお金に少しだけ余裕が出てくる。
食事制限のダイエットに失敗し、成り行きで近所のジムを見学に行ったら美人のトレーナーさんに心を奪われまんまと入会していた…
その悔しさと、月額の契約金の高さに負け私は重い体を動かした。
ジムで3時間ほど体を動かすと、久しぶりにいい汗をかいた。
運動をする事はやっぱり気持ちいい。
近年、コロナウイルスの猛威で家に引きこもる時間も増えて鬱々としていたせいか、久しぶりの運動で気持ちだけは昔に戻った。
汗を流すためにシャワー室に入り現実に引き戻される…
私は憎々しげに下腹にたんまり付いた脂肪を横に伸ばした。
あぁ…朝、両親から送られきたお餅を冷蔵庫にしまい忘れていた。
その事を思い出しまた少し悲しくなった。

それから今、私はコメダ珈琲にいる。
時刻は20時30分を少し過ぎたところ。
今日のジムの事を思い出しアメリカンを啜っている。
夕飯は炭水化物を控え、鶏むね肉をスープに入れて腹持ちを良くした。
白米の変わりにさつま芋を食べて空腹を満たす。
しかし、しかしだ。
なぜ、カフェと言うところは誘惑が多いのか。
当たり前なのだが、周囲の食事の音、店員さんが運ぶナポリタンの香りが鼻腔をくすぐる度に私の食欲が悲鳴をあげる。
あのトマトとケチャップと少しの油の香りは反則だと思う。
人類を惑わせる香りだ。
私は事切れそうな自我を寸前でたもちアメリカンの薄いニガ味を味わっている。

意識をそらすように手元の本に目を移す。
水野敬也゙夢をかなえるゾウ‪”‬ 最近、近くの本屋でたまたま買った本なのだが、主人公の気持ちが凄く今の私に重なる。現状に満足できない自分。何かになりたい自分。でも、何にもなれない。
ダイエットも新しい自分に変わりたい所から始まったのだ。
人間、内面を変えるよりも外見を変える方が遥かに簡単だろう。
目に見えて結果がわかるし、その変化に自信が持てる。
でも、内面はどうだ。
変化が分かりにくい、その変化もいいものなのか悪いものなのか自身で判断も付きにくい。
友達からは、変わったよね。って言われてもイマイチ自分ではわからなかったりする。逆に自分が凄く変化したと思っても周りには伝わらない事も多い。
人の中身など簡単には変わらないものだ…
そんな事を思いながら、残り少ないアメリカンを一気に飲み干した。
そうして私は自分の空腹に負けてチョコレートケーキを注文する。
ほら、変わらないのだ…
もし、隣にガネーシャが居たのなら「何してんねん!」と怒られるのだろうか。
そんな事を考えながら私はチョコレートケーキを口に頬張った。
また、明日もジムに行こう。
そんな小さな思いを胸に秘めながら。

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