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「鴨乃橋ロンの禁断推理」OP「いけないfool logic」の感想

UNISON SQUARE GARDEN19枚目のシングル、アニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」に書下ろした「いけないfool logic」の感想です。

トップの写真は池袋タワーレコードの限定レシート。配信やアニメのオンエアに先駆け、発売日にCDを買った人がいち早く新曲を聞くことができる、という田淵らしいこだわり仕様で、一足先にMVが見れるシリアルナンバーも付いていました。

個人的にはサブスクやアニメのオンエアよりCDの発売が遅くてもCDを買わない理由にはなりません。歌詞カードやクレジットを読みたいので。仕事が立て込んでいて発売日に買いに行けない、通販でも受け取りが手間という場合があるので、配信も同時だとありがたいかな。

ただ、CDを買ったファンを大事に考えてくれることは手厚い心遣いだなと感じます。今の時代、CDの存在価値とは何か、もっと考えられてもいいのかもしれません。SKY-HIは「CDはグッズだ」と言い切っていますが、入手する意味があると作る側も買う側も幸せですよね。

個人的にグッズ(質の高くないノベルティみたいなものや、私には使い道のないポストカードやポスターなど)には興味がないので、一番嬉しいのはライブの先行申込シリアル番号です。次にレア映像やセルフライナーノーツかな。「Ninth Peel museum」で配布していた、メンバーによる全曲コメント冊子のようなものにときめく。インタビュアーを介さないメンバー全員の声って貴重じゃないですか。

最初このアー写を見た時、「背景のQRコード的なものは何なのだ」と思ったのですが、ミステリーものにかけて迷路?迷路なのか?気が付くまでに時間がかかったわ。


いけないfool logic

未知なるものに対する引っ掛かり

ストリングス・ブラス・ピアノが華やかで、まず最初に「like coffeeのおまじない」のようなハッピーさと、「mix juiceのいうとおり」のような流麗さを感じました。sumikaの「Shake & Shake」の華やかさも少し思い浮かべたり。そして「春が来てぼくら」のような、自分には馴染のない展開が強烈に引っ掛かりました。

未知なるものに遭遇すると、理解が追い付かないことがあります。良い意味も悪い意味も含めて。ユニゾンの音楽は出会った頃からそうでした。「なんだ?この聞いたことのない音楽は?」という引っ掛かりから入り、いつの間にか好きになったのですが、ファンになってからもしばしばそういう現象が起こります。

先ほど書いた通り、直近では「春が来てぼくら」、それから「kaleido proud fiesta」、そして「いけないfool logic」が該当します。全てに共通するのは、構成の複雑さや転調、展開の目まぐるしさなので、そこが自分には引っ掛かるのだと思います。

①「春が来てぼくら」→転調し過ぎで違和感、という若干マイナスの気持ちから入りましたが今は好きです。新しい世界が広がった気がする。
②「kaleido proud fiesta」→どっちに転ぶかわからないジェットコースターみたいなストリングスラインにドギマギ、いまだかつてない高揚を味わった唯一無二の曲。大好き。
③「いけないfool logic」→全体の構成がどうなっているのかよくわからない引っ掛かりに揺さぶられるも、耳が慣れたらだいぶクセになってきたところではあります。

「なんかよくわかんないけどドキドキする!好き!」「なんかよくわかんないから整理しないと気持ちが追いつかない、モヤモヤ」というパターンに分かれます。カレイドが前者で、他の2曲は後者。

3曲の構成

脳内を整理するために、3曲それぞれの構成を自己流で書き出してみました。

◆いけないfool logic

【1番】
<サビ2>君の心が必要で…
<A>純粋でも 順調でも 順風でも…
<B>平行線のランデブー…
<サビ1>いけないfool logic…
<サビ2>君の心が必要で…

【2番以降】
<A>晴天なり 曇天なり 荒天なり…
<間奏>
<C>shake the world!…
<B>平行線のランデブー…
<サビ1>いけないfool logic…
<サビ2>君の心が必要で…
La La La…

2番以降の区分けがよくわかりません。分けなくて良いのかもしれないが。突如出てくる「shake the world!」のパートにギョッとします。でも、リズムがはっきり切り替わるのはけっこうタイプです。直前の「さあ!ここから何かが始まっちゃうよ!」と言いたげなパート、期待感が高まります。コミカルなせいか「Micro Paradiso!」風味を少し感じる。

<C>は、「スーパーマリオ」でマリオがスターを取って無敵に切り替わった時の音楽みたいな高揚があります。アニメの主人公2人が無双モードに突入したイメージを持ちました。歌詞に「ここにルールなんてない  映画の世界みたいにfree」とありますが、曲もルールを取っ払って自由に作ったのかな。

JAPANのインタビューを読んだら、小説家が「勝手に登場人物が動き出す」と言うことがあるがそれに近い、曲が行きたがる方にほっといたらああなったと田淵が話していましたが、そんな作曲パターンもあるんですね。

<C>の後、急速に<B>に戻る様子が、異世界から現世に引き戻されたような、揺り起こされて夢から覚めてはっとするような、コメディ漫画の展開みたい。なんなら最後のサビは、半音上がるんじゃ?と勝手に耳が身構えましたが、あら上がらなかった、と肩透かしを食らいました。
始めは一連の展開にやや置いてけぼりになりましたが、慣れるとクセになると感じています。

あと、メロが切り替わるポイントで、いかにもユニゾンらしい3連符が入って来るのも引っ掛かるポイントです。

最後に「ラララ」が来ると「君はともだち」を連想しますが、曲調が全然異なるので、同じ「ラララ」でも全く違った印象で面白い。

「プレミアMelodiX!」でスタジオライブがオンエア予定ですが、テレビサイズの尺だと<C>はカットされるのかな。フルサイズで収録してくれていた「Love music」が終了してしまって本当に残念です。

◆春が来てぼくら

【1番】
<A>咲き始めたたんぽぽと…
<B>小さな勇気 前に進め…
<サビ>また春が来てぼくらは…

【2番以降】
<C>すぐこんがらがって悩んで…
<B>髪型変えて一個パチリ…
<サビ>筆を躍らせる僕らは…
<D>夢が叶うそんな運命が嘘だとしても…
<間奏>
<サビ>また春が来てぼくらは ごめんね欲張ってしまう…
<サビ>また春が来てぼくらは 新しいページに絵の具を落とす…

「春が来てぼくら」も2番以降をどう区分けして良いのか私にはわかりません。どこへ向かうかわからない不安のせいかモヤモヤする、という思いが最初はありました。特に<C>から<B>の流れ、「あれ戻るの⁉」ってつんのめりそうに。慣れると気持ち良さがあるのだけれど。

◆kaleido proud fiesta

【1番】
<サビ>かくしてまたストーリーは始まる
<A>これが運命だったんだ…
<B>C'mon please DJ, 問いただしてくれ…
<サビ>その願いを叶えようか…

<間奏>

【2番】
<A>トップスピードは更新中…
<B変形>つまり整合性なら 後日譚でわかるから…
<サビ>当てがないシークエンスでも…
<B変形>C'mon please DJ, 問いただしてくれ…
<サビ>その願いを叶えようか…

前の2曲に比べると比較的すっきりの構成です。全体の構成というより、田淵が書くストリングスライン(教科書通りではない)が、私の想像の及ぶ規則性の範囲外でドギマギ、ワクワクしたせいが大きかったと思います。

以前、スペシャのユニゾン特番でBase Ball Bearの小出くんが、ユニゾンは製作のメソッドが普通じゃないと評していたのですが、私もそれはすごく感じます。始めはとまどいがあるものの、次第に「こういうジャンルもあるのか」「ジャンルはないかもしれないけど、まあジャンルとかどうでもいいし、快感になってきたぞ」というパターンが多い。ユニゾンには自分が知らない新しい音楽の世界を見せてもらっているな、とことあるごとに思います。今回もそれを感じます。

翼さんが楽しそう

アレンジは「kaleido proud fiesta」「恋する惑星」の伊藤翼さんですが、前の2曲とは全く異なる印象です。カレイドは田淵がストリングスラインを作った、惑星はある程度の制限があった、でも今回は自由に作ってもらったという事情があるからだろう。

ナタリーでアレンジについて以下のように話していました。

田淵:今回共同アレンジで加わってくれた伊藤翼くんに「とにかくどんな音を入れてもらってもいいから自由にやってほしい」というオーダーをして、それが自分的にもワクワクできるポイントになったんですね。

斎藤:翼さんのレコーディングを見させてもらったんですけど、ずーっとニヤニヤして楽しそうでした。「あとで減らせばいいやと思ってどんどん音を足していったけど、1個も減らさなかった」と言ってました(笑)。その感じ、マジで最高だなと思って。本当に好きでやってるという、その風を吹き込んでくれたのはめちゃくちゃありがたかったですね。僕自身も、より曲のことが好きになれました。

「アニソン派!」の現場で翼さんのトークを拝見したことがありますが、心底良いものを作りたいのだろうなぁという圧倒的な陽のオーラを感じた方なので、すごく楽しんで制作してくれたのだろうと想像に容易いです。

ブラスやストリングスが洪水のように押し寄せてくるので最初は耳がびっくりしました。とりわけブラスの存在感が楽しく、要所でビブラートしてるのが、道化師がおどけているような妄想を掻き立てられます。あと間奏と後奏のピアノが好き。翼さんに引っ張ってもらって曲が生き生きと飛び回っているみたいに思えます。

生みの苦しみのようなもの

アルバムを作り終わったばかりで抜け殻のところ、タイアップの話が来て制作が大変だったんだろうな、という生みの苦しみもあるように思えます。どうにかして強い個性のある曲にしようという田淵の意図※に、苦悩が少々垣間見えるというか。私にとって引っ掛かりのある展開が、奇抜さを狙い過ぎている、力み過ぎている、とも取れなくなかったので。
「バンド史上最もハッピーな楽曲が誕生してしまいました」というコメントも、あえての強がりなのかなとさえ。今までにないやり方でハッピー方面に振り切ったというのは事実として理解できるし、曲の特徴を端的に伝えなくてはならないからわかるけど、ハッピーな曲の定義は人それぞれだしなぁ。

「MUSICA」のインタビューでも、「作ってる時は半信半疑だった」「今回実は結構苦しみの制作みたいなところがあって」と赤裸々に話しています。タイアップは期限も決まっているし、出し切ったタイミングで作らなくてはならない場合はプレッシャーは半端じゃないと思うし、そのような条件下でプロのお仕事を全うできて本当にお疲れ様でした、と労いたいぐらい。すごく上から目線の言い方になってしまうけれど。

※来年20周年を迎えるに当たり、オールタイムベストのセトリを組むから最新シングルは入って来ない可能性も。20周年後が終わった後まで忘れられないようなインパクトのある曲にしたかった、と各種インタビューで話しています。

タイトルや言葉選び

タイトルはどうしたって「い・け・な・いルージュマジック」(忌野清志郎+坂本龍一)を連想します。インタビューでライターさん達が「オマージュ?」と然るべき質問をしてくれていますが、ファンは「いや田淵のことなのでオマージュという大げさなものではないです、単に遊び心です」と突っ込んでいるだろう。田淵がthrowcurveやthe pillowsはオマージュしても、清志郎や教授をオマージュするとは考えにくい。

「禁断」という単語からまず「いけない」が出てきたのだと思いますが、ルージュマジックからfool logicに変換されたのかな。「いけないfool logic あぶない rope walkだって」というフレーズ、言葉乗りが良くてクセになっています。

「竜頭蛇尾(りゅうとう だび) 叫喚阿鼻(きょうかん あび)」のリズムの良さも田淵らしさに溢れている。「阿鼻叫喚」ではなく、入れ替えてゴロを良くする手法。
「鴨乃橋ロンの禁断推理」の第1話に「僕は失意のぞんどこだ」「どん底のこと⁉」というやり取りがありますが、「まさか、ぞんどこからインスピレーションを受けて叫喚阿鼻にした…?」と一瞬思いましたが「考えすぎ」と田淵に笑われるかな。

「爆笑はディナーのあとで」は、ミステリーで有名な「謎解きはディナーのあとで」の引用だと思いますが、最初に「ディナー」ありきで、「ヤミー」を思いついたのかな?だび、あび、ヤミーの並びが鮮やか。どういう歌詞の書き方をしたのだろう、と田淵の頭の中が気になります。

MV

ストップモーションアニメ好きなので、コマ撮りを取り入れているのがすごく好みです。メンバーの演技も記号的なものとして受け入れやすいように思います。みんな可愛い。皿を食べている田淵が好き。
宏介&時計を持ったウサギの追いかけっこは「不思議の国のアリス」を連想する。「like coffeeのおまじない」にも「少年ラビット」が出て来て動き回るし、やっぱりなんとなく世界観が近い感じがすると、MVを見てますます思いました。
ああ、「like coffeeのおまじない」が恋しいな。

自分内に引っ掛かりがある段階では、曲を単体で聞くよりも、MVを見ながらの方が身体に馴染みました。それだけMVが曲のイメージ通り巧みにできているのだろう。監督は誰なのか気になっていましたが、おなじみフカツ監督でした。

アニメ第1 話

アニメの第1話では、終盤の絶妙なタイミングで効果的に曲が挿入されていて、アニメにとてもマッチしていました。OP映像はどんな風に仕上がったのか、第2話以降が気になります。
ライブで聞くと印象が大きく変わったり発見があるに違いないので、それもすごく楽しみにしています。

あまりに写実的な

初バンド名義での作曲

配信はされず、CDを買った人しか聞けないカップリング曲です。
発売期日までにしかるべき曲がない、ということを田淵が宏介に漏らしたところ、「リフなら作るから気軽に言って」と言うところから共同作業がスタートしたそう。宏介がいくつか出したリフから貴雄が好きなものを選び、ユニゾン史上、初めて作曲・編曲がバンド名義の曲ができました。

最初にその話を聞いて驚くと同時に、合点がいく気持ちもありました。「Ninth Peel」のインタビューでレジーさんが以下のように話していたことを真っ先に思い出したので。

リード曲選びをディレクターの方に任せたり、楽曲づくりやその伝わり方についての「どうでもいい」「何でもいい」というスタンスだったり、田淵さんがユニゾンスクエアガーデンというものをいい具合に手放し始めているなという感じがしたんです。

「田淵さんがユニゾンスクエアガーデンというものをいい具合に手放し始めている」、私も同様です。
以前なら、田淵が宏介に頼ることもなかったかもしれない。今なら2人に頼ってもいいかな、面白そうだな、と思えるようになった田淵の内面の変化を感じます。

また、バンドが好調な時期にわざわざ宏介から新曲を持っていくようなことはなさそうですが、XIIXですってぃとのキャッチボール(曲作り)をたくさん経て来た今の宏介だからこそ、「リフならいくらでも出すよ」と気軽に言えたのかもしれない。

JAPANの山崎さんもインタビューで「田淵くんが全部背負わなくても、いろんなやり方ってあるんだなって思える曲だ」と指摘していましたが、「Ninth Peel」を経たからこそ、このタイミングで実現したのだろう。

結果的に、田淵曲とはベクトルが違う特徴の曲になっていて面白い。リフを聞いて「5分後のスターダスト」を連想しました。シンプルでクールな音。間奏ギターが突き抜けていて爽快です。重なるチャイナ風サウンド、くるりの「青い空」のアウトロを思い出しました。(最近のエヴァ―グリーンなくるりしか知らない人にはぜひ聞いて欲しい熱い名曲だよ。)
ドラムが水を得た魚のように弾けた音なのも気持ちが良く、シンプルだからこそライブで映えそうです。

「一つの願いが」のファルセットが、ほんの少しだけ掠れている。でもこのテイクをOKにするところに意図が見えると言うか、バンドらしい空気がパッケージされていて良いなと思います。

歌詞のこと

2番の歌詞の一部が「City Peel」に通じる世界観だと感じました。

「きっと恋とは違ったよ」→「あの映画みたいな恋だったよ」
「知らない気持ちに 名前はつかないまま」→「心のフシギ」
「あと一つボタンを掛け違えなければ…いや違うか」→「掛け違えたボタンのズレから 心地よさがたまに生まれる」
「これもきっと世界のせいでありますように。」→「心のフシギは僕のせいじゃないけど」

とは言え全体的に田淵節が散りばめられているので、この2曲を強く関連づける特別な意味はなさそう。

「あと一つボタンを掛け違えなければ…いや違うか」っていうフレーズ、台詞調なのが「流星前夜」っぽくて萌えるのと、いかにも田淵らしい台詞なので、宏介の向こうに田淵が見え隠れして面白い。

めちゃくちゃ余談ですが、「一つの願いが途絶えたくらいで 命が終わるかよ 甘えるな」って、言ってることは最もなんだけど、これは受け取る人の性質にもよるな、とふと考えます。

正常な心を持っている人は失敗しても立ち直る素質がありますが、心に穴がある人(幼少期に「1度失敗したらもう許されない」といった苦しい価値観を大人に植え付けられ従わざるを得なかった)は、一つダメだったらもう死ぬしかない、という思い込みに支配されている場合があるのです。私がそうでした。正常な人には有効なフレーズだけれど、そうではない人はまずは心を治すことから始めないとね…と、自分が今心理学を学んでいることもあり、そういう視点からも歌詞を見てしまいます。
なんだかいちゃもんつけてるみたいですが、そんなつもりはなく、1つの事象に対する捉え方を考えるきっかけになるからありがたいな、と思っています。

こちらもライブで聞くのが楽しみですが、「"Ninth Peel" next」ツアーのセトリには入っているのかなー。

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