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偽りの先進国

2021年9月16日

京都に戻って5日が経った。身体の調子は随分と良くなっているように感じる。新潟に引っ越すまでもう一ヶ月を切っている。京都にいる間にやっておきたいことと引っ越しの準備など事務的にやらなければならないことが多すぎて、脳の処理能力が追いついていない。早く引っ越しの日取りを決めてしまおう。

実家でも結局会社の片付けや工務店との打ち合わせ、機械探しと挨拶まわりであまり休んでた気はしていない。でも全てが自分のためであったし、これまでは休日にしていたことであったから妙な感覚だった。これから毎日休みなのか?

これは想像はしていたことだが、いま実家にいる1歳の姪っ子が元気ハツラツすぎて毎日変に疲れてしまった。今でも体調の悪い日もあるが、確実に身体の調子を取り戻しているように感じた。

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鬱病と診断されて気づいたことがある。僕の場合、過労による鬱症状であったため、そこまで精神的に憂鬱な状態にはなっていないと言うことだ。

僕がこれまでイメージしていた鬱病は精神的なもので、気分が落ち込んだり、塞ぎ込んでしまったりと生活を送る活力が湧かなくなってしまうことだと考えていた。結果として自ら命を絶つという悲しいことが後を絶たないんだと。

しかし、それは少し違っていた。これは一つのケースであり、さまざまなパターンがあるということだ。

僕だってもしこのまま仕事を続けていたら、いまいったいどんな状態なっていたか分からない。取り返しのつかない状態になっていたのかもしれない。

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僕に起きていた症状はまず慢性的な疲労感だ。具体的には身体が重く怠さが付き纏い、首から肩甲骨かけて酷く肩が凝っていた。

次に不眠の症状が出始めた。身体は疲れているのに全く眠ることができない。布団に入って2〜3時間後にようやく眠ることができた。これは徹夜で作業した後の感覚に似ていた。脳が完全に覚醒している感覚だ。そこから連鎖的に動悸、息切れのような症状と発作的に過呼吸になるようになった。

過呼吸の症状が出るのはほとんど19時頃だった。本来なら終業時間だが代表がいると帰れない。このもう体力的に限界で帰りたいのに帰れないというストレスが過呼吸という形で発作的に起こっていた。

そしてもう一つお酒が飲めなくなった。ビールを一本でも飲むと気持ち悪くなってしまうほど酔ってしまうようになった。

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それから薬を飲み始めてまず良く眠れるようになった。この薬はジアゼパムという交感神経の働きを弱めて脳をリラックス状態する効果があるらしい。

完全ではないが夜眠ることができるようになって、慢性的な疲労感 / 酷い肩凝り / 動悸、息切れ / 発作的な過呼吸がまずまず改善された。お酒もまた美味しく飲めるようになった。同時に昔から悩まされていた呑気症の症状も改善された。

しかし薬を飲んでも症状には波があり、全然ダメな日もまあまあな頻度であった。

ここで薬を飲み始めてからある症状に悩まされた。朝、身体が動かないという症状である。

そもそも昔から過眠気味で朝は苦手だったが、そういうレベルではなく身体が動かなくなった。とにかく起き上がることができない。

これが薬によるものなのか、鬱病による症状なのか、身体が必死に回復しようとしていたからなのかは分からないが、今は薬を飲んで寝ても起床の時間にはばらつきはあるが、全く動けないということはなくなった。

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先日実家に帰ったとき、近所の同級生が自宅で亡くなったと聞かされた。何かの病気だったのか自殺だったのかは分からないが、ショックだった。特別仲が良かった訳ではなかったが、同い年の知っている人が亡くなったということがショックだった。僕にはいま鬱で苦しんでいる友達がいて、たまに連絡が取れなくなるのでとても心配している。

昔から日本は先進国の中で自殺率が高いと言われ続けているが、最近の調査では特に若い世代の死亡原因で最も多いのが自殺ということだった。これは先進国の中では日本だけである。この割合は韓国と並んでいて社会的な問題となっている。(韓国も最近先進国入りしたようだ)

日本と比較して韓国は特に“弱さは恥じるべきこと”という考えが深く根付いているようで、なかなか心療内科を受診するという選択が出来ず、自殺してしまう若い世代が後を絶たないという。個人的に韓国はすごい競争社会で、弱者は蹴落とされていく社会構造というイメージがとても強い。

ではなぜ日本の特に若い世代の自殺率は一向に下がらないのだろうか。

諸外国からは日本人は真面目だからとか、切腹の歴史があったほど責任感が強いなどと言われているようだが、絶対にそれだけではないと思う。

もちろんそういう国民性ではあると思うが、やはりまず労働環境にあると思う。他の国の労働環境の状況は分からないがそれでもこの国の労働はおかしいと思う。

低賃金、長時間労働。よく聞くフレーズだ。

何年か前に手取り15万というワードがトレンドになっていたが、それはまだマシな方だと思う。それよりも低賃金で尚且つ長時間労働でボーナスもない状態の人は山ほどいると思う。これでは生きることしかできない。仕事をするために生きているようなものだ。仕事は人生を豊かに過ごすための手段でなければならないと思う。

この若い世代が搾取される社会構造を変えなければ、いつまでも偽りの先進国のままである。

もう一つ特に若い世代の危機管理能力の低さが挙げられると思う。

僕は今回、これ以上いったらやばいな戻れなくなると直感的に感じたため退職したが、いまの若い同世代はその察知する能力が鈍いように感じる。

就活の頃から言われ続けている“最低3年は働け”という雇用主側のご都合ワード。あたかも君のためを思って言っているんだよと思わせる社会全体に擦り込まれた洗脳トラップ。残念ながら僕は同じところで3年間働いたことはない。

もっと他人と向き合い許容することのできる社会にならなければならないと感じている。

僕の場合は実家に帰るという逃げ道があるからこういう選択ができたが、誰もがこの選択をできるとは限らない。家庭環境もまた人それぞれで、いろいろな理由があってなかなか仕事を辞めることはできないという人もたくさんいるのだろう。しかし、転職という選択肢は誰にでもあるのだから、健康を害してまでその職場に留まる必要はないと思う。でも転職先がもっと酷かったら…とどうしても考えてしまうが、そういう思考に入らせてしまっている社会全体の労働環境が悪い。こんなことを言うと社会のせいにするな!考えが甘い!などと難癖つけられそうだが、そういうことの結果が今の日本という国なんだと思う。ただ労働と政治を除けば日本は比較的良い国ではあると思う。

僕の友達に趣味のために平日休みの仕事から土日休みの仕事に同じ趣味仲間の紹介で転職したやつがいる。少し給料は減ったそうだが、すごく生き生きしている。

必ずしも逃げ道は場所ではないし、むしろ頼れる人こそ一番の逃げ道なんだと思う。そういう逃げ道をたくさん作っておくとこんな理不尽な社会でも上手いことやっていけるんじゃないかと思う。

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僕はそんな危機感から仕事を辞めることにしたが、なんとなく嫌な予感がしてハローワークに行ってみたら、案の定雇用保険にすら加入されていなかった。

ほんとクソだな。

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