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届くことのない想いが舞う -塩田千春 @京都精華大学55周年記念展「FATHOM」

 京都精華大学55周年記念展(-2023.12.28)

 10月に上洛した際に情報を知り、

 会期末に駆け込みで観ようと決めて、それが叶った。



京都精華大 ギャラリーTerra-Sへ

 2019年の塩田千春展@森美術館。当時、今のように写真は撮っていなかったけれど、年パスは持っており、何度も訪ねた。

 今回の会場は作家の母校、京都精華大。京都市営地下鉄の終点、「国際会館」駅が最寄りだ。接続のバスを探して係員の方に聞いたところ、スクールバスが運行中で、大学関係者でなくても利用できるとのことだった。

 年末の学内のようす。

 3人展、なのだけど、今回は塩田作品を。

 数えきれないほどの赤色の糸。予想を裏切らない、塩野千春ワールド。

 このようなインスタレーションが、会場いっぱいに展開されていた。

 流れるよう、舞うように、白い紙がに吊るされている。

 それらは、

 手紙だ。

塩田 千春  Shiota Chiharu 
1972年大阪府生まれ。1996年京都精華大学美術学部(現芸術学部)卒業。ベルリン在住。
大学卒業後、渡独。ブラウンシュヴァイク美術大学、ハンブルク造形美術大学、ベルリン芸術大学で学ぶ。過去に誰かが使っていたベッドや衣服、窓枠などを用いた大規模なインスタレーションで知られる。生と死という人間の根源的な問題に向き合い、場所やものに宿る記憶といった「不在の中の存在」を浮かび上がらせてきた。2001年、第1回横浜トリエンナーレに出品し、国内外で大きな注目を集める。以降、世界各国の美術館での展覧会や国際展に数多く参加。2015年には、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表として選出。2019年に森美術館で開催された個展「魂がふるえる」は66万人以上の入場者を集め、その後、韓国、台湾、オーストラリアへ巡回した。
近年の主な国内での個展に、「いのちのかたち」(2022、那覇文化芸術劇場なはーと/沖縄)、「塩田千春展:魂がふるえる」(2019、森美術館/東京)、「『胡蝶の夢』Art for Tomorrow 2018 - 京都府新鋭選抜展」(2018、京都文化博物館/京都)など。

作家略歴 より

届くことのない想いが浮遊する

 天井を見上げれば、

 くらくらするような数の、規則的な赤い結び目と、垂れさがる紐。

 そこに、うまくとらえられている手紙たち。宛先に配達される以前の、届かない想い。

 ひとことの説明がなくとも、文字通り作品世界に入り込み、自らの心までもを作品の中に入れてしまう。足を止めて文面を読み、書き手の心を知り、その心の中に降りていくこともできるだろう。

 話す言葉も習慣も超えた作品。それは作家の長い海外生活のゆえだろうか。鑑賞者の忘れていた記憶すら思い起こさせ、作品のなかにさらに没入させていく。

 人影もまばらな年末の展示場で、たくさんの人の気配のようなものを感じた。それは、1枚ごとの手紙に込められた、想いだろう。

 綴られた言葉は会場を浮遊し、しかし外に出ていくことはない。鑑賞者を満たしては、そこから生まれた感情を吸収して再び展示室に放っていく、そんなようすを想像した。


 展示室を後にすれば、そこは冬の青空。



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