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アートによる刺激の面白さ -荒木由香里[Talkative happy colors]@銀座 蔦屋書店

 日曜日の銀座、歩行者天国。

  荒木由香里 個展「Talkative happy colors」@銀座 蔦屋書店 インフォメーションカウンター前 (- 02/16) へ。


 展示の中で特に目を引いたのは、3足並んだ赤いハイヒール。

 近寄って覗き込んでみれば、

 そこにはさまざまな物たちが、挿し込まれている。

作家のステートメント

[アーティストステートメント]
 私の制作は、物、空間、言葉と出会うことから始まります。身の回りにある装飾品や日用品、玩具などかつて何かであったもの、誰かの想いや考えが反映されたもの、場所を旅して時を経たものなど、色、素材、用途、先入観、イメージ、全て受け入れその素材を寄せ集め、出会えた感動を大切に再構築し、新たな意味を手繰り寄せて物や空間と対話するように制作します。
 手法としてはアッサンブラージュです。着彩はせずにそれぞれの物が持つ色と特徴と美を抽出し、色の力と色により集まったものを空間表現するように配置して再構築します。色と物、色と世界、物と世界。その関係性を探りながら、そのものの価値を見いだし、新たな価値や視点を発見すること。また、彫刻的な塊としての強度や繊細なささやかな表情を探ること。素材を探し集めることも制作で最も重要な行為で、同じ色で集めて組み合わせるモノトーンシリーズを2010年ごろから継続して取り組んでいます。
 土地や国や年代により集まるものは違います。私自身が生きて変化し出会い作品も変化します。いろんな物事の本質を知りたいと常々思っていて、それは一般常識やイメージや先入観ではなく、自身で見て知ること、目の前に在るものを受け止めること、その上で新しい視点や価値を見出せるきっかけとなるような作品を目指しています。

荒木由香里

【展示】荒木由香里 個展「Talkative happy colors」 より


 後になってステートメントを読み「なるほど」となったのだけど、わたしが連想したのはこんなことだ。

思わず靴を擬人化して

 ハイヒールは美しい。頑張って履いていたこともあるが、苦痛に耐えらえなくなって、やめた。正直、この作品を観てはじめに思い出したのは、足の指の痛みだ。

 その痛みの記憶とともに、わたしは靴を思わず擬人化していた。靴の中に挿し入れられたさまざまなものを観ることで、深読みに次ぐ深読みをして、いろいろ考えこんでいた。

 作家のステートメントを読み、そこに、そもそも例えばフェミニズム的主張のようなものは入り込む余地がないことを知り、そうか、思わず拡大して鑑賞していたのだなと(これも、気づかぬバイアスのひとつ?)、面白さを感じた。

思いもよらぬところが刺激される

 ただ美しいだけでなく、そこには一本通った、その作家の筋道がある。それがアートの素敵なところだ。

 そして、作家の文脈に乗って流れるように作品を鑑賞し(たとえば本個展なら、彩色せず同時代の同じ色のものを、パズルのピースのように集めるという一見パッシブな方法で、しかしそこに静かな意図を持った一つの世界が展開するのかというふうに)、深く感じ入り、

 あるときはそこから脱線して、今回のわたしのように、意外な気づき(自分はそんなふうにものごとを捉えるのだなといった)を得ることができたりもする。

 アートから刺激を受ける時間は、やっぱり素敵だ。



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