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エッシャーの名画「昼と夜」がAITに登場!? ー科学知識と芸術的技量の融合!M.C エッシャーの「昼と夜」を描くー

※過去記事のアップです(2018年8月21日)

アクセンチュア・イノベーション・ハブ・東京(AIT)の黒板の壁を絵画で彩る「AIT黒板プロジェクト」、今回は「MUGEN」ミーティングルームの一面を5名のアーティストに描いていただきました!
休憩を挟みながらも11時から20時までと長丁場、しかし制作には短すぎる時間の中で、アーティストたちの奮闘により、素晴らしい作品が仕上がりました。

真剣かつ楽しいコラボレーションの現場を、皆様にお伝えします。

(左)エッシャー (右)昼と夜(1938年)

今回のテーマは「芸術部と美大生がコラボして、エッシャーの模写を制作する」でした。
マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898- 1972)は、緻密かつ錯視的な作品で知られる20世紀を代表するオランダの版画家です。

彼の後期の作品は、非常に数学的・結晶学的な側面を持っており、当時発展した科学領域への深い関心が伺えます。

異なる分野を融合させて「進化的タイリング」とも名付けられる新しい研究分野の開拓に導いたエッシャーと、新たなテクノロジーや、他社とのコラボレーションからイノベーションを生み出すAITには、大きな共通点を感じられるということで、エッシャーの作品が選定されました。

◎制作の様子

それでは、実際の制作の様子を追ってみましょう。今回参加してくださったアーティストは5名です。

  • 芸術部/アクセンチュア社員:中島 雅智さん

  • 芸術部社外メンバー:田渕 美智留さん

  • 東京藝術大学美術学部油画科3年:林 裕人さん

  • 武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン科2年:小嶋 桃子さん

  • 武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン科1年:大野 真理子さん

1.計画会議

アーティストたちは当日が初対面、普段複数人での制作の機会は少なく、まして黒板アートの経験はほとんどないということで、緊張した面持ちでのスタートとなりました。

しかし、いざアーティストたちが会議を始めると、
「それぞれタッチが異なるはずなので、担当を決めて描くと一枚の絵には見えづらいのではないか」
「どの縮尺で描くのが、見る人にとって見えやすいのか」
等様々な意見が飛び交っていました。

議論は白熱し、実際に手を動かさないと分からない、ということで自然と黒板の前に移動、メジャーで黒板を測りながら計算機を片手に、ベストな絵のサイズを真剣に考えられていました。

不慣れな環境の中でも、良い作品のために熱心に最大限検討なさる姿が、さすがアーティストだと思いました。
結果的に、全員でバランスを見ながらラフスケッチを描き、それをもとにそれぞれの担当場所を決めて細部を描き込むことになったようです。

制作前の壁面

2.ラフスケッチ

ラフスケッチの精度は、最後の出来栄えに関わるということで、真剣に取り組まれていました。制作する絵が大きいので、初めに大きな枠を作ります。
脚立を使用する上の方の作業では、高さや横幅の正確な計測と下で作業を支えるメンバーとの連携作業が重要になります。

皆さん、初対面にも関わらず、積極的にコミュニケーションを取りながら、作業なさっていました。
共に制作を行うとなると、性別や年齢を超えて「仲間」として協力されていく姿が感慨深かったです。
大枠が完成したところで、全体の統一感を出すために、まずは全員でバランスを見ながらラフスケッチを描きます。
ここまでの段階で、さすが皆さん素晴らしい実力の持ち主、絵の輪郭がはっきりと分かります。

枠を作っている際の写真
ラフスケッチ
鳥パート、昼パート、夜パート、昼と夜の間をつなぐパートに分かれて制作を行っている様子

3.細部の描き込み

ここまでにかかった時間が大体3時間ほど、ここから本格的な描き込みが始まります。
大きく分けて、鳥パート、昼パート、夜パート、昼と夜の間をつなぐパートと分かれていたようです。
皆様が特にこだわられていたのが「白いチョークだけでいかに色の濃淡を出すか」。
原画は白黒ですが、よく見るとグレーにも見えるよう淡い色合いの部分が存在します。この色合いを表現するために、一度白いチョークで塗った後に、黒板消しでぼかす等、様々な技を駆使していらっしゃいました。
皆さんが制作の序盤から真っ先に気にされていたのが、この「色の濃淡について」でした。
確かに、この色合いのニュアンスが出ると、途端にただの黒板が立派な作品に見えてくるのです。制作を見守っている側としては「さすがアーティスト」とうなるばかりでした。

黒板消し、綿棒、ティッシュを使いながら、グレーの色合いを調整している様子
全体像が見えてくる
手元の「昼と夜」のコピーを確認しながら制作を進めている様子
昼の風景、夜の風景の境目が明確に!
完成に向けて、最終的な細部への描き込みを行っている

4.完成!

こうして皆様が細部の描き込みを始めて7時間、ようやく黒板アートの完成です!
最後の最後まで、細かい部分や全体の色合いやバランスの調整などを行い、原画に近づけるべく心血を注いでくださり、次のような素晴らしい作品が出来上がりました!

黒板アートの完成

制作の様子はいかがでしたでしょうか。少しでも現場の真剣な様子が伝わっていればと思います。
実際に、ただの黒板からエッシャーの模写が浮かび上がるまでの様子は、まるで魔法のようで、見ているほうはとても興味深かかったです。

★2 AIT 作品展示のご案内

AITでは、他にもアート作品が展示されています。
現在は、菅 木志雄さんの作品を展示しています。

小山登美夫ギャラリー の協力のもと、菅 木志雄の作品を展示中

◎アーティストたちのプロフィール

最後になりましたが、今回ご参加してくださったアーティストたちのプロフィールです。

(右から中島さん、林さん、大野さん、小嶋さん、田渕さん)

★アクセンチュア社員:中島 雅智さん
中島さんはアクセンチュア社員で、3年前から芸術部に参加、様々なイベントを裏で支えてきましたが、今回は社内アーティストとしてご参加となりました。
アナログアートを大切にしており、オシャレで洗練されたものよりも、関わる人に「満足感」や「喜び」を感じてもらえるような芸術活動を続けていきたいとのことです。

★芸術部社外メンバー:田渕 美智留さん
芸術部メンバーの過去のクライアント。直接プロジェクトで一緒に働くことはなかったそうですがアートの話で盛り上がり、芸術部に入部。
アメリカでグラッフィックデザインを専攻されており、その他にも色鉛筆画や、最近は独学で習得した3Dアートの技術での作品制作もされています。

★東京藝術大学美術学部油画科3年:林 裕人さん
林さんは、自分の存在への考察から考えを発展させ、日本人の民族性を題材に、制作・活動をしてこられました。
最近はアプリケーション開発にも興味をお持ちで、プログラミングの勉強もされるそうです。

★武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科2年:小嶋 桃子さん
小嶋さんは、日本のポップカルチャー(原宿系)といわれるようなビビッドでカラフルな作品を制作されています。
世界に日本のポップカルチャーを発信できるような作品をこれからも作っていきたいとのことです。

★武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科1年:大野 真理子さん
大野さんは、これまでデッサン等をしながら、樹脂など使った透明立体の作品なども制作しているそうです。
これからの制作活動としては、合同展示で透明素材の追及をしつつ、視覚伝達として広告デザインを学んでいきたいとのことです。

以上5名の皆さん、ご協力ありがとうございました。

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