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神戸市役所で働くエバンジェリスト


 2023年3月で終了となった「自治体DX 友達の輪」でコラムを連載していました。
今回その続きをnoteで書いてもようと思います。

 4回連載したものの途中のままでした。Winny開発者の金子さんの秘話とか、続きを書きたいと思っていたのですが、ぼくの筆の進みが遅かったり、家族が立て続けに入院したりする事情もあって、当初書こうと思ってたことの3割も終わったないままです。
 その間に、例の映画が公開されて、いろんな方に感想を聞かれたのですが、あえて沈黙を守りました。その辺りを含めて、今一度、ぼくの考えを伝えていこうと思います。

まずは、コラム(第1回 2022年5月 )の再掲からです。


はじめまして。 

 猿人の宇野社長に誘ってもらい、「自治体 DX 友だちの輪」に参加しました。
 コラムを書くなんて人生で初めてのことです。果たして面白い話題をみなさんに提供することができるのか、正直言って自信はありません。

 それでも、せっかくの貴重な機会です。私生活でも仕事でハードシングスが連続する波瀾万丈の経験(まだ続きそうw)について。
 Winny事件の公判中に出会い、亡くなるまで苦楽を共にした金子勇のこと。楽しいことと辛いことは、どちらも沢山あります。成功もしましたが、失敗の方が圧倒的に多い。
 そんなぼくにしか語れないこともあると思います。 思い切って、この機会にそれらを語ってみようと思います。

 神戸市の隣接する西宮市がぼくは出身です。甲子園球場にとても近いところに実家があります。幼い頃から阪神タイガースのファンでした。もの心ついた頃が江夏・田渕の黄金バッテリー時代という年齢です。神戸の地理をよくご存知の方には、「西宮出身の神戸で働く明石」と言うとすぐに名前を覚えていただけます(笑)

*芦屋と関係はないけど、西宮と神戸は山側で隣接。それにしても神戸は広い!

 ただ、実際に働く職場は神戸ではなく東京の丸の内です(ややこしいですね)。 
 神戸の先進的な取り組みを東京に集積する企業や公的機関などさまざまな方に知ってもらい、関心を持ってもらう。そして神戸のさらなる先進的な取り組みに巻き込んでいくのがぼくの役目です。

 なんだかんだ東京で働くようになって20年以上になります。その前は東京の大学を卒業し、地方の工場勤務でした。だから地元の神戸に回帰するのは(職場は東京なので回帰と呼ぶ)、なんと高校を卒業して30年以上も経ってからのことです。
 ただ、7年ぐらい前から東京で働きながらさまざまな自治体と仕事をさせていただくようになりました。四国に行くときに神戸でレンタカーを借りたりして、通り過ぎることは増えていましたが、まさか働くことになるとはびっくりです。

日本が産んだ不正出の天才プログラマー金子勇に導かれて

 この地方の自治体と仕事をするようになってからです。昔からぼくのことを知っている人からも、新たに知り合った人からもよく聞かれることがあります。

 「なぜ、明石さんは地域の仕事をするようになったのですか?」
 これにぼくは、「金子勇の導き」と、答えることにしています。

 ちなみに認知がまったくない会社や商品をブランディングする手っ取り早い手法をスタートアップ企業で学びました。
 対象となる人の心の中に普段からあるもの(認知度が高いもの)に重ね合わせる(ポジショニングする)ことです。自己紹介するときに、相手に印象をつけるこの方法をぼくは5つ持ってます。もちろん相手によってそれは使い分けます。

一つは最初の自己紹介で使った「西宮出身で神戸で働く明石」です。

もう一つが「天才プログラマー金子勇をWinny裁判中から支え続けた盟友の明石昌也」です。

 ぼくは神戸市の職員になる前に約30年間、民間企業に勤めていました。ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。Winnyというのは2000年代に一大ブームとなったP2Pファイル交換のソフトウェアです。現代のブロックチェーン技術の系譜となる卓越した自律分散型ネットワークでした。
 金子勇は趣味でこれを開発しましたが、これが広まり悪用されたことで「著作権法違反幇助」という罪で逮捕されました。
 最終的に最高裁までいって無罪になったのが不世出の天才プロブラグラマーが金子勇です。ぼくは彼が創業したスタートアップのCEOを10年間やりました。

 令和に年号が変わるときにNHKスペシャルで平成特集を半年ぐらいかけてやりました。8回目の最終回のテーマが「インターネット」で、Yahooジャパンを立ち上げた元社長の井上雅博さんと金子勇の特集でした。

 金子勇は2013年に42歳の若さで突然亡くなってしまうのですが、彼の残した技術を事業化しようとしているうちに、地域課題をテクノロジーで解決する実証実験をいくつかの自治体で取り組ませていただきました。

 この仕事をやっているうちにこの取り組みこそが日本の産業の再生につながると考えるようになりました。大学で産業政策を学んだこともありますが、金子さんの導きだと思っています。

 ビットコインの発明者のナカモトサトシは金子さんではないかともよく言われます。2021年の3月「近未来創世記〜日本を救うヤバい偉人〜」日本を救う天才」という特番で日本テレビも取り上げました。

地方自治体のエバンジェリストっていったい何者?

 金子さんとのさまざまなエピソードとこの導きについてはおいおいこのコラムで紹介させてもらおうと思います。まずは、神戸市のエバンジェリストという仕事について説明させてください。

 エバンジェリストという肩書きはIT業界の方は比較的馴染みがあると思います。エバンジェリストは「伝道者」という意味です。もともとは宗教(キリスト教)の布教活動で使われるようになった言葉です。 IT業界では対外的な技術の啓蒙活動をするエンジニアがよくつける肩書きです。

 しかし実際にこの肩書きをつけてみて、まだまだ珍しい呼称だと実感しています。他の自治体や公共組織でこういう肩書きをつけている人にもまだ出会ったことはありません。神戸市でも議員が「エバンジェリスト」を「エバンゲリオン」と間違えるぐらい(笑)。まだまだ、エバンジェリストという言葉の意味と職業的な役割を伝えるところからが仕事です。

 神戸の職員になるまでIT業界でずっと働いていました。この業界では、できるエンジニアほど担当部長とかいう組織的な肩書きより、このエバンジェリストを好みます。なので、神戸市のエバンジェリストという肩書きはとても気に入っています。それなりにしっくりもきています。ただ、ぼくの役割は技術の啓蒙活動ではもちろんありません。そもそも、技術者として神戸市のメンバーになったわけでもありません。

 神戸市が日本の中で他の地域に先駆けて取り組んでいるある活動を広めるために、このエバンジェリストという肩書きで活動しているのです。

 では、その活動とはなんなのか?

 次回はぼくがエバンジェリストとして神戸市でどのような活動をしているのかについてご紹介したいと思います。


神戸市 チーフ・エバンジェリスト 明石 昌也

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