見出し画像

対立の世界

私たちが生きているこの世は対立の世界であると言われています。幸福と不幸もそうです。幸福という言葉は不幸という言葉があるから存在するし、同時に不幸という言葉は幸福という言葉があるから存在できる。対立の世界であると同時に互いの存在を支え合っている仲間と言えるかもしれません。

対立の世界に居るから不幸を感じ、不幸なところからどうしても抜け出したいと思うのが人間です。そう出来ている世の中から出たいということは、そう出来ているものを棄てるということでなくてはならない。棄てるということは幸福や不幸という価値、値打ちが存在するこの世から離れるという意味です。

ところが値打ちというものは、2つのものがあるところから出るのですから、その2つの世界に居る限り私たちから幸福や不幸はなくなりません。仏教では2つのもの、つまり対立から抜け出すことを解脱、悟りというようですが、まあ、私のような煩悩欲望の塊の愚か者には悟りなんて諦めざるをえませんね。人間らしく2つが対立する価値値打ちの世界で不幸に甘んじて不幸を味わうしかないようです。

唐時代の趙州和尚は『趙州録』で、ある訪問者から
「どうしたら苦しみから免れるでしょうか」
と聞かれたとき、
「誰もかれも皆、極楽へ行ってくれ。わしだけはいつまでも苦界にいたいものだ」
と答えたそうです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?