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夏のお手本

写真を整理していたら、4年前の夏、2015年に訪れた白馬のキャンプ場の写真が出てきた。この場所のことは子供達もとてもよく覚えている。岩岳のゆり園を訪れ、ねずこの森を歩き、五竜小遠見山トレッキングでは、夏の山に残る雪を眺めた。
この記事を書くにあたって、岩岳のゆり園は2018年夏に終了していることを知り、あの美しかったゆり園はもうないのかと思うと、とても残念な気持ちに包まれている。

東京で生まれ育った私にとって白馬は、物心ついた頃から特別な場所であった。栂池には別荘があり、夏に冬にとことあるごとに訪れては、のんびりと楽しい休暇を過ごした場所なのだ。もし、将来私が子どもを持つことがあったら、絶対白馬に連れてきたい!と、子どもの私はいつもそんな風に思っていた。少し長い休みがあれば訪れたい場所、それは季節を厭わずいつも、必ず、白馬なのであった。春も夏も、秋も冬も、どの季節も美しく、私はどうにかして白馬に住み続けることはできないものかとそんなことを考えていて、ついには
「そうだ白馬の人と結婚すれば良いのだ」
などという浅はかな考えすら頭をよぎったものだ。
あれからうん10年が過ぎ…私もついに結婚し、3人の子どもに恵まれた。

2015年、長男9歳、長女6歳、次男5歳の夏、私はついに、念願の白馬へ家族で旅をした。
写真を見るとそこにはまるで「夏のお手本」というような風景ばかりがある。幼い頃から私の特別な夏はいつもここにあったのだから、そう感じるのは当たり前なのかもしれない。

私たち家族は毎年夏になると、車にテントを積んで約1週間ほどの旅に出る。夏に限らず、様々なキャンプ場を訪れるが、私にとってだけではなく子供達にとっても白馬は特別楽しかったようで、何度も「もう一度行きたい」と言っていた。

実際に海外に移住するにあたっては、この場所をまた訪れるのは難しくなってしまったなぁとしみじみ思う。こんな風に、キャンプ道具を積んで、フラフラときままに旅をする夏は、当分おあずけなのかと思うと寂しい気持ちが一層つのる。もう一度、もう一度だけ、ここでみんなでキャンプをしたかった。白馬の夏を満喫したかった。

そんな未練で、思わず涙がこぼれてしまう。
11月。WorkPermitが降りたと夫から聞いた夜。

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