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散文53

市ヶ谷から幾らか市電に乗り数駅またいだ箇所で
降車したが、そのまま連連と歩行を進めた先で
チェーンストアの書店が開かれていた

書店の中で雑誌ばかりの売り場を抜け、私は
美術本のコーナーを彷徨いた
結局、韓国人女性画家の評論本を二冊買った
見開きには、舌先の無い女の
肖像が描かれている

ここからずっと西方の都市では
まだ20世紀だった仏蘭西で撮られた
エロい映画が放映され続けている
独居ビルの一端で、人が表現を殺し
生きる言い訳を続ける
いつまで?

白い凧糸をグルグル巻き取って指先に血溜まりができている幼児
小さな指、千切れたら
大きくなったときどんな形になるのだろう
いつまでも、いつまでも自分だけが可愛いとか辞めなよ
太い指切り

女が赤いビキニを着て、
踊るシーンで
映画が始まる

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