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散文59

マリーシアの横行するピッチで
私の右足はくじかれる 
夕暮れ 芝の毛並みは綺麗

レガースが割れた後半23分に
手触りの悪いウェアを引っ張り転ばせた7番は中指を立てて
F◯ckと叫んでいた
いつまで資本主義ごっこやるんだという人間のそばで
やっぱり一番になりたいよね、と笑う男
全部思い通りになるフットボールはフットボール足り得ない

セットプレーでは、振り子のように
脚を巻き付かせてフリーキックを蹴った
早いクロスを差し込むと
短髪の男にヘディングをさせて
ネットが揺れる 揺れたのは外側
揺れたネットの白い編み込みに
感情を爆発させる短髪の男に
熱視線

労働と運動の反復の中で、
「フットボールは労働になりますか?」
と問うた小さな、
小さな輝いた瞳に
「オーバーラップだとか、クロスとか、楔に入ることだとか、プレスが労働だとするならば、フットボールは労働になるだろうか。楽しい労働になる。君は哀しい言葉を話すね」
と答えた、過去のスーパースターは死んだようだ

記憶の残像
夏のグラウンドで影が揺れている
罵声
走り続けるだけ
見えないほど遠いグラウンドの端で
蛍光色のコーンが置かれていて
その間を縫ってドリブルする作業が
今までの我々の生き方みたいでしょ?
そうかな?
クリスマスカバーの書籍を2点カゴに入れたから
もういいんじゃない?

芝生の切れる音がし、左肩に衝撃があった
転倒した相手の7番の横
割れたレガースが落ちている



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