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新生児の感覚発達:応用行動分析学(ABA)からの洞察

この記事の概要

応用行動分析学(ABA)のレンズを通して、新生児が生得的な感覚をどのように活用し、環境や保育者とどのように相互作用しているのか、その複雑なメカニズムを掘り下げていきます。正の強化と負の強化がどのように赤ちゃんの反応を導くかを探り、親子の愛着の基礎を形成する強化子と古典的条件付けについて論じます。さらに、感覚処理の問題を抱えた子供を育てる時に直面する課題について論じ、早期介入と支援の必要性を強調します。この記事は、感覚発達が親子関係に与える大きな影響について、貴重な洞察を与えてくれます。


すべてのスキルは「生まれつきの感覚」から始まる

人間の能力はすべて、生まれ持った感覚から始まります。
生まれたばかりの新生児でも、保護者の顔をぼんやりと見たり、声を聞き分けたりすることができます。また、本能的に乳首を吸ったり、保護者の指をぎゅっとつかんだりすることができます。これらの行動は原始反射と呼ばれ、特定の刺激に反応して無意識的に起こります。

では、赤ちゃんはこれらの本能的な感覚や反射をどのように洗練させ、コントロール可能な行動のレパートリーに取り込んで行くのでしょうか?

正の強化と負の強化

それはすべて「強化」によるものです。
反射であれ本能であれ、ある行動の結果が、心地よい症状や不快感の軽減につながる時赤ちゃん(人間)はその行動を今後も繰り返す可能性が高くなります。

例えば、赤ちゃんが空腹やおむつが濡れたなどの不快感によって泣く場合、この「泣く行動」は赤ちゃんの本能の結果です。赤ちゃんが泣く時、一般的に保育者は赤ちゃんをあやす、話しかける、抱き上げる、ミルクを与える、おむつを替えるなどの世話をします。この一連のプロセスは、毎日何度も繰り返されます。

この繰り返しによって、赤ちゃんはルールを学び始めます:

不快を感じる→泣く→笑顔と声(視聴覚刺激)→不快感が和らぐ+快感を得る

赤ちゃんが不快に襲われて本能的に泣くたびに、いつも同じ視聴覚刺激(あなたの笑顔と声)を得ます。
いつもの視聴覚刺激(あなたの笑顔と声)の後には、必ず不快が取り除かれるだけでなく(負の強化)、快感を得ることができます(正の強化)。

【条件付け】子供が母親を好きな理由

生まれたばかりの赤ちゃんは、あなたを母親とは認識していません。ですから、あなたの笑顔と声は、赤ちゃんにとってはただの「視聴覚刺激」にすぎないのです。

しかし毎日、一連のお世話を繰り返すことによって、赤ちゃんは「あなたの笑顔と声の刺激」の直後には必ず「不快解消+快感」が起こることを学びます。これによって、「あなたの笑顔と声の刺激そのもの」が、赤ちゃんにとって嬉しい刺激(強化子)と変化するのです。

このように、以前は意味を持たなかった刺激が、好ましい刺激と対提示され続けることによって、意味のなかった刺激までもが好ましい刺激に変化することを、古典的(レスポンデント)条件付けと言います。

たとえあなたがミルクを与えなくても、おむつを交換しなくても、あなたの顔や声という感覚刺激を受けるだけで、赤ちゃんは笑ったり、喜んだり、安心するようになります。

このように、生まれてから一番最初に好きになった存在が母親であることが多いですから、世界中の子供たちはお母さんが大好きな理由が理解できますね。

親子の愛着形成

親子の愛着形成には、親が赤ちゃんの行動を強化するだけでなく、赤ちゃんの行動が保護者の行動を強化するとも言えます。

赤ちゃんを抱っこしたり、コミュニケーションをとったりしていると、赤ちゃんが笑ったり、楽しそうに足をバタバタさせたりといった嬉しい反応をしていることに気づくでしょう。このような反応を目の当たりにすることで、我が子への愛情が深まり、その結果、自然と子供と一緒にいる時間が長くなったり、育児により深く関わるようになります(正の強化)。

あなたとのふれあいを楽しんだ赤ちゃんは、あなたとのふれあいを続けようとします(正の強化)。あなたを求めて可愛い仕草をする赤ちゃんを見て、あなたはまた嬉しくなり、話しかけたり、抱きしめたりするでしょう。

このように、保護者と赤ちゃんの間の相互の正の強化は、感覚の発達と愛着の礎となります。赤ちゃんが保育者の努力に好意的に反応すればするほど、正の強化が頻繁に起こり、親子の絆が深まり、健全な愛着が育まれます。

感覚処理に問題がある子供の子育て

もし赤ちゃんに感覚処理の問題がある場合、親の好意的なお世話や関わりに対する反応が通常とは異なることがあります。例えば、彼らは養育者の声や笑顔に無反応だったり、抱っこされたりスキンシップを嫌がったり、親を求めてこなかったり、どれだけあやしても泣き止まなかったりするかもしれません。これらの兆候が繰り返されると、親子間の正の強化の頻度が低下し、愛着に関する問題や育児不安などが生じる可能性があります。また養育者側の疲労感やストレスも大きくなり、生活の質に影響を与えかねません。

このような状況を防ぐためにも、感覚処理に問題を抱える子供たちに対しては、適切なサポートと介入が必要であり、早期の対応が重要です。

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