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物語創作に役立つ書評:「ディズニーCEOが実践する10の原則」

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「ディズニーCEOが実践する10の原則」から抜き出します。

書評は上のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

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コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)


もし、世界最大企業のディズニーを率いる後継者にえらばれたら?

タイトルにあるように本書の著者である「ロバート・アイガー」は、2005年から2020年2月に退任するまで、ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOを務めました。

前任・直属の上司であったマイケル・アイズナー(ロバート・アイガーはCEOになる前はナンバー2の座にいた)からトップの座を引き継ぐまでの苦労や、その後のピクサー、ルーカスフィルム、21世紀FOXの買収に至る怒涛の実話が本書の見どころです。

前任CEOマイケル・アイズナーは、1966年にディズニー創設者ウォルト・ディズニーがなくなってから悪くなった業績を回復させた功労者でありました。しかし、9.11のテロをきっかけとしたゴタゴタに不安を募らせ、部下、社員の士気をくじいてしまいます。

その結果、マイケル・アイズナーは、ウォルトの甥であるロイ・ディズニーをはじめとする経営陣に、経営者としての手腕に疑いをかけられ、退任することになってしまいます。
ディズニーには、今までとは違う「外部の」変革者が必要だ。という意見が多数の中で、後継者としてだれを選ぶのかを取締役会は考え始めることになります。

マイケル・アイズナーの部下として長年、一緒に働いてきたロバート・アイガーは世間から見ても、取締役会から見ても、次のCEO候補にふさわしく見えませんでした。
ロバート・アイガーは次のCEOになるべきではない。という批判を受けるようになります。

『美女と野獣』、『アラジン』、『ライオン・キング』を生み出した有名プロデューサーであり、ディズニーでも勤務経験のあるジェフリー・カッツェンバーグからも、「君は”傷もの”だからCEOにはなれない」と言われるほど、ロバート・アイガーのイメージは悪いものでした。

そこからどのようにして、どのようなことを語り、CEOになったのか。
本書では当時のディズニー社内部の雰囲気や、対立関係など赤裸々に描かれています。
つづきは是非、本書をご覧ください。

本書では、ABCテレビの雑用係であったロバート・アイガーが、どのようにしてディズニーのCEOになり、成功を収めたのか、本人の視点から書かれている本です。
物語としても楽しめる内容になっています。

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人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)


自分が大失敗したら責任を取らなければいけない。

仕事でも、私生活でも、人はかならずどこかで失敗してしまう。
著者、ロバートアイガーは自分の失敗を正直に認めることで、周囲の人から信頼され、尊敬されるようになると学んだそうです。きっかけはABCスポーツという放送局で働いていた時のこと。

担当していた「ワイド・ワールド・オブ・スポーツ」で、予想外のアクシデントにより大会の放映権の獲得が間に合わず、陸上大会の中距離走の世界記録更新の瞬間を放送できなかった。
上司は、会議の場でヘマをやらかしたのはだれなのかと、周囲に問い詰めます。
ほかのだれもが口をつぐむなか、素直に「自分のミスです」と認めたそうです。

失敗を認め、失敗から学び、たまには間違ってもいいのだと行動で示すことは、だれにでもできることだが重要なこと。
嘘をついたり、自分のせいでないふりをして、誰かに罪をなすり付ける。
人は自分を守るため、素直に失敗を認めるのが難しい生き物ですが、誠実であることは人からの信頼につながるのです。

本書では、ABCスポーツで働いていた著者が下っ端時代の経験と結果的に鍛えられた能力、それを得たいきさつなど、著者の仕事人生で基礎となった経験が語られています。

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人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)


ほかの人から持ち上げられ天狗に → 世界は自分を中心に回っているわけではない

ABCスポーツから異動し、ABCエンターテインメントの社長になった著者は、脚本の読み方もよくわからない門外漢でした。
門外漢とはいえ社長であるからには、へりくだり過ぎて周囲の人を導けないようではいけない。
かと言って、知ったかぶりをしてはいけない。

着任後、難しいバランス取りが求められるなか、ハリウッドのマネージャやエージェント、作家、監督、テレビスターと会う日々が続きます。
著者が何者で、何をしようとしているのか探るハリウッドの住人に、プライドが出すぎて知ったかぶりにならないよう、努力が必要だったそうです。

むきになって相手を感心させようとせず、必要なことを聞き、理解できないことがあることを認め、学ぶ必要のあることはしっかり努力してできるだけ早く学ぶ。
この姿勢を貫くことで、上司、ハリウッドの制作者からの厚い信頼を得ることにつながっていました。

そして、クリエイターの情熱・ビジョン・流儀を尊重し、創造性を損ねず作品造創りを邪魔しないように制作過程を注意深く見守ることに心血を注いでいた著者。
見事、プライムタイム(夜の看板番組が並ぶ時間帯)において、最重要層である18-49歳の層での視聴率1位を獲得することに成功しました。

本書では、ABCエンターテインメントに異動となり、門外漢ながらも結果を残した著者の、クリエイティブ人材との関わり方を学ぶことができます。    

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人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)


ほかの人からの批判が原因で、極度の不安・緊張に襲われてしまう。

その後、著者はABC本社社長、キャピタルシティーズ/ABCの社長兼最高業務責任者(COO)と順調にキャリアを重ねます。
ちょうどそのころ、キャピタルシティーズ/ABCの買収を検討していたのがウォルト・ディズニー・カンパニーでした。

ディズニーによる買収が成立しディズニーに入社した著者は、攻撃的でクリエイティブで、ハリウッド流儀で動く企業文化の中で今までと違うやり方に苦戦します。
権限が完全に中央に集中し手続きが重要視された世界でいいように扱われていたキャピタルシティーズ/ABCの社員たちの不安をなだめ困りごとを解決していきました。

ディズニーでの仕事をする中、ついにマイケル・アイズナーの後継者を選ぶ時が。
しかし、それまで、マイケル・アイズナーの2番手として仕事をしてきた著者を後継者にすることには、反対の声が多く上がっていました。

あの人は「後継者にふさわしくない」という批判を受け続け、そしてディズニーの2番手としての業務を日々遂行する負荷も加わり、ストレスに強かったはずの著者もパニック発作を起こすほどにダメージを受けてしまいます。

これまでのキャリアの中ではじめての経験となる極度の不安を感じていた著者。
それでも取締役会との15回の面接でディズニーの未来を語り続け、後継者選びに勝利します。

本書では、ディズニー内部で起きたもめごとや、後継者選びの大変さなど、世界的有名企業の内部のごたごたを体験することができます。

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テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)

リーダーとは

リーダーとして、著者が得た教訓がまとめられた本書では、最後の章にまとめが書かれており、一覧して参照することが可能になっています。
将来、リーダーとして人を導く人のための教訓として多くの教訓が載せられていますが、今に集中するため、以下を抜粋させていただきました。

野心が先走るとチャンスを逃してしまう。将来やりたい仕事やプロジェクトばかりに固執すると、今いる場所が我慢できなくなる。今ある責任をきちんと果たせなくなるようでは、野心がむしろ邪魔になりかねない。今の仕事で成果を上げ、じっくりと辛抱強く待ち続け、チャンスがきたらそこに飛び込んで活躍することが大切だ。勤勉さと活力と集中力を発揮し、チャンスが浮上した時に、上司から頼られるような存在になろう。

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本書は以下の本です。


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