20190226_ユースルーザー

今、ストリートについて考えること

*このテキストはサブスクリプションサービス「AFFECTUS subscription」加入メンバー限定サービス、メルマガ「LOGICAZINE(ロジカジン)」で2019年2月26日に配信されたタイトルです。

本文は以下から始まります。

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2019AWコレクションが佳境を迎えてきた。世界最高のクリエイティブを見せるウィメンズパリコレクションの開幕が近づく。1月のロンドンメンズコレクションから始まった2019AWシーズン。NY、ロンドン、ミラノと発表が続き、明らかになってきたのがストリートからエレガンスへのシフトである。

数シーズン前からその兆候は見られていたのだが、2019AWシーズンはエレガンスへのシフトが本格化している。メンズコレクションではスーツを発表するブランドが散見された。久しぶりにスーツがフォーカスされそうな匂いである。

そんな時代の変わり目を感じるからこそ、私はむしろストリートが気になり始めた。

「ストリートはトレンドからは外れていくのか」

その問いに私は「否」と答えたい。

ストリートは流行り廃りで語る類のスタイルではなくなり、トラッドのように普遍的スタイルになりつつある。事実、ストリートは既存のスタイルと融合することで、新しい側面を見せ始めた。

私がまずフォーカスしたいのはジル・サンダーである。とりわけメンズウェアに注目したい。ディレクターの一人、ルーク・メイヤーはストリートのキング「Supreme(シュプリーム)」でヘッドデザイナーを務めていた。ルークの持つストリート色が、最も強く現れているのはウィメンズではなくメンズになり、ミニマリズム×ストリート×オリエンタルという3種類の軸の掛け合わせによって、ルークはジル・サンダーのNew Styleを作り出している。

キム・ジョーンズも「Dior Men(ディオール・メン)」において、ストリートを巧みに溶け込ませている。キムが発表するディオールスタイルは、クラシックなエレガンスを特徴としたフォーマルである。そこに、足元にスニーカーを合わせるなどエッセンスとして、ストリートアイテムやそのディテールをディオールのクラシックな美しいフォーマルスタイルに溶け込ませている。キムが用いた方程式はエレガンス×ストリート×フォーマルと言えよう。

そんなふうにしてストリートは、他のスタイルやイメージと融合することで普遍的スタイルへと浸透しつつある。

モードシーンではストリートはトレンド最前線という勢いではなくなりつつあるが、現実的に市場でストリートはまだまだ根強い人気がある。

その人気を証明するブランドが日本にある。それは「Youth Loser(ユースルーザー)」というストリートブランドである。

デザイナーはInstagarmでフォロワー数8万人を超える男性インフルエンサーのKEI(ケイ)氏。 ブランドのシグネチャーとして「1997」という数字が使われているのだが、それはKEI氏の生まれた1997年を表している。この「1997」をTシャツやキャップにプリントしたアイテムが、彼のフォロワーを中心に人気となっている。

商品価格は手の届く価格帯である。たとえば半袖Tシャツで¥3,500、キャップで¥4,500、フーディで¥10,000といった価格帯だ。アイテムの型数は少なく、他に長袖Tシャツ、コーチジャケット、トートバッグがあり、いずれも¥10,000以下であり、他にはステッカーやiPhoneケースが見受けられる。

ブランドスタート当初から、このアイテム数で展開していたわけではない。Tシャツから始まり、徐々にアイテム数を増やしていったのだ。ストリートブランドはビジネス展開がうまい。モードブランドがそのまま採用するのは難しいケースがあるが、参考にすべき点が多々ある。

今回はその点について述べていきたい。現状、今私が知る限りの情報からの考察であり、アイテムの展開時期が前後するなどの可能性はあるが、可能な限りのユースルーザーの変遷をたどっていこうと思う。今回はここからが本文と言っていいだろう(前置きが長かった)。

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