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脳内エクスチェンジャーレポート

頭の中の遊園地「脳内エクスチェンジャー」を開園するので是非きてください!できたらまたレポート書いてくれると嬉しいです〜!                    

寺越からのLINE

また寺越から連絡がきた。
いつものように説明はない。相変わらず全く意味がわからない。今回は自分の仕事で忙しいため断りのLINEを入れた。ただ寺越はしつこい。

”中谷さんの空いてる時間だったらいつでも開園しますんで是非きて下さい!”   

と連絡がくるが、また断る。

”そうですか、残念です。これそうだったら開園するんで連絡下さい”

これで終わらないのが寺越だろう。
そもそも開園ってなんなんだ。

数日たち

”もうすぐ開園します!中谷さんどうですか?” 

また連絡がくる。本当にこいつは‥
とりあえず説明がないので寺越のnoteをみてみる


あの時にみた大島のボレロからの繋がりなのか。
寺越が行っている「出会った人と作っていくぜ伊豆大島編」の時の参加者たちを寺越と樋口綾香さん、それぞれの脳内イメージを具現化した空間を作り、それを脳内エクスチェンジャーというアトラクションとして、来てくれた人達に自由に遊んでもらうという試みらしい。
マズイ、少し気になり始めている。私は疲れているんだろうか。 
私は根負けして、寺越に連絡した。インタビュアーのゴン田中も一緒に誘ったが、「いや〜ちょうどその頃東京いないんです」と言われてしまった。

場所となる世界一小さな芸術祭2021ミュージアム跡地なる寺越の住むアパートへ向かう。賃貸アパートをこんなにつかって大家に何もいわれないんだろうか?
世界一小さな芸術祭2021の時も訪れているので迷うことなくたどり着く。ちなみに私の世界一小さな芸術祭2021のレポートはコチラ


久しぶりに訪れたが外観は変わっていなく、相変わらず今にも壊れそうだ。
階段をみると上のところに奇っ怪な顔が描かれたオブジェに脳内エクスチェンジャーの文字が貼り付けてある看板がかかっている。これは前回の芸術祭同様自由に入って下さいという事だろう。
階段を登ったら服がかけられており、それをくぐると「大島のボレロ」の映像がプロジェクターで流されており、そこからボレロが聞こえてくる。
足元をみると寺越が伊豆大島で拾ってきたと思われる漂流物が円になっていた。実際にみた「大島のボレロ」の体験が蘇ってくる。

ドアは開かれていて中に入ると上のnoteに書かれている通り参加者を具現化した空間が混ざり合っていた。はっきりいってどれもわけがわからないが、それぞれの人間たちをこういう風に寺越と樋口綾香さんはイメージしてるのだろう(上の寺越のnoteに写真あり)
ここでどうやって遊べばいいのだ。ペンやらスプレーやら様々なものが足元に置いてあるが、二人が作ったものに対して手をつける事はできない。かといって壁に落書きとかも厳しそうだ。
私がまごついていると階段を登る音が聞こえてくる。入ってきたのは寺越と樋口綾香さん。

”来てくれてありがとうございます!こんな感じです。どうですか?遊んでますか?”

だからどうやって遊べというのだ。相変わらずこいつは説明しない。

”う〜ん‥そうだ!中谷さん!閉園の日もう一回来てくれませんか?来てくれた人達全員の痕跡で脳内エクスチェンジャーは完成するんですよ。完成したとこみて下さい”

痕跡?完成?わけがわからないが寺越が言うには一番始めの状態から最終日の変化をみて欲しいとのことらしい。わけがわからないのはいつもの事なので仕方なくこの日は帰ることにした。私はどんだけお人好しなのだ。

数日たち寺越から連絡がくる。

明日閉園日です。いい感じに痕跡が残りまくってます。脳内エクスチェンジャーしてますよ(笑)
一番始めとの変化を楽しんで遊んで下さい〜!

寺越からのLINE

寺越の思いのままになるのはしゃくだが、確かに変化は気になる。インタビュアーのゴン田中(以下ゴン)も気になっており、この日はいけるとのことなので二人で向かうことにした。

「よかった〜時間作れて!今度は何なんですか、一体(笑)頭の中の遊園地脳内エクスチェンジャーって意味わからな過ぎてワクワクです!」

ゴンはあえて情報をいれないできたらしい。

「だって頭の中の遊園地でしょ。なんも考えないで遊びたいじゃないっすか!」

ゴンの言ってる事は意外と的を得ているのかもしれない。私は開園日に訪れた時に情報をいれ、考え過ぎて遊ぶ事ができなかった。もしかして寺越があまり説明しないのは単純に童心に戻って自由に遊んで欲しいだけなのかもしれない。いや、それはないか‥。

奇っ怪な脳内エクスチェンジャーと貼り付けられた看板が見えてきた。心なしかオブジェの顔が楽しそうだ。

「なんすか、これ(笑)あ、脳内か、そんでエクスチェンジャーね。相変わらず意味わからないですねぇ(笑)さぁ〜遊ぶぞ〜!!」

ゴンは階段を弾んで登っていった。

「うお!なにこれ(笑)」

ゴンの声が聞こえてきた。階段を登ったら前に見た時と違った景色になっていた。

下にスプレーで、誰か書いたのだろうか?


「これ大島のボレロじゃないっすか!!しかしこのガムテープは何なんすかね、通りにくいなぁ(笑」

明らかに興奮している。落ち着けゴン。
しかしこのガムテープは前にきた時には勿論なかったし、足元の漂流物が円になっているのも紙で埋もれていた。中に入っていくのが困難になっている。

大島のボレロの映像が流れている


「うお!中すごい事になってますよ!これは何なんすか!」

ガムテープを掻い潜り中へ入っていくゴン。後に続いて入ると呆気にとられた。開園日にみた景色が一変している。


開園日
ここまで痕跡が

「お、壁にもスプレーでなんか書いてある!うお!この壁穴空いてますよ(笑」


シーチキンの缶詰で穴は塞がれている


この状態でどう遊べというのだ、寺越よ。

「じゃあとりあえず風船に書いちゃおう!」

置いてあるペンで風船に書き出したゴン。こういうところが羨ましい。私もゴンを真似てなんとなしにペンで少し書いてみることにした。だが気づいたら私とゴンはテープを掻い潜りいろんなところに書き殴っていた。
そういえば私は普段PCを使っているので自分の手で書く機会はあまりない、しかもこんなに自由に何も考えないでどこにでも書くことはないので没頭している自分がいた。

誰かが階段を登ってくる音がしてハッとした。
恐らく寺越だろう。
しかし現れたのは樋口綾香さんだけ。彼女は黙って私達と同じように描き始めた。こんな狭い空間に三人でなにをやっているんだろうと可笑しくなってきた。

「樋口さんですね!大島の時話しましたよね、ゴン田中です!」

「あ〜はい、覚えてます」

「樋口さんはどれ作ったんですか?」

「もう私の作ったものはないですよ」

言ったきり、また黙々と描き始める樋口綾香さん。ゴンも釈然としないまま私を見る。
恐らく樋口綾香さんが言いたかったことは訪れた人達の痕跡と合わさったからもう自分の作ったものではないという意味だろう。

また階段を登ってくる音が聞こえてきた。
缶ビール片手に登場する寺越。

”めっちゃ痕跡残してくれてるじゃないっすか!嬉しいっす!ただもう閉園です〜!”

「え〜もうちょっと遊ばせてくださいよ〜寺越さん」

まだ遊びたいと訴えかけるゴンはまるで子供がダダをこねているようにもみえる。ただ私ももう少しこの変な空間で遊びたいという欲が出てきているのが自分でも驚きだった。

促されみんな外に出る。

”今日はありがとうです!どうでしたか?”

「始めは意味わかんねぇと思ってましたけど、気づいたら自由に遊んでましたよ(笑)寺越さんが邪魔しなければ〜(笑)」

ゴンは楽しそうに寺越に感想をいって二人で喋っている。私は樋口綾香さんになぜ今回これを寺越と一緒にやろうと思ったか聞いてみた。

「誘われて面白そうだなぁと思ったからです」

すごくシンプルだ。そしてこれ以上の言葉は必要ない。彼女の言葉は贅肉を削ぎ落とし、本質をさらけ出している気がする。不思議で興味深い人だ。

帰りの道中ゴンが

「久しぶりに何も考えずに一心不乱に書いたなぁ(笑)子供の頃無邪気に遊んだのを思い出しましたよ」

頷きながら私も同じ事を思っていた。
年齢を重ねるに連れて窮屈になってくる部分がある。ある程度社会のルール、周りの空気に準じなければ生きていきにくい。そういう事を一切忘れさせてくれる空間ではあった。

「なんで展示じゃなくて遊園地にしたんでしょうね。ま、楽しかったからいいけど」

ゴンの言葉を受けて私は考えていた。
寺越と樋口綾香さんは作品を作るというより訪れた人達に楽しんで体験してもらう空間を提示したかったんじゃないだろうか。そしてその大枠自体が彼らの作品なのでは‥

「相変わらずケイさん考えますねぇ〜。いいんですよ、楽しかったんだから(笑)遊んだら腹減りましたね、ラーメン食べて帰りましょうよ!」

またラーメンか‥でも確かに私も空腹を覚えている。
スマホで近くのラーメン屋を探しているゴンの後を追いながらスマホを見ると寺越がSNSを更新していた。

全てのお客さんが帰った後、すぐに中に入る気になれず樋口さんと外からひたすら眺めていた。
建物が疲れていて、でも喜んでくれているように見えた。そりゃそうだよ……普段は人がこんなに出入りしないんだから。

あ~~こうなったのかぁ~~

すげぇ幸せな気持ちになった。

いろんなお客さんのエネルギーが部屋中に溢れんばかりに飛び交っていてまるで生きているようだった。

樋口さんと作ってよかったと心底思った。

1人じゃ絶対この景色は見えなかった。

彼女がいたからそこからお客さんに繋ぎやすくなっていった。

最高だ!

脳内エクスチェンジャーは全く予想してないすげぇことになった。
きてくれた皆さん本当に彩ってくれてありがとうございました。

寺越のSNSから抜粋


生き物‥そうか、確かにあの空間の変質をみると空間が生きているように感じる。私とゴンも含む訪れた人達の痕跡が空間の変質を加速させ生き生きとさせていったのか。
しかしこれは一体なんのジャンルの表現なのだ?芸術なのか?相変わらずよくわからない。いろいろ考えてる自分が可笑しくなってくる。

「ケイさん何笑ってるんですか〜このラーメン屋入りましょうよ」

ゴンの後を追いラーメン屋に入っていく。いい匂いが鼻腔を霞めていく。気づいたらもう夜だ。
今日はいっぱい遊んだもんだ。


文 中谷計


脳内エクスチェンジャー完成



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