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【短縮版】そして誰も読めなくなった

武智倫太郎

 自然言語処理技術が日々進化し続ける中、 #文章要約技術 が再注目を浴び、100万文字のテキスト情報を、X(Twitter)単位の140文字にまで要約する能力を持つようになった。これは人々が求めていた瞬時に情報を理解するための技術革新として、日本中から大歓迎された。

 然しながら、その革新の影には人々の #読解力低下 問題が潜んでいた。多くの人々は、140文字の情報すら煩わしいと感じるようになり、さらに短い要約のニーズが高まった。それに応えるように、文章要約技術は1,000万文字を70文字にまで要約する能力を発揮するようになった。

#俳句 の世界は奥が深い。五・七・五の十七文字で、四季折々の自然、喜怒哀楽、情緒、人間模様、社会、時代、更には宇宙観や死生観も表現できるとされている。

 そこで、日本が世界に誇る『#全人類の叡智の総和の一万倍を誇る』超知能( #ASI )の『誤岳』は、 #オッカムの剃刀 の原理に基づき、十七文字でも冗長であると論証し『〇』の一文字で森羅万象を表現可能であると結論づけた。これは、 #自己言及的逆説 の一例である。なぜなら、『〇』は何も表さないようでいて、実は全てを表す可能性を秘めているからだ。『誤岳』のこの結論によって、世界中の #哲学者 #言語学者 は大混乱に陥った。しかし『全人類の叡智の総和の一万倍を誇る』超知能を論破することなど、どんな学者でも不可能であることは自明の理である。

 そして誰も読めなくなった。

-完-

自己解説

 この作品『そして誰も読めなくなった』は、 #アガサ・クリスティ の名作『 #そして誰もいなくなった 』を元にした、 #武智倫太郎 による #風刺小説 です。この作品は、自然言語処理技術と人間の読解能力の関係を探るもので、日本における『 #コスパ 』や『 #タイパ 』と称して短文化している風潮を批判的に描いています。

 物語は、自然言語処理技術の進化を背景にしており、大量のテキスト情報を極めて短い文字数に要約する能力の進化を描いています。ここでの風刺は、技術進化が人々の情報処理能力を向上させるのではなく、実際には読解能力を低下させているという点に焦点を当てています。特に、Twitterのような短文メディアが主流となる中、人々がより短い情報を求め、結果として内容の理解よりも情報の量と速さを重視するようになっていることを批判しています。

 この物語はまた、俳句の伝統と現代技術の対比を通じて、日本文化の一面を浮き彫りにしています。俳句が短いながらも深い意味を持つことと、技術による極端な情報の短縮が必ずしも深い理解をもたらさないことの対照を示しています。

 最終的に超知能の『誤岳』が『〇』の一文字で全てを表現可能であると結論付ける場面は、自己言及的逆説の一例として描かれています。これは、文字や言葉が持つ意味の多層性と限界を示唆しており、言語による表現の深さと複雑さを提示しています。このような展開は、読者に対して、技術の進歩がもたらす便利さと同時に、それが人間の本質的な理解や思考能力に与える影響について考えるきっかけを提供しています。

 文中の『AIは全人類の叡智を総和したレベルの少なくとも1万倍になる』は、 #孫正義 が株主総会で発言した無責任な発言であり、『叡智』の定義もできないのに、このような法螺話により株主総会を乗り切るのは、孫正義の昔から変わらない性格であることも痛烈に批判しています。

『AIは全人類の叡智を総和したレベルの少なくとも1万倍になる』 by 孫正義

超知能:スーパーインテリジェンス(ASI:Artificial Superintelligence)

『誤岳』は以下の記事で解説してあります。

『そして誰も読めなくなった』は、現代社会における情報処理の方法とその影響、特に言語と思考の関係に深く切り込んだ作品です。技術の進歩と文化的伝統の狭間で、人間性と知性の本質を探求するという点で、非常に興味深い風刺小説と作者自ら断言します。

 ちなみに、アガサ・クリスティは、イギリスの小説家で、20世紀を代表する #推理小説 作家の一人です。彼女の作品は、その巧妙なプロットと意外な結末、鮮やかなキャラクター描写で知られており、世界中で広く愛読されています。クリスティの作品は、推理小説のジャンルを定義し、後の作家たちに大きな影響を与えました。

『そして誰もいなくなった』(原題:And Then There Were None)は、アガサ・クリスティによる最も有名な作品の一つで、1939年に出版されました。この小説は、彼女の代表作として広く認識されており、推理小説の中でも特に高く評価されている作品です。

 この物語は、十人の見ず知らずの人々が、孤立した島の豪華な屋敷に招かれるところから始まります。彼らはそれぞれ、過去に犯したとされる罪について非難され、次々と不可解な方法で命を落としていきます。物語は、それぞれのキャラクターが互いに疑心暗鬼に陥りながらも、殺人者の正体を暴こうとする様子を描いています。

 この小説の最大の特徴は、その驚異的なプロットと予測不可能な結末にあります。クリスティは、従来の推理小説の形式を逸脱し、読者を完全に驚かせる新しい手法を用いています。この逸脱性がアガサ・クリスティと武智倫太郎の唯一の共通点と言えるでしょう。

つづく…

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