見出し画像

一流料理人の頭の中

どうも、和食の料理人の相原雄二です。

たったの5分でわかる『おいしさの仕組みがわかる料理の基本』
著者;樋口直哉


という本を読んだので紹介しようと思います。この本を読むと、料理人の思考回路が明確に可視化することができます。

目次;
▽1、この本を一言で(要約)
▽2、この本を読んでどのような新しい自分となったのか?
▽3、本の内容
        ①;茹でる
        ②;焼く
        ③;蒸す
        ④;揚げる
        ➄;野菜
        ➅;肉
        ➆;魚
▽4、心に響いた言葉
▽5、まとめ


▽1、この本を一言で(要約)
料理を調理科学と捉え、科学的な根拠を持ちながら料理のイロハを学べる良い入門書。この本の構成は2つに大きく分かれています。前半は調理技術について。後半は食材についてです。

こんな人にぴったり;料理が好きで、なぜそうなるのか?を追求したい人。もっと料理の本質を理解してうまくなりたい人。

▽2、この本を読んでどのような新しい自分となったのか?
古い自分;料理を学びたいけれども何から始めて良いのかわからない自分。
新しい自分;料理をどのような道筋で学んでいけば良いか理解している自分。

料理上手になるには3つのステップがあります。
A: 完成形をイメージすること
B: 調理方法と食材の知識
C: 体現するための実務的経験

この3つのステップを抑えながら、feedbackをもらいながらインプットとアウトプットの成長螺旋階段を高速で回していくことである。

▽3、本の内容
        ①;茹でる
        ②;焼く
        ③;蒸す
        ④;揚げる
        ➄;野菜
        ➅;肉
        ➆;魚
①;茹でる
 料理とは食材に火を加えることによって化学反応を起こすことです。その際に料理の世界で大切な考えがあります。それはTT管理です。

TT管理とは、Time and temperature management のこと。

つまり時間と温度というこの2つの要素が料理に大きく影響を及ぼすということです。ここで質問です。調理には茹でる、揚げる、焼く、蒸すといった技術がありますが最も難しいのはどれでしょうか?正解は焼くです。なぜなら温度管理が難しく、火が通り過ぎた(焦げ)や火が均等に入っていない(中が生焼け)という状態が発生しやすいからです。対して、’茹でる’ という調理技術は温度管理が簡単です。なぜなら水の温度は100℃を超えることはないからです。つまり温度のコントロールがしやすいということです。そもそも茹でるとはなんでしょうか?茹でる=お湯の中で加熱すること。茹でる時のポイントとしては強火でお湯を湯で多々後には火を弱めることです。なぜなら100℃が上限でエネルギーの無駄になるのと素材が悪くなるからです。
 うまみは料理のベースです。うまみは大きく3つの種類があります。
1つ目は昆布などのグルタミン酸。
2つ目は鰹節などのイノシン酸。
3つ目はシイタケなどのグアニル酸。
うまみは相乗効果を働かせる性質があり、複数のうまみを重層的に足していくと深い味わいを創ることができます。
 完成形をイメージすること、そして調理技術と食材の知識を心得ていることは料理上手にはかかせることができません。例えば、肉や魚のタンパク質はだいたい60℃前後で凝固します。
 ポイントをまとめます。
A: 茹でる際に沸騰したら強火から弱火にするのがセオリー。
B: うまみの相乗効果を利用せよ。
C: 魚や肉のタンパク質はだいたい60℃で固まってくる。

②;焼く
焼くのポイントは3つあります。
A: 高温x低温を使いこなす。
B: 熱の伝わり方は3種類。
C: メイラード反応


まずは一つ目のポイントからいきます。最初に申し上げたように焼くという調理技術は失敗が多いものの一つです。なぜなら温度の調節が難しいからです。具体例を申し上げると、火が通り過ぎて焦げてしまった。僕のよくやっちゃいます。火には弱火、中火、強火の大きく分けて3種類があります。フライパン上の温度でいうと、120-140,150-170, 180-200℃ などと言われています。

弱火ー120〜140
中火ー150〜170
強火ー180〜200

強火を使う際の用途としては大きく3つあります。
a: 鉄のフライパンを熱する時
b: お湯を沸かす時
c: 強い焦げ色をつけたい時

この3つ以外の時は中火よりも下で調理することが一つのコツとなります。


 B: 熱の伝わり方は3種類。
い;熱伝導 → フライパンの表面で食材を焼く際
ろ;熱対流 → フライパンに蓋をして空気の熱を利用するやり方(蒸し)
は;熱放射 → 直火で焼く際


例えばこのグリル・直火する場合は火の温度調節ができないので、距離を保って温度管理をします。オーブンなんかはこの対流と熱放射の合体技です。

C: メイラード反応
メイラード反応はアミノ酸と糖が合体して ’香ばしい’ が生まれる反応のことです。名前の通り、内科医メイラードさんが発見しました。140℃で加熱されると香ばしい=美味しいが誕生します。

③;蒸す
蒸すは水分が蒸発して水蒸気となります。その水蒸気が食材に付着して加熱します。その後その水蒸気は水となり下に押していきます。それがまた水蒸気となるというサイクルが蒸し器の中で行われています。実は蒸すのには5つもメリットがあります。なんでしょうか?
い:形が崩れない。
ろ;全体を均一に熱することができる。
は:湿度があるので乾燥しない。
に:水を媒介しているので100℃で一定する。よって温度管理が簡単。
ほ;焦げる心配がない。

④;揚げる
い:揚げるの本質は水分を抜くこと。
ろ:トンカツはなぜ小麦粉、卵、パン粉をつけるのか?
は:天ぷらとグルテンの関係性とは?


 おいしい揚げものとはどんなものでしょう?カリッとしているもの。そう、その食感が楽しいですよね。実は揚げものの本質は水分を抜くことなんです。水分を抜くことによってカリッとした食感を生み出しています。食材を油に入れると中の空気が抜けて、油が入り込んでいき均等に加熱が行われます。それを油と水の交換と呼びます。
 トンカツは好きですか?あのカラッとした衣の正体は小麦粉、卵、そしてパン粉です。なぜ衣揚げをするのでしょうか?なぜなら衣という鎧をまとった肉がちゃんと中までで加熱されるためです。さもなければ、つまり素揚げだと分厚いトンカツは外は焦げて、中が半生という状況になります。
 小麦粉と卵はパン粉のノリ・接着剤のような役割を担っています。また小麦粉が肉からの水分を吸ってカリカリ感を出す役割もあります。さもなければ、パン粉が肉の水分を吸ってしまいべちゃべちゃになってしまうのです。
 美味しい天ぷらはどんな天ぷらか。サクッとして軽い天ぷら。どうしてべちゃべちゃの天ぷらへと失敗してしまうのでしょうか?グルテンが大きく関係しているようです。
 
グルテン=小麦粉+水+力 

で生成されます。小麦粉の中のタンパク質である、グルテニンとグリアジンが水と結びつき、サッカーゴールのような網目状で弾性と粘性があります。強力粉と薄力粉はこのタンパク質の量の違いで、強力粉の方がより多くのタンパク質を含んでいます。余談ですが、小麦は実は世界三大穀物の一つで他はトウモロコシとお米です。ここでカラッとする天ぷらを揚げるための3つのコツがみえてきました。つまるところ弾力性のあるグルテンを発生させなければいいのです。

A: 水と小麦粉を冷やす。

→グルテンは人の体温ほどの温度帯で活発に動くため。
B: 混ぜるのを最小限にする。
→力・圧を入れれば入れるほど弾力性が生まれるため。うどんを何度も足で踏むのは弾力性を出してコシを作るため。
C: 衣を作ったらすぐに揚げる。

はい、調理技術はここまでです。茹でる、焼く、蒸す、揚げる、この4つの調理技術について少し詳しくなったのではないでしょうか?続いては食材についてのお勉強をしましょう。大きく分けると、野菜・肉・魚の3種類に分別することができます。

➄;野菜
A: 色で分けてみる。
B: 部位で分けてみる。
C: 浸透圧って何者?


はい、まずは
A: 色で分けてみる。
野菜と言っても、にんじん、玉ねぎ、セロリたくさんの種類があります。これらをどのように調理をしたらいいかのコツは実は色に隠されています。下のグラフをご覧ください。

スクリーンショット 2019-09-26 10.34.24

グーグルのエクセルで色、色素、特徴、野菜とまとめてみました。この4つの色で野菜を分けてみる。そして特徴を抑えながら料理するとまたワンランク上のものができると思います。

B:部位で分ける。
植物は根・茎・葉っぱの3つの要素で構成されています。それぞれの役割は何でしょうか?

根っこ;水と栄養を吸い込む役割。
→にんじん、大根。
:栄養を伝達する、支えるという役割。繊維的な感じがします。
→セロリ、アスパラガス。
葉っぱ:光合成を行う。
→ほうれんそう

ざっくりしたポイントは根っこはじっくり加熱して食べる。それより上(茎・葉)はさっと加熱して食べることです。

C:浸透圧
浸透圧とは何でしょうか?液体の圧力のことで、塩分濃度が高い方へと水は移動する性質を持っています。例えばピクルスを作るとします。カットした野菜を砂糖・水・オスの液体に一晩漬けるとピクルスができます。なぜ野菜に味が染み込むのでしょうか?実はこの答えが浸透圧です。野菜に元から含まれる水とピクルスサルサではサルサの方が塩分濃度が高いので、野菜に含まれている水分が出て、サルサの液体が野菜に染み込んでいくのです。これは食材の水分が抜けて味が染み込む例です。
 逆の例を出しましょう。それはパリッとしたサラダです。野菜を冷い水に浸けておくと野菜がパリッとしますね。これは野菜に含まれる塩分濃度と純粋な水では野菜の水分の方が塩分濃度が高いので、純粋な水が野菜に入っていっているのです。さてみなさん美味しいサラダの3Cを聞いたことはありますか?

美味しいサラダの3C;Cold, Crisp and clean. 

冷たく、パリッとしてて綺麗なものを。
この3つを守ることは美味しいサラダの近道です。話は変わりますが、
料理のプロセスを因数分解してみましょう

切る→加熱→調味。

簡単に言うとこの3つの動作にまとめることができます。この調味という段階で国の文化が大きく主張してきます。サラダのドレッシング(dressing)野菜の着付けはここでいう調味の段階になります。一つサラダ調味のコツをいうならば、

油→酢→塩

の順番で行うことです。油;酢=3:1でやるとベターです。なぜこの順番かというと先に酢を絡ませると浸透圧で味が入りサラダのCrispパリッと感が失い、しんなりとしてしまうからです。つまり先に油で野菜をコーティングし浸透圧の働きを抑制しているのです。

➅;肉
お待たせしました、お待たせしすぎたのかもしれません。(←裸監督風)みなさん大好きなお肉の登場です。ポイントは

A: メイラード反応と肉の構成要素。 
B:  たんぱく質と温度の関係性。
C:  煮豚は難しい、、、?

メイラード反応とはなんでしたっけ?

アミノ酸+糖=香ばしさ

のことです。140度でこの反応が起きます。つまり中火(150−170)以上で加熱してあげるということ。
お肉の構成要素は何でしょうか?3つでできています。
ー筋肉(筋繊維)
ー腱、スジ(結合組織)
ー脂肪

この3つでできています。そしてこのスジはコラーゲンと呼ばれるタンパク質でできており、70度以上の水の中で加熱するとゼラチン物質になり可食となります。

B:たんぱく質と温度の関係性を見ていきましょう。

50℃ー固まり始める
55℃ー弾力が出る
60℃ー水分が出て縮んで行く
65℃ー灰色になり始める
70℃ー焼きすぎ

レア・ミディアムレアは55℃を目安に。肉の限界は65℃となります。

コツとしては火が入りすぎないように三回裏返して2分焼いてその2倍の時間を余熱で火を通すイメージです。さてここで問題なのはメイラード反応は140℃じゃないと発生しないということです。なので肉の加熱は2段階に分けます。

高温x低温=理想の肉

なぜなら高温でメイラード反応を起こし香ばしさを出す、そのあとは肉汁が逃げないように、また固くならないように低温で65℃を超えないようにじっくりと調理する。すると香ばしくもジューシーな理想のお肉とご対面できるでしょう。

C:煮豚
動物の肉は動かせば動かすほど筋肉が発達し固くなります。なので、スネの部分は重たい体を支えているので筋肉が発達し固くなる。またコラーゲンと呼ばれるたんぱく質でできているので、70度を超える水の中で加熱、つまり煮込んであげるとゼラチンに変性し美味しく食べれます。下のグラフに牛の部位を10つの要素に分解してみました。

スクリーンショット 2019-09-26 11.28.12

左が頭で、下が足です。ここで一番柔らかいのはサーロインとヒレです。なぜなら背中の部分で一番運動量が少ないからです。

はい、肝心の煮豚のコツですが、肩ロースを使用します。
肩は運動量が多いので固くなります。

その1;焼いてメイラード反応を起こす
その2:蓋をせずに(気化熱)超弱火でコトコト長時間煮る。

→結合組織を柔らかくする。

➆;魚
最後となりました。食べると頭が良くなると言われている、魚さんです。

その1;生きている世界は冷たく無重力な水の中
その2:魚はできるだけ短時間で調理せよ。
その3:塩をなぜかける?


その1:生きている世界は冷たい水の中
私たち、人間は重力がある陸の上で過ごしています。豚さんや牛さんも同じです。ですが、お魚さんは違います。このことが、調理方法、衛生面、素材に大きな違いが生まれます。

ー魚は短時間加熱で十分な食材です。
ー魚は腐りやすい食材です。
ですので鮮度が命となります。
ー魚は柔らかい食材です。

水の中に生きているので重力による体を支える必要がありません。ですので筋肉があまり発達しておらず、比較的柔らかい食感があります。ふっくらしています。魚のタンパク質は40−45℃で固まり始めます。お風呂と同じぐらいですね。ですのでポイントとしてはあまり加熱しすぎることなく、なぜなら身がパサついてしまうので、さっと調理するのがポイントとなります。

その2:魚はできるだけ短時間で調理せよ。

魚を調理する前に塩をさっとかけて15分おくとレシピ本によく書いております。何が起きているのでしょうか?

塩を魚にかける
→タンパク質が溶ける
→粘りのある魚へと変わる。
→かまぼこのような弾力が生まれる
→崩れにくく、しっとりする。
煮付けた際に崩れにくく、柔らかくふっくらとした魚へと変貌を遂げるのです。

その3:塩と魚の関係 でした。

▽4、心に響いた言葉

料理がうまくなるにはレシピをおぼえるより、食材の内側で何が起こっているのか、を知ることのほうが大事だからです。

レシピ本ばかり読み漁ってはトライしてみることをやめようと思いました。誰かのレシピをただコピーするのだけでは簡単だけれども自分の成長にあまり繋がりません。料理をする上で、なぜこの料理は ’煮込む’ という調理技術を選択したのか、なぜステーキの付け合わせは炒めた玉ねぎなのか、そのような視点を持ちながら日々の生活を送りたいと思いました。

▽5、まとめ
いかがでしたか?とても学びの多い内容の本でした。頭の中の料理フォルダの中に調理技術と食材の知識という中フォルダ。そして、各調理技術と、各食材の小フォルダが僕の脳内図書館に構築されました。著者の樋口直哉さんありがというございます。また、いつもこんなNOTEを見てくださってるリーダーの皆様ありがとうございます。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?