記事更新情報：
DONBURIをmiroverseに公開しました！（2023/6/14）

エンゲージメントツール DONBURIとは何か

「DONBURI（ドンブリ）🍜」は、
息のあったチームになるために、
早く・深く・簡単に！なかまと自分に向き合えるエンゲージメントツールです。

DONBURIは「自己紹介」をアップデートし続ける

毎週10分、みんなが集まる場（オンライン・オフライン）で自分の考えを共有し、まわりがどう考えるかを想像します。相手や自分のことを考えると、いままでみえてこなかったお互いの考えや気持ちを発見できます。
まわりや自分のことをよく知りたい。大掛かりな準備や大それた意気込みがなくても、偉い人の命令や査定がなくたって、自然な感情として人が持つ気t持ちに応えることが、DONBURIの使命です。

使い方は簡単です。

1. 簡単な自己紹介をつくる

2. 自分のことを考える：自分の感覚を表現するゲームに答えて、周りにシェアする。わいがやする。

3. 相手のことを考える：周りがどうするかを想像するゲームに答えて、周りにシェアする。わいがやする。

4. 2~3を毎週繰り返す

具体的な使いかたはこちらからチェックしてみてください

なぜわれわれはDONBURIをつくったのか？

わたしたちは、サービスデザインネットワーク日本支部で組織の行動変容を考えるサービスデザイナーです。わたしたちが組織での行動について話し合ったとき、以下のような日々の違和感が参加者から寄せられました。

 われわれは、これらの違和感が、ひとが自然に持っている「いろめがね」で見てしまうくせ（アンコンシャス・バイアス）によるものだと考え、この「いろめがね問題」が本来息の合うチームをうまくいかなくしてしまう、と定義しました。

息が合わないチームは、なぜ息があわないのでしょうか。
息が合わないチームの、ネガティブ・ループを想像してみましょう。

1. 相手のことがわからない

2. 進め方のイメージが共有できない

3. どこまで自分でやっていいかわからない

4. 成果が出ずに、お互いに信頼できない

5. 何ができるかわからず、ますます相手のことがわからない

とても、恐ろしい状態です。
では、これをポジティブ・ループに変えるにはどうしたらいいでしょうか。

自分と相手のことを知ることから始めると、息が合わない問題が解けそうな気がしてきました。しかし、これを阻害しているのが「いろめがね」問題です。
リモートが中心になり、お互いの理解が深まっていかない。相互理解の仕組みは導入しているが、どこか堅苦しいし、準備が大変。だから、半年に１回しかしてない。こんな話は、どこもあるあるではないでしょうか。

DONBURIはこのような「いろめがね問題」に対する課題意識から生まれた、自分と周りを「知り続けるふるまい」をデザインする行動変容のためのツールです。
DONBURIでは「同じ行動」をしてみて、周りと自分の違いを認識します。
一般的な自己紹介と異なり「自分と相手が違うこと」を強く認識するのではなく、「自分と相手が違うこと」から出発し、相手を程よく理解できるようになります。

DONBURIをつかってみた話

DONBURIはこうやってつかう

では、DONBURIの使い方についてみていきましょう。

状況

あなたは５人程度のチームだとします。毎週30分のチームの打ち合わせがあります。そのなかで10分、DONBURIの時間があります。

簡単な自己紹介をつくる（Team Directory）

まず、チームメンバーの自己紹介ボードを作成します。
コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める上で「あらかじめ伝えておきたいこと」を好きなアイコンの書かれたボードに記入しておきましょう。

自分の感覚を表現するゲームに答えて、周りにシェアする。わいがやする（Reflection Part）

Team Directoryの記入が終わったあとは、Reflection Partを使います。リフレクションとは、自分自身の行動や考えを見つめ直すことをいいます。
チームメンバーの持つ価値観や考え方を互いに理解するということがねらいです。
明確な答え合わせをするのではなく、「なんとなく自分はこうかな」という直感的な仕事への感覚を開示しておくことで、他のメンバーも少し自分を理解できます。
このような、すこし曖昧な感覚を共有するため、このパートでは相反する２つの項目のどちらに近いかをゲージを動かして表現します。

例えば、以下のような項目が登場します。

このプロジェクトでは… 適宜人に任せたい　 ↔️　全部自分で理解したい
このプロジェクトでは… みんなで話したい　 ↔️　個人個人で話したい

このプロジェクトでは… 直接会って話したい ↔️　オンラインで話したい
このプロジェクトでは… 計画性は大事　 ↔️　とりあえずやってみる

なお、この項目は、「質問箱」から毎回自由に選びアレンジすることができるので、このツールを導入する際には、チームのおなやみにあったものを選んで使ってみてください。

実際につかう場面では、
3分間でこのような質問に答えたあと、3分間でそれぞれの選択理由をシェアします。共有している間は、他のメンバーが付箋や絵文字で感じたことを記入することで、より深く、広く各メンバーのことで理解することができます

周りがどうするかを想像するゲームに答えて、周りにシェアする。わいがやする(Conjectre Part)

Reflection Partを使った次の回では、Conjectre Partを使ってみましょう。コンジェクチャーとは、予想するとか推測するといった意味です。ここでは、他のメンバーがどんなタイプかということをみんなで予想することで、他メンバーのパーソナリティに関心を持つようになることが目的です。
ここでは、カジュアルなお題が用意されます。例えば次のようなお題です。
「メンバーの一人が最近元気がないようです。仕事には出ているのですが発言や笑顔が以前より減った気がします。XXXさんだったらどうすると思いますか?」

この質問に対して、XXXさんならどうするか、という予想を他メンバーが行い、付箋に書きます。全員が書き終えたらそれらを共有し、XXXさんが予想の中で自分の行動に最も近そうなものを選び、発表する（🌟をつける）という流れで進めます。
これを、メンバーを変えてやることで、メンバー同士の自然な理解が促進されます。

繰り返す

DONBURIでは、上記の手順のうち、ReflectionとConjecture のPartを定期的に繰り返し行うことを推奨しています。
打ち合わせの前などに、10分程度、時間を取りこのツールを使用することで、メンバー同士の自己開示・他者理解のループを作ることができ、このツールを使う中での対話がチーム内の心理的安全性を高めることも期待しています。

使ってみたらこうなった

DONBURIを、実際に２つのチームで使ってみました。

あるチームは、個人プレーの業務が多く、メンバが孤立感や自走の不安を抱えているという課題がありましたが、DONBURIを使うことで、だれがやってもレクリエーションの質を保つことができ、負荷なく周囲の考えに思いを巡らすようになりました。
さらに、周囲と自分を比べてみて、自分はどうなんだろうと考えるきっかけになったとのこと。印象的だったのは次のコメントです。

あるチームは、職種や経験がばらばらでコミュニケーションの共通性がないという課題を抱えていましたが、DONBURIを使うことで、フォーマルなやりとりや普段の会話ではわからない人となりに気づくことができました。さらに、マネジメント層だけでなくメンバが自発で気にDONBURIを使えそうとのことで、フラットな組織づくりにもつながりそうです。印象的だったのは次のコメントです。

一方で、とてもカジュアルでなんとなく始まってしまったので、なぜ使うのか？という動機づけが不十分。だからこそスキップになる週も多かったりする。といった事象もみられました。今後の課題です。

DONBURIを使ってみたら、ととのった

DONBURIを使ってみて、わたしが思ったのは、自分やチームのメンバの思考が、サウナ好きがよくいう「ととのった」状態になった感じがしたことです。
なんで、こんなことで悩んでいたのかな。なんかこの人いらいらしていそうだったけど、そういうことだったのか。あ、自分がやりたかったことってこういうことだったんだ。
思いや状況が、いまどこにどんな状態になっているか、ということが俯瞰できるだけでも、人は気持ちがすっきりします。DONBURIがまだまだなところもありますし、すぐには解決しない課題もありますが、まずはその課題がどれくらいの大きさでどこにあってどれくらい困っているかがわかるだけで、そうでないときとは気の持ちようが天と地ほども違うはずです。

行動変容デザインの視点から

行動変容デザインの定本『行動を変えるデザイン』を翻訳させていただいた後、いろいろな機会で行動変容デザインについてのお話をする機会をいただきました。そこで、どのようなことを変えたいと思っているのか？と聞くと、行動そのものよりも組織における人間関係の課題を挙げられる方が多いのが印象的でした。

人と人との関係は、行動だけでなく、行動の捉え方や、人の性格の認識で構成されています。
しかし、拙訳『行動を変えるデザイン』で触れている行動変容のつくり方では、プロダクトと個人の行動との関係にフォーカスし、気持ちや性格など頭の中のことはブラックボックスとして扱います。個人に分解できない組織の成果や気持ちや性格は測定が難しく、デザインを改善していくループをまわしづらいからです。

であれば、人の捉え方そのものをデザインするのではなく、人が人を捉え直す行動に落とし込んで、その行動をデザインすればいいのではないか。
それにチャレンジしたのがDONBURIです。

DONBURIは、どのように人のことを捉えたら良いのかを教えてくれはしません。
DONBURIで設定するテーマを、あなたが自由にかえても大丈夫です。
使いやすくするために、話し合いのテーマのテンプレートも用意しています。DONBURIが指定するのは、コミュニケーションの取り方や、コミュニケーションを繰り返ししたくなる仕組みです。

DONBURIが大事にするのは、決めつけないことです。

使えば使うほど、相手のことがわかってくる。でも、その間にあなたと相手は、ギリシャ神話にでてくるテセウスの船のように、少しづつ変わっているはず。
だから、また、少し変わった自分たちを再確認する。

それを繰り返す営みを、飽きずにどう繰り返せばいいのか。
そういう相手を知る行動をデザインしてみたのが、DONBURIです。頭の中の感じ方や性格を直接判断したりはできないけれど、だからこそ、決めつけたり土足で踏み込むことはしないし、したいとも思っていません。ちょっと生ぬるいくらいに感じるかもしれませんが、やった後でちょっとだけ親近感が湧いたり、不安が減っていたらいいなと思っています。

DONBURIとわたしたちの今後

DONBURIワークショップやります

サービスデザインネットワーク日本支部のイベントが来る2023年3月25日（土）に東京・九段下にて開催予定です。

わたしたちもDONBURIのワークショップを実施する予定です。オフラインでも効果を最大限発揮するよう、物理DONBURIがお目見え予定です！

ぜひ、すこしでもご興味持たれた方はご参加ください。

DONBURIをmiroverseに公開しました！

オンラインでDONBURIをやってみたい方向けに、オンラインホワイトボードmiroにDONBURIのテンプレートを公開しました（2023/6/14）。
miroのテンプレートを共有するmiroverseというプラットフォームにて公開されています。

DONBURIを良くしてくださる方、募集中！

サービスデザインネットワーク日本支部のタスクフォースは、だれでも自由に参加（し離脱）可能です。slackコミュニティのなかでゆるやかにつながっています。リンク先ページにslackコミュニティへの招待リンクがあります。こちらからどうぞ！

https://www.service-design-network.org/chapters/japan/about

わたしたちについて（クレジット）

わたしたちはサービスデザインネットワーク日本支部で 「行動変容と組織のデザイン」をテーマに活動しているサービスデザイナーたちです。

順不同・現所属（所属で判断しないでね。発信内容は所属先とは関係ありません）

• 相島 雅樹(株式会社リクルート SUUMOリサーチセンター)

• 相田 航平(株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND)

• 岡本 晋(京都工芸繊維大学)

• 木村 恵美理(BCG X)

• 高橋 靖正(パーソルキャリア株式会社)

• 武山政直（慶應義塾大学）

• 堀口麻奈（株式会社エムティーアイ）

• 村田 こずえ(株式会社エクサウィザーズ)