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葬り切れないあの頃のこと

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もうずっと、蓋をして棚の奥にしまっておいたのに、大人になってからもたまに思い出してしまう、学生時代の自分のこと。


クラスが窮屈で、
なんで同じクラスだからって
団結したり仲良くしたりをみんな、当たり前にできるんだろうと羨ましかった。


その頃の、友達の表情や声を思い出しては、
その度にぐっと目を瞑ることが今でもたまにあるのだ。

情けなくて、(今思うとそんなに深刻ではないけれど当時はしんどかったのだ)、もう戻りたくはないなと思う、あの頃のいろいろを大人になっても思い出す時って、どういう時だろうか。



今でも急にぶわっと押し寄せてくる。

一対一の人との会話の中で。

また、大勢いる集まりの中で。

また、年末年始や長期連休などの、
おまえはどこかに属しているか?と問われているようなあの期間に。



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先日、今付き合っている人とラーメンを食べに行った。「一蘭」に初めて行ったのだ。

あまり注文の方法も分からず、テーブルの上に置いてあった注文書に、横でスラスラと書きこむ彼をチラ見しながら記入していた。

トッピングや、替え玉、麺の硬さなど
選ぶ項目が色々ある。
なんでもいいなーー、とぼんやり考えていた。


そもそも私はそんなにラーメン屋さんに行かないので、あまりラーメンへのこだわりがない。

ないというか、
ラーメンで美味しくないものを食べたことがないので、大抵どれもおいしいと思っているからこだわりがない、というのが理由だ。

いつもは麺の硬さなども、基本人と同じにするかお店がおすすめしている硬さを頼む。

だから
横で書き込む常連の彼に聞いてみた。

私「ネギって青ネギ?白ネギ?どっちにした?」

彼「俺はいつも白ネギにするよ」

・・ふむふむ、白ネギ、っと・・・✍️

私「麺の硬さは、どれがいいの?」

彼「好きなのにしなよ。(笑)」

私「わかんない。おすすめはどれなの?」

彼「自分が食べたいと思ったのにしなよ。(苦笑)」


その時、パッと顔を見た時に
アッやってしまった。と思った。
呆れているような、ちょっと軽蔑しているような薄い笑顔だった。(というか、私にはそう見えただけだと思う) 


わたしは、余程のこと以外は基本ぼんやりしていて、こだわりとかそういうのよりも、
周りに合わせるとか、穏和に済ませるとか
そう言ったことを選択しがちな学生時代だった。

それは吉と出る時がほどんどだが、
たまに凶と出る時もあって、
周りをイライラさせたり、しらっとした空気にさせたり、困らせたりめんどくさがられたりすることがあるのだった。
その時の相手の表情や、声のトーン、急に変わった空気感、つまらなそうな薄い笑い。
そう言ったものを、急に感じ取ってしまう繊細さも兼ね備えているからかなり面倒だった。

「〇〇っていつもへらへら笑ってるよね」


と何気なくクラスメイトから言われた一言が
ずっと喉の奥に小骨のようにひっかかっていた。


自由にクラスを超えて好きな子とグループを組んでもいいよ!という地獄のような先生の提案は怖かった。
いつも仲良くしているクラスの友達も、
実は他のクラスまで選択肢が広がると本当に仲の良い友達が別にいて、そっちを選ぶ。


いつものクラスメイトを誘ってみた時の
相手の反応やなんとも言えない表情と、
自分がどんな顔で声をかけているかを想像すると気持ち悪く感じて、寒気がした。


そういう事を気にしすぎて生きづらく、
相手の反応が肌を刺すように痛かった。
あの頃の気持ちを、ふとしたタイミングで思い出してしまうことがあるのだ。

幸い、今は無理に仲良くしなければならないクラスメイトも、友達もいない。

自分で選んだ好きな人たちに囲まれているから、安心だ。けれどたまに、そんな中でもあの頃の視線が蘇ってくることがあって、その度に
「この人は安心な人だから大丈夫」と
思い直して、気分を立て直す。

実際、ラーメンを注文し終えた後の彼は
よく見るともう軽蔑の目はしていなくて、
「これからラーメンの好みを探していけるといいね」と微笑んでいた。何もなかったように。
(多分初めからそんな目はしていなかったのだ)


あの頃の自分に教えてあげたい。

高校までは決まった箱に入れられて、
すごく仲良くニコイチみたいな人がいないと不安なことが多い環境だが、

大学は自由に授業が選べて、
自由な場所でお昼が食べられて、
好きなサークルに入って好きな人たちと一緒にいられるよと。

社会に出たら会社はあるけれど、
みんなと仲良しであることが第一ステータスではない世界だから、
仕事で成果を出したり、頑張ったり、自分のスタイルを見つけることで、自然と認められるし居場所ができるよと。

給料日があるから、一人暮らしもできるし
自分のためにご褒美を買うこともできる。

その頃でも続いている友達が本物だし、
これからもずっと大切にしていけばいいよと。

そういう広い世界のことを、
あの頃の窮屈だったわたしに教えてあげたい。


体験した気持ちは、やはり今でも葬り去ることはできないのだけれど、それよりも強い今があることを大切に思いたいし、信じたいと思う。

葬り切れないあの頃のこと。

葬らなくても思い出として留めておくことにする。

あの頃よりも確かで、自由で、強い今に、
たまに思い出が覆い被さろうとしてきても
信じて振り払う強さを、もっと持ちたい。

葬り切れないあの頃のこと。

もう少し経ってから、可愛がれるように。


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