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「僕の名前は、」

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旅人たちが、あるときは街に、またあるときは平原に忘れていった話。不定期更新。
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#1500字前後

歩いた昼の夢

歩いた昼の夢

 たぶん、いろいろ理由はあったはずだ。このままだとこごえてしまうとか、放っておけないとか、そういう。でも最たる理由は、なつかしい匂いがしたからだ。
 だから、うずくまっていたその子の手を引いたのだと思う。

 その子は、ほこり除け用としか思えない薄っぺらい布をまとっているだけの、みすぼらしい格好をしていた。肌着を何枚も着こんでいる僕でさえ震えているほどの寒さなのに、その子はそんな素ぶりを少しも見せ

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