12/21。僕と、パートナーと、冤罪のアルマカン。

5:30起床。

天気は曇り。





……。
……。
……もっと、だ。


もっと、
もっと、
深く、
深く。


底の方まで、潜っていくんだ。


……。
……。
……だって、


誰かが、そこで泣いているから。
誰かが、そこで呼んでいるから。


さあ、
あと少しだ。





ヴーーー………ッ


と、鳴りましたね。


昨日、パートナーと遅めの夕食をとっていると、そんな音がした。僕の、もしくはパートナーのスマホが鳴ったのかと思ったけど、どちらも、なんの通知も来ていない。辺りを見渡してみても、それらしきものは見つからず、後には、家鳴りが、思い出したように時々聞こえるだけだった。


「なんだったんだろ……そういえば、スマホのバイブにしては大きかったような」

「アルマカンだね」

「へ?」

「アルマカンだよ」


アルマカン。
顔も部屋番号も知らない、でもギターを弾いているのが時々聴こえてくる――アパートの住人の一人。


「いや、アルマカンのことはわかるよ。わかるけど……彼女(彼?)は、ギターを弾く人だよ。ギターは、あんな音しないよ」

「だから、ギターじゃなくて、別のものを鳴らしたんだよ」

「えー……笛、とか?」

「そうだね。そうに違いない」


パートナーは、うんうんと肯づいてから、ほんの少しだけ申し訳なさそうな顔して、「アルマカンに失礼だったかな」といった。まあ、失礼なことはいってないはずだから、大丈夫じゃないかな。……たぶん。


そういえば、と思う。アルマカンのギターが、最近聴こえてこないな、と。いつもなら、夕方から夜にかけて、もしくは、深夜に突然練習していたのに。


それとも、僕が気付いてなかっただけなのかな。今週は仕事が立て込んでいたから、うちに帰れば、すぐに、布団の上に倒れこんでいた。自分のことで精いっぱいで、外のことに意識を向ける余裕は無かった。


ヴーーー………ッ


あの音が、アルマカンが発したものなのかは、わからないけど(たぶん、違うと思うけど)、でも、ここ最近の自分を振り返るきっかけになった。ありがとう、アルマカン。君は、何もしていないだろうけど。


ところで、君は、実際のところ、ギターをあんまり弾かなくなったのかな。僕が気付いてなかっただけならいいけど、本当にそうなら、ちょっと寂しいな。まあ、僕は君のことは全く知らないし、弾く/弾かないも君の自由だから、しょうがないんだけどね。あと、大家さんに叱られたのかもしれないし。


でもさ。もしよかったら、また聴かせてくれよ。少なくとも、君の演奏を歓迎する人間が、ここにいるからさ。今日の夕方にでも、待っているよ。

この記事が参加している募集

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。