紙の片で見る夢は、(音楽集「紙片」/本と音楽 紙片)

時々、夢を見る。


僕の、将来を。
僕らの、将来を。





3ヶ月前、僕とパートナーは、尾道を旅した。周囲の人は、それを「新婚旅行」と呼んだけど、僕らはその土地で、いつも通りの日常を過ごした。


本屋に行く、カフェでコーヒーを飲む、たまたま見つけた店に、ふらっと入ってみる……。僕らは、きちんとした工程を立てなかった。(行ってみたかった場所には、忘れずに行こう、くらいかな。)ほとんど成り行きに任せた3日間だった。それで、よかった。僕らは、観光旅行がしたかったわけじゃない。尾道で――ほんの少しの間だったけど――生活してみたかっただけなんだから。


尾道で行ってみたかった場所の一つに、「本と音楽 紙片」があった。店名の通り、本とCDを置いている店だ。僕らが宿泊した「あなごのねどこ」(ここも、名前の通り、あなごのようにひょろりと長いゲストハウスだ。)の庭に――つまるところ、ずいぶん奥まった場所に――その店はあった。


僕は、「本と音楽 紙片」に――さらにいえば尾道に――何年も前から行きたいと思っていた。それが念願叶ったわけなので、妙にそわそわしながら、ずらりと並んだ本、本、本の背表紙を撫でた。まるで、図書館の貸し出し上限冊数ぎりぎりまで借りるみたいに、僕は何冊もの本を抱え込んでいた。


けれど、カウンターに持っていくのは、まだ早い。なぜなら、僕にはもう一つ目的がある。それが、音楽集「紙片」だった。

これは、紙片店主が音楽の人・詩の人に紙片という言葉を渡すことからはじまった、ひとひらの音楽集です。

――公式HPより

その存在は、以前から知っていた。通販販売していることも、知っていたけど、手に取るなら、ぜひその土地で、と思っていた。詩と、音楽。僕の、大好きなもの。僕はこれを、自分の土産にすることにした。土産だから、これは、うちに戻ったときに聴こう、と思った。


それからの僕は、「紙片」ばかり聴いている。それは、「詩や音楽を味わう」だけに、留まらなくて。


僕は、思い出す。ふらりと入った喫茶店の、美味しいコーヒー。千光寺の展望台から覗いた、尾道の景色。夕日に照らされた、少し先を行く、パートナーの後ろ姿――。


いつもと違う場所で、いつもと同じ日々を送ったこと。場所が変わっても、変わらないものがあったこと。「紙片」は、そんなことを思い出させた。


そっか。
僕は、思った。


僕は、「紙片」に託していたんだ。


尾道の、記憶を。
僕らの、記憶を。


この先も、大切なことを、忘れないように。





時々、夢を見る。


僕の、将来を。
僕らの、将来を。


どうか、
僕らの夢が、
何年、何十年、
月日が経っても、
続きますように。

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音楽集「紙片」/本と音楽 紙片(2017年)

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