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あなたにとって私 ただの通りすがり【映画】【レビュー】

Lost in Translationという映画がある。「Translation」は翻訳と訳される。直訳をすれば「翻訳される中で失われるもの」、そんなタイトルの映画。

舞台は東京。主役は二人のアメリカ人。

海外の人を主役に据えたせいなのか、はたまた監督の技量のせいなのか。日々私たちが目しているはずの「東京」は、不思議と「Tokyo」に見える。それは自国でありながら、異国性を感じる倒錯感であり、鏡を覗き込んでいるようでもある。

数多くのネオン、カラオケやパチンコ、スクランブル交差点などが映しだす、その異国感は、まるでブレードランナーにでてくるサイバーパンクの街のよう。異国というよりも、それは異世界に近い。

そう、これは異世界に迷い込んだ二人の男女の恋の物語だ。

自分の国で、その国の二人であったらこんな空気は出なかっただろう。
家族との距離感や旅先の高揚感、同じ言葉を話す人の居ない孤独感。そして、日本という国の先進性や、オリエンタル性を混ぜて見せる事によって、より「伝わりづらさ」が際立つ。

そこには音楽の影響もある。この映画の日本向けのトレイラーにも使われており、本編の一番最後に使われている曲がある。はっぴいえんどの「風をあつめて」だ。

外国の人が聞くよりも、日本人が聞いたほうが、より日本を感じられる気がする。そんな稀有な曲だ。

この曲が流れただけで、この映画を1割増し好きになったのは、単にはっぴいえんどが好きなことだけが理由じゃない。自国が舞台の、異国の恋愛映画で、この曲が使われていること。それがとても喜ばしく、最後の最後にハートを持っていかれる。

評価されているされていないにかかわらず、日本人はこの映画を一度は見てみるべきだ。他のどの国の人よりも、この映画を様々な視点から楽しむことが出来るはずだ。

そして、そこには日本人である私たちにしか感じられないカタルシスが確かにある。


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