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台湾の選択 台湾人の思い --「対中国」の切り口以外の大切なもの

「対中国」の切り口

台湾総統選挙の勝者が決まった。
(14日夜に執筆中)

民進党。1996年に総統の直接選挙が始まって以来、同じ政党が3期続けて政権を担うのは初めてだという。

先ほど、当選を確実にした頼清徳氏の国際記者会見で、外国の記者たちが熱心に質問していたのは、やはり、と言う感じだが、中国とのスタンスをどうするか、「対中国」の切り口だった。

確かにそれは、争点のひとつだったと思うが、台湾のテレビは、「外国メディアが押し寄せ、もっぱら中国との関連で注目している」と、客観的な視点で伝えていた。

台湾に何人か友人が、しかも民進党と国民党それぞれの支持者と思われる、そしてさらにノンポリの友人もいるが、彼らの顔を思い浮かべた時、全て単純に「対中国」の観点で見る、我々外国の切り口には、どこか違和感を感じるのだ。

でも、じゃあ台湾の有権者は中国とのことをあまり考えてないか、心配してないか、と言えば、それは全く嘘になるだろう。昔から常に心のどこかにあるようにも感じるし、今の国際情勢や香港を見たら、恐怖とまではいかない人でも、不安を抱かせる状況が拡大している。

でも、我々の思う「対中国」の単純な切り口とは、ちょっと違う気がするのだ。

よく言われることだが、台湾の人たちは、常に中国とのスタンスを問われる中で、毎回絶妙なバランス感覚を持って政治的な選択をしているというのは、民進党が3期目に入ると言えども、感じた。立法委員でどの党も過半数を取れない見込みだと今伝えられているのも、そういうことかもしれない。

「勝利宣言」の前に「敗北宣言」

また、今回も、紳士的な敗北宣言が、勝利宣言より前にあった。

世界中で選挙でいがみ合い、民主主義のリーダーを謳う国まで、選挙結果を受け入れずに議会乱入が起きたりする中で、負けを認めるところから始める、民主体制下での台湾政治の伝統は、見習うべきものかもしれない。

国民党の集会が元気がなかったように見えたのに比べ、従来にない明るく自然な雰囲気で集会を行う第三の党民衆党に、次の世代の台頭を感じた気がするのも、印象的だった。

台湾の親友からのLINE

さきほど、台湾人の親友から来たLINEメッセージの一部を紹介したい。

結構今の台湾の人たちの平均的な意見のような気がしたのだが、どうだろう。(独学による、素晴らしい日本語でのメッセージです)ちなみに、この方は、私ははっきり聞いていないが、これまで国民党に投票してきたと感じている。

周りは落ち着いた雰囲気です。私も今日ある瞬間ふっと、変化ってこういうことかと思いました。国民党だけの時代、そして民進党勢力が台頭してきた時代、民進党が権力を握る時代、別の勢力が台頭しようとして...時代の流れを感じます。人々は以前ほど感情的でなくなるような気がして、政治家の言っていることだけで判断しなくなり、やっていること、感じさせていることで判断したり、かな。

よくできていなければ、人々は次は別の人に票を入れるけど、それでも過去を捨てずにいる国民党に、票を入れたくない人が多いのではないかな。

若い人たちに支持されている柯文哲の得票率は3割行かなかったけど、後ろ盾がほとんどない彼にしてはすごい成績です。負けていないです。

国民党は辛うじて3割ちょっと。落胆当然。大敗ですよ。この8年間なにを反省したか。わからないです。

ところで、若い人はなにを考えているかは、私もわからない。唯一言えるのは、多様的で、権威に怯えることなく自己表現できることかな。そういう若者の前に、頼と候より、柯が面白いじゃないかな。

きっと明日以降、世界中でこの選挙結果を「対中国」の切り口で振り返り分析し、実際、色々な動きも起きるだろう。この切り口は、確かにとても切実で大切な問題だ。

しかし、台湾の人たちは、今一番何を思うのだろう。

私にはわからないが、少なくとも我々が勝手に分析する「親米か親中か」という単純明快な切り口でないことだけは、言えそうだ。

この親友のメッセージの中に、その答えが隠れている気がしたのだった。

そして、最後にもうひとつ。
単純に切り取れないからこそ、台湾は魅力的な場所なんだろうと、あらためて思った。

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今日も最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

AJ😀

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