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スマイル0円、でも値千金 --”世界一”の羽田空港で出逢った笑顔

喜怒哀楽や小さな驚きは、私の身にも毎日のように起きる。しかしnoteの記事にしようと思っても、書けぬまま日々は飛ぶように過ぎていく。その飛ぶ速度は50を過ぎてから異常に速くなるので困ったもんだ。

まさに、Time flies (like an arrow)!  そして光阴似箭!(guānyīn sìjiàn)
(日本語の「光陰矢の如し」の語源はこの中国語だと思うが、英語まで"like an arrow”とは、どういうことだろう。偶然ではなく?ご存知の方教えてください。)

実はゴールデンウイーク、飛行機で神戸に帰省した際に、小さな小さな、しかし強く印象に残ることがあったので、備忘録としてちょこっとここにメモしておこう。

羽田空港の出発ロビー。
誰も乗っていない車いすが、あちこち走り回っている。なんか不気味だけれど。

これは、行きたい場所に自動運転で連れて行ってくれる車いすだ。

その「自動運転車いす」は壁際に停まっていた。やはりお年寄りなどでないと乗るのは顰蹙かと思ったが、何台もあるし、今実は腰が痛いし、どなたでもどうぞと書いてあるので思い切って乗ってみた。無料とはありがたい。何番搭乗口など行きたい場所を入力すると、あとは座っているだけでその場所に連れていってくれる。

小さなスーツケースを後ろのスペースに入れて乗り込み、2、3分?の旅を楽しんだ。前方に通行人を検知すると停まり、うまい具合にルートを取ってゆっくりと走りながら、無事目的地に到着。

動画からキャプチャ

いやあ、面白い体験だった。
なんかまだワクワクした気持ちで車イスを離れ、搭乗口でスマホを触っている時に
気がついた。あれ?スーツケースがない!

そうだ、さっきの自動運転車いすの後ろに入れたんだった。やばい。車いすは、もう自動で元の場所に戻ってるんじゃないか。いや、まだ数分しか経っていないから大丈夫だろうか。

そして、降りた場所にあわてて行ってみると・・・

よかった! 車いすはまだそこに。
で、その横に一人の高齢の女性が周りを心配そうにキョロキョロしながら立っている。係員の人か。いや、服装を見ると清掃の作業員の方のようだ。

私「すみません!私、スーツケースを入れたまま離れてしまって」

女性「ああ、お客さまでしたか。あああ、よかったあ!私も気がついたし、お客さまも戻ってきてくださってよかったあ。ああ、本当よかったわー!」

私「わざわざ待っていてくださったんですね。本当にすみません。」

女性「荷物無事でよかったですし、落とし物で預かったら、身分証明やらでものすごく時間がかかって大変なんですよ。もうすぐ飛行機出発する時に困ってしまいますよねえ。だから、本当によかったなあ、と思って。いやー、ほんとよかったわ。では、お気をつけてね!」

きょうの話は、これだけだ。特にオチは何もない。

まず、セキュリティー管理の面で厳しく言うと、私だってその荷物の持ち主という保証はないし、保安検査場を通った後とは言え、今の時代何か爆発物かもしれないし、すぐに私に返すのはどうか、というツッコミもあるかもしれない。

ただ、私としては、そういうことをさておいて、何よりもこの女性の対応、彼女が「ああ、よかったー」と言った時の笑顔にものすごく心打たれたのだ。作られたサービスの笑顔ではなく、とても自然な、そして、変な例えだが母親やおばあちゃんの笑顔のような温かい笑顔だった。

これはもう理屈を超えていて、あの方の笑顔はとにかくその後も脳裏に焼き付いていた。たったこれだけの話で、たったこれだけの会話なのだが、これほど印象的な出会いもあるのだと驚いた。

なんかこういう話になると、とかくすぐに日本のomotenashi文化だ、素晴らしい、外国にはない、ということを言いたがる傾向がある。

確かに、私もそう思い誇りに感じることも多い。しかし、こういう経験、一瞬なのに忘れられない人の対応や笑顔は、ロシアでも、中国でも、韓国でも、アメリカでもアフガニスタンでも、どこでもあった。そして帰国後その国の話が出た時に思い出すのであった。心温まる経験も、逆に嫌な経験も、世界どこでも似たようなもんだと思う。私はこうした経験のおかげで、「○○人って・・」と国名で外国人をひとくくりにして語ったり、その国の政治家の言動で全体を判断したりせずに生きられていると思う。

ところで、この女性の方は、おそらく清掃の方だと思うが、「羽田空港、清掃」とくれば、思い出すのは、あのカリスマ清掃員。中国残留孤児2世として羽田を世界一衛生的な空港にすることに貢献した、あの新津さんのことだった。

今回のこの方と関係があるのかないのか、全くわからないが、こういうさりげなく温かい対応ができる人が働いている職場は、羨ましいと思った。

今日は、ただそれだけの話なのだけれど、「ああ、よかったあ」と言った時の、あの女性の笑顔は今でも思い出す。


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今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ😀

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