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知らない生活

コロッケとプリンを買って帰る。
「たまには何か買って帰るかー」という気分になり、普段はあまり行かない百貨店の食品コーナーに足を運んだのだ。
ハロウィン限定の揚げ物や、高級そうなお惣菜。1つ800円するショートケーキや、ショーケースに並ぶワッフル。
この場所は少しキラキラしている。

美味しそうなモロゾフのプリンが目に入った。1つ340円。
目の前にいたおじさんがそのプリンを4つ頼んだ。店員さんが紙袋にプリンを詰めていく。
きっと家族で食べるんだろうな。少しだけ後ろ姿が軽やかに見えた。
僕が買うか悩んでいると、社会人数年目っぽい女性が1つだけ頼んだ。
きっと自分へのご褒美なんだろうな。たまにこのプリンを買って帰ってるのかな。きっとこのプリンが好きなんだろうな。
僕は家族の分と自分の分を買って帰った。

あー、なんだか色々な人がいるな。
別に話すわけじゃないけれど、買って帰る人と食べ物を勝手に結びつけて、少し生活を想像してみる。
マダムが両手いっぱいにパンを買っている。この人はきっと常連なんだろうな。明日の朝ご飯はきっとこのパンなのだろう。
おじいさんとおばあさんが揚げ物をいくつか頼んでいる。きっと家でテレビでも観ながら食べるんだろうな。仲良さそうだな。
女子高生2人くらいがドーナツの前で悩んでいる。少し高いから何にするか議論しているのだろう。

美味しそうな食べ物がショーケースに並んでいる。
みんな何かを買って帰ったり、買って帰らなかったり。
誰かを想って買ったり、自分で食べるために買ったり。
ここにいる人の数だけ生活があって、楽しみも苦しみも、幸せも不幸もある。
「今日くらいは」と、自分へご褒美を買ったり、誰かの喜ぶ顔が見たかったり、誰かと一緒に食べようと買ったり、沢山の人が行き交う百貨店。
そんな事実がただ“ここに生きていること”を証明している。
人の数だけ生活があるという、そんな普遍的なことになぜか心が少し温かくなる。
お腹が鳴った。


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