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*お酢を仕込む季節がやってきた!枇杷でお酢を仕込む


 
6月、枇杷の実が色づき始め、たくさんの枇杷の実が手に入ったら、
待ちに待った、ビワ酢作り。
「酢造り」とは晩夏の季語でもあり、熟した柿で柿酢を作る方もおられるだろう。
夏は酢を仕込む季節なのだ。
まだ夏早々ではあるが、枇杷の実がなっているから、
仕込み好きとしては、思わす仕込んでしまうものなのだ。
 
びわ酢、なんてあまり聞かないと思われるだろうが、
実はお酢は様々な果物で仕込むことができる。
ご存じのワインビネガー、リンゴ酢の他、
糖度が10度程度ある果物であれば仕込むことができる。
お庭や畑でたくさんの果物が採れ、食べきれないのであれば、
お酢を仕込む、という手段がある。
 
柿で作るお酢も美味しいけれど、
琵琶やスモモなんかで作るお酢もフルーティーで酸味もまろやか、
とっても美味しく頂ける、季節のお酢として楽しめるものだし、
保存食として年中使えるのもうれしい。
 

数年前に仕込んだ柿酢とびわ酢

お酢とは


食品の糖分を酵母菌がアルコール発酵してアルコールを作り、
そのアルコールに酢酸菌が入ってアルコールを分解して酢酸を出す。
米や麦、トウモロコシなどのデンプンを使用するなら、
まずはそのデンプンを米糀などを使って糖化させる必要があるが、
果物はその点、もうすでに糖であるから、糀菌による糖化は必要ない。
比較的簡単に仕込める果実酢として、
時間はかかるけれどほったらかしで仕込んでおける。
 
お酢まで家で仕込むことないでしょ!と思われるかもしれないが、
市販では味わえない、素朴でまろやかなお酢を一度味わってほしいものである。
 
 
お酢になる流れは、
糖に酵母菌が入ってアルコール発酵
  糖度×1/2=アルコール度数
  (糖度10~12%=アルコール5~6%)
アルコールに酢酸菌が入り酢酸発酵
  アルコール度数の85%=酸度
  (アルコール度数5~6%→酸度4~4.5%

 アルコール発酵と、酢酸発酵の2段階となる。

枇杷の種はリカーに漬けて。
杏仁の香りのするお酒になるよ~

まずはアルコール発酵


 
まずは酵母菌にアルコール発酵してもらう必要がある。
酵母菌とは、食品に含まれる糖を消費してアルコールと二酸化炭素を出す、
お酒を作り出す菌でパン酵母として名高い菌である。

自然界では、果物の表面など糖分の多い所に生息しているため、比較的簡単に捕まえることができる。
ここでは琵琶の実の皮など、酵母菌が居そうな部分を使う。
もちろん、空中浮遊もしているが、甘い所に集中的に生息している。

気温10度以上で活動し始め、
自身で出したアルコール度数がある程度高くなると自滅する。

酵素ジュースを作ったらアルコールになっちゃったのは
この酵母菌のお働きである。
 
琵琶の実を手に入れたらなら、まずはその実にかぶりつく!
糖度計なんて持ち合わせていないから、
自身の舌で甘みを確認するのだ。
出来上がりの酸度が4%ほどに仕上げたいから、糖度は10~12%ほしい。
糖度が10~12%なんて言われても、そんなもの分かるわけないやろ!
というなかれ、うん、甘い!!くらいである。
琵琶は品種によっては甘みが少ないものも多いから、
十分な甘さがないなと感じたら、熟した柿くらいまで糖分を足す必要がある。
糖が少ないと十分なアルコール度数にならず、結果酸度も低くなる。
 
 
 
1)十分に熟したビワを軽く汚れを取りながら、中の種を出す。
枇杷の皮には、酵母菌が棲んでいるので、
あまりキレイに洗い流さないように。
痛んでいるところも取って、実と種に分ける。
甘味が足りない場合は糖分をテキトーに・・(また!?)足す。
 
2)洗った実を広口瓶や樽に入れ、手でぐちゃぐちゃに潰す。
発酵が早く始まるように、少しだけ、イースト菌を足す。
あとは、ほこりや虫が入らないような晒やガーゼなどを被せ、
ガスが出るため、空気が抜けやすいよう軽く蓋をする。

3)ブクブクが治まり、1週間ほどでアルコール発酵が終了したら、
いったん晒やザルで濾して液体にし、清潔な瓶や樽に移す。
酢酸発酵には大量の酸素が必要なため、広口がよい。
 

ぐちゃぐちゃに潰した枇杷
樽の周りの汚れも取ってキレイに
アルコール発酵
ガスが出て、実が浮いてくる

いよいよ酢酸発酵


 
琵琶のお酒ができたなら、次は酢酸菌の出番だ。
酢酸菌は気温が30~40℃と高温を好み、空中浮遊している菌だ。
アルコール度数が10度以上になっていると、酢酸菌は殺菌されてしまうから、
アルコール度数が高そうだったら水分を少し足してアルコール度数を下げてあげる。
 
アルコール度数なんて測るものも持っていないから、
なめてみる・・(また!?)感覚がダイジなのだ・・

1)空中浮遊している酢酸菌に入ってもらうため、
密閉せず、ガーゼや晒を被せたまま温かいところに置いておく。
表面に、白くて、しわしわで、
うすーい菌膜がはって来る。
酢酸菌は好気性菌で酸素がある液体の表面に生息するので、
けっして混ぜてはいけない。
酸はアルコールより重いため、下に沈み、アルコールと酸が入れ替わっていく。(見ててもわからない・・)
薄い菌膜ではなく、分厚い菌膜だったら、酢酸菌ではないから取り除く。
分厚い菌膜は無害なので、取り除くだけでよい。

酢酸菌が入りやすく、虫さんは入りにくい


2)全てが酢酸に変化するまで20~30日放置。
酢の完成の目安はまたもや味見!
匂いを嗅いでみても、つんとした刺激があるから分かる。
ちょうどよい塩梅に酸度がきたな、と感じたら火入れにて発酵終了となる。
そのまま火入れせず放置していると、酢酸菌が今度は酸を分解して
炭酸ガスと水にしてしまうから、菌を必ず取り除く。
近々またお酢を作る予定があるなら、
できた菌膜を種酢として使えるので冷蔵庫で保管しておくこともできる。
火入れは、液体を晒で濾しながら清潔な保存瓶に入れ、
湯せんで(水から入れる)酢の温度が65~70℃を10分。
 この時の瓶は1小瓶のように狭い口の瓶がいい。
液体が酸素に触れる面積を狭くすると、
雑菌が入りにくい。

さらにそこから1年2年と熟成させると美味しくなる。
1年2年なんて待ってられないよ!なんて聞こえてきそうだけれど、
毎年仕込んでおけば、
さて、今日は何年物にしようか、なんて楽しみもできるかも?
 
初めてお酢を仕込もうとしたのは、
自分で作ったドブロクから米酢を作ろうとした時だった。
酢酸菌のことなんて、あまりよく知らずに、
出来たドブロクを瓶に入れ、晒で蓋をしてしばらく待った。
けれど、待てど暮らせど酢酸発酵なんてしてこない。
シーンと静まり返ったまま、なんの変化もなく冬になった。
今思えば、ドブロクのアルコール度数は10度以上。
酢酸菌は度数の高いお酒にダイブして死滅したのだろう。
水で薄めて度数を下げてあげないといけないなんて想像もしておらず、
「なんでかなぁ~」と首を傾げたものだ。
 
酵母菌や酢酸菌と仲良くなって、いろんな果物で試してみてね。


 
 

からだがやわらかくなるで


 
 

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