【感想】組織と個人のグッドサイクルを回す「ユーザー中心組織論」
「ユーザー中心組織論」を読みました。
著者の金子さん(@tsuyoshi_osiire)はデザインマネージャとしてサービス開発やプロダクト開発に関わるデザイナーです。この本の特徴的なところは、デザイナー向けではなく広くビジネスに関わる人に向けて書かれている所だと思います。
ユーザー中心設計・UXデザイン・デザイン思考など、ユーザー起点のデザインの技術や考え方が注目されて久しいですが、組織で実行していくためには知識や技術だけでは難しく、一つのまとまりを持った活動として統合されて行く必要があります。
当たり前ですが、ビジネスはデザイナーだけのものではありませんし、営業だけのものでも、社長だけのものでもありません。
デザインの知識をひけらかしてばかりで何もしていない、なんて事になっていないか、、私も気をつけなければ、、
本書はユーザーを中心に考えるというコンセプトの元、プロジェクトをチームで取り組むための手法やプロセス、考え方がバランスよくまとめられています。
私はこの本に頻繁に登場するグッドサイクルという言葉が気に入りました。大雑把に行ってしまえば本書の目的は、組織とそこに関わる人々のグッドサイクルを回す事にあるのではないかと思い、「グッドサイクル」という言葉を手がかりに紹介したいと思います。
「組織の」グッドサイクル
グッドサイクルという言葉についてあらためて説明する必要はないと思いますが、いわゆる好循環の事を指しており、ダニエル・キムの「組織の成功循環モデル」が紹介されています。
それぞれの質が関係しあって組織が成長するという考え方です。
組織のグッドサイクルを回すためには、組織開発という観点からのアプローチはもちろんですが、「ユーザー中心組織論」で一貫して言っているのは、一人一人の行動が大きな鍵になるという事です。
「あなたの」グッドサイクル
本書では具体的に2つの「グッドサイクル」という言葉が登場します。
・組織のグッドサイクル
・関係性のグッドサイクル
個人に関わる部分にグッドサイクルという単語は使われていませんが、行動と改善のループについて言及されています。
周囲を巻き込むために必要なプロセスであると同時に、自分が成長するためにも必要なプロセスだと思います。
ビジネスに関わる私たち一人一人の行動が変わり、個人の成長が組織のグッドサイクルと噛み合う事で、組織の持続的な価値創造が可能になると思います。なにより個々人が楽しく仕事をする上でもすごく大切なポイントだと思います。
個人の行動から組織のグッドサイクルへ
ユーザー中心組織論では、組織と個人が関わりながらグッドサイクルを回すための、考え方ややり方、必要な知識、マインドセットがわかりやすくまとめられています。
本の中でsnsで感想を共有するための仕組みが用意されています。読書体験をシェアして他の人の行動を誘発するという行動が、この本で読者に起こして欲しい行動への誘いであり、読書体験のグッドサイクルがデザインされていると感じました。
組織づくりというと、マネジャーや経営者の仕事というイメージがありますが、現場の一人一人から始められるというメッセージは、現場の実践の中で試行錯誤してきた著者だから書けるものだと思いましたし、私には現場で悩む人へのエールのように感じました。ある種の人間讃歌とすら感じて勇気をもらいました。
あとはあなた次第、さあ何から始めますか?と優しく問いかけてくれるような本でした。
組織のグッドサイクルが滞っていると感じる全てのビジネスパーソンはもちろん、これから働く新入社員や、ビジネスの世界に入ったばかりの人に特におすすめしたい本です。
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