橘玲 『人生は攻略できる』

★★★☆☆

 今年の3月に出た橘玲の新刊です。
 橘玲がこれまでの著作で書かれた内容を若者向けにまとめた一冊です。僕は連休の半日でさっと読んでしまいました。さっと。

 正直なところ、あまり目新しい情報はなかったです。僕が橘玲の著作をたくさん読んでいるからでしょうね。ページをめくっては、「あ、その話ね」という感じで、まるで復習をしているようでした。
(これ、進研ゼミでやったやつだ!みたいに)

 逆にいうと、それくらい著者の主張はぶれていないということでもあります。金融関係でも、人生指南でも、橘玲の主張には合理性(エビデンス)が基底にあるので、時代によってそれほど変化しません。
 一世紀単位ならわかりませんが(科学の進歩によって、新たに解明されることが出てくるので)、十年単位くらいではあまり変わらないようです。耐用年数がわりに長いです。

 この本の中で僕が一番なるほど!と思ったのは、「不幸とは気がかりである」という話です。

 原始時代なら食べ物の不足、現代ならお金の不足が主な理由になるでしょうが、人は気がかりなことがあると、とにかくそれを解消しなければと苦しみ、不幸になる。
 逆に、それが解消されると幸福を感じる。
 空腹状態は不幸ですが、何かを食べて満腹になれば幸福を感じる。シンプルですね。

 ものすごくあたりまえなことに聞こえますが、きちんと自覚している人はそれほど多くないのではないでしょうか?

 気がかりなことをなくすには、二つの方法があると思います。
 お金を例に挙げるならば、一つはお金をたくさん手に入れることです。これは誰でも思いつきますね。
 もうひとつは、お金のことをあまり気にしないメンタリティを養うことです。

 本書の中でも書いてありましたが、現代の日本にいる時点でかなり恵まれているわけです(政情不安なシリアに比べたら天国です)。もちろん、なかなかそうは思えないでしょうけれど、現状を相対化する視点をもつことで、気がかりを軽減できると思います。

 お金にしてみても、足りないと思ったらきりがないわけですから。たとえば、一億円持ってるのに、周りがみんな10億円持ってるから自分を貧乏だと思っちゃうなんて、馬鹿げていますよね。
 そういう意味でも、「事実」を知ることほど有益なことはないです。

 というわけで、本書は人間というものの性質をさらっと理解するのに最適な一冊でした。若者はぜひ読んでください。橘玲の著作をあまり読んだことがない人にもお薦めです。
 僕も20歳くらいのときに読みたかったなあ。

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