見出し画像

フリーランスエンジニアとしての軸

僕はBubbleというノーコードツールを使って、Webアプリを開発する仕事をしている、シドニー留学中のフリーランスだ。

Bubbleの独学を始めたのは、二年と少し前。今では、Bubbleが僕の仕事の全てであり、生活の基盤である。

IT未経験だった僕が、フリーランスでITエンジニアになろうと思った大きな理由の一つに、「どこからでも働ける」というものがある。

今はシドニーに留学中だが、将来もしこの国を去らないといけなくなったとしても、手に職があり、それが世界のどこからでも提供できるものであれば、場所に依存しない暮らしができるようになる。

その想いで飛び込んだIT業界だが、当初から僕がずっと信じ続けている一つの軸がある。

それは、「ITは人々の暮らしを豊かにする」ということだ。
特にアプリやシステム制作となると、この言葉は大きな意味を持つ。

人々が何かアプリを欲しいと思うとき、システム開発が必要だと感じるとき、それは「身の回りに不便を感じている」ときに他ならない。

例を挙げるなら、

  • 他店との業務のやりとりを簡略化したい

  • 紙ベースやメッセンジャーアプリ経由で行う請求管理業務が煩雑すぎる

  • イベントの開催から支払い、会場へのチェックインまでをサービス化したい

  • 顧客リストを自由に管理したい

といったような感じ。
これらは、実際に僕が仕事として請け負い、世の中に提供してきた、あるいは現在開発中のサービスの一例だ。

これらに共通して言えることは、「そこに不便が存在している」ということである。

この「不便」という言葉の中には、例えば、多くの社員に承認をもらうために一枚の紙がたらい回しにされることによる、時間的、作業的な煩雑さや、それによって発生するであろうヒューマンエラーによるデータの不一致なども含まれる。

これらの煩雑な作業をアプリに任せることによって、この作業に関わっていた人たちは手が空き、他の仕事に注力できる。
また、一連の作業を自動化することにより、単純な計算ミスや記入漏れなどのヒューマンエラーを防ぐことができるようになる。

加えて、紙代や印刷代、人件費などのコストを大幅に削減することだってできるだろう。

つまり、彼らが感じている「身の回りの不便」を、デジタル化が解消することで、彼らの生活は間違いなく豊かになる。

あるいは、僕は全く新しいコンセプトのマッチングアプリの開発に携わったこともある。現在、徐々にユーザーは増えている。

これにより、僕の知らないところで、知らない誰か同士が結婚し、家庭を築いていくことだってあるだろう。

そう、ITは人々の暮らしを豊かにするのだ。その手助けを担うのがITエンジニアであり、僕の役割だ。

今ほどスキルも経験もない駆け出しのころから、僕はこのようなことを考えながらいつも、構築、開発に取り組んでいた。

最近はその規模が大きくなり、本当に色々な人の暮らしの中に、僕の作ったアプリが存在するようになるかもしれない、と想像している。

僕はもともと細かい性格で、何事も気にしすぎてしまうことがある。
人が気にしないようなところまで気になってしまうことがあり、その性格に疲れてしまうことも多々あるが、今ではこの細かい性格が、細かい作業であるアプリ開発に本当に適していたと思う。

ピクセル単位で見た目を微調整したり、ほんの僅かな動作改善を行うために何時間も費やすことがある。
自分が気に入らないところは、徹底して改善しようと努める。

時々、「こんなに細かいことをやっていて意味があるんだろうか?」と、ふと疑問に思ってしまうことがある。

しかし、誰もが気にしないような細かいところまで気遣って作りこんでいくからこそ、それがユーザーフレンドリーなアプリに繋がり、利用者の生活に届くと信じている。だから、手は抜かない。

開発者なら当然のことかもしれないが、このあたりの気遣いができていないエンジニアが意外と多い、と感じることがある。

特に、駆け出しエンジニアは、その兆候が顕著だ。

「場所に捉われず稼ぎたい」という、自分のみに向いた欲や憧れだけでエンジニアになると、ユーザーが置いてけぼりのプロダクトが出来上がり、誰も幸せにならないアプリがリリースされてしまう。

僕はいつも、「三方よし」でありたいと願っている。

それは、僕が作るアプリによって人々の不便が解消され、クライアントに利益が生まれ、技術者の僕も満足のいく収入を得られる、ということだ。

しかし、ユーザーを置いてけぼりにするようなアプリをリリースすると、デジタル化のせいで更に人々のストレスが増え、クライアントは顧客を失い、技術者は信用を失っていまう、ということになりかねない。

そして、フリーランスは一度信用を失っていまうと、それを取り戻すことは不可能に近い。
個人の名前で信用を毀損することは、フリーランスにとって致命傷を意味する。

僕が小さな部屋からパソコンに向かい続ける細々とした作業が、そのうち世の中に届き、人々の暮らしを豊かにする。

それがクライアントにとっての、社運を賭けたサービスであることもある。

僕はひとりのしがないフリーランスエンジニアだが、人々の生活を豊かにする役割を担っていると思うと、小さくてもささやかでも、社会に貢献できている実感が持てる。

細かすぎる作業に、「意味があるんだろうか?」と立ち止まってしまうときは、自問自答をし、ITのあるべき姿を思い出し、今日もこの部屋からパソコンに向かう。決して、手は抜かない。

この地道な作業が、いつかきっと、あなたにも届くはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?