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山頭火句集【700句・イラスト付】/久永堂書店編/春の部

美容院にて、雑誌の代わりに山頭火。
花粉の気配もしているし、春の部をながめる。

てふてふうらからおもてへひらひら

てふてふもつれつつかげひなた

一つあると蕗のとう二つ三つ

蝶々とふきのとうの句がいくつもある。
蝶の羽が裏も表も見えるように二匹がくるくる舞う。
もつれるように舞うのは小さなすみれ色の蝶。
目で蝶を追い、その足元には頭を出し始めたふきのとう。
目が慣れてくるとここにもあそこにも。
春だなぁ。

ひとりたがやせばうたふなり

鼻歌から徐々にテキトー歌詞になった母の歌声が畑から高らかに聞こえてくる。
サビがエンドレス。
お昼ごはんの支度のために長靴をカポカポ鳴らして戻ってきた母のエプロンの中にふきのとうが数個。
「陽当りいいからもうバッキャ出てたぞ」
※バッキャ=ふきのとう
子供の私は生返事。

行きつけの美容院には、去年まで同じ職場でバイトとして入っていた子が、美容師の卵として働いている。
カラーリングとシャンプーを彼女が担当してくれた。
成長著しくてまぶしい。
別の子はラーメン屋で働き、自分が考えたメニューが採用されたから食べにきてほしいという。
介護職に就いた子は持ち前のバイタリティで「もう私が仕切ってますよ」と朗らかに笑う。

何が何やらみんな咲いてゐる

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