aki

読書感想文 * 好きな本を楽しく読みたい

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最近の記事

シッダールタ/ヘルマン・ヘッセ

ヘッセに夢中です。 (どの口が) デミアンのおかげで、ヘッセ文体と内なる声を求めてやまない癖に免疫がついた。 噂に違わぬ名言のオンパレード。 並行して『ヘッセ 人生の言葉』も読み、浴びるように享受する。 言葉に囚われるな、過度にありがたがるな、と諭されるのだけれども。 刺さる言葉がありすぎる。 イメージが飛び込んできたものをピックアップしてみる。 <「思ったことの半分も言えない」よりも「言っていることの半分も思っていない」の方が圧倒的多数> といったのは森博嗣。 もっと

    • 鳥肌が/穂村弘

      ブツブツした装丁の手触りに鳥肌が。 小学低学年くらいの頃、近所の友達のおうちに遊びに行った。 友達の小さな弟くんをおんぶしたとき「小さくて軽くておもちゃみたい」と思った。 そのままジェットコースターのように上下に加速度をつけて強めに部屋を走り回った。 その子はキャッキャしていたが、私は隣の部屋にいるであろう大人の気配をちょっと気にしていた。 私の力加減ひとつでどうにでもできるというフラグ。 こんな残酷な気持ち、私だけかと思った。 何十年も沈めていた記憶がすうっと浮上して、空

      • 石垣りん詩集 表札/石垣りん

        自分の住むところには 自分で表札を出すにかぎる。 石垣りんとの出会い。 家族が悩んでいるときだった。 今いる場所に苦しんでいるときだった。 その場所にかかっている表札に苦しんでいるように私にはみえた。

        • 夜を乗り越える/又吉直樹

          文豪の作品を少しずつ読むようになったのはここ数年のこと。 だから今が良きタイミングだった。 純文学は感想文を書かせたら刺さるところがみんなバラバラになる、とどこかで聞いて震えた。 同じ人でも年齢で異なる。 だから一冊の本を生涯大事に持つことができるのか。 作品を風呂敷だとして、広げた風呂敷の模様が美しかった、そんな感想でもいいのだ。 私にとって宮沢賢治の作品は「はぁぁぁ美しい……」と抱きしめるものだが、何年か経ったら違う感情を抱くのかもしれない。 今からすごく楽しみだ。

        シッダールタ/ヘルマン・ヘッセ

          人間失格/太宰治

          生は悲劇という葉蔵、喜劇と言いきる堀木。 言葉遊びの二人の対比が、その後の人生の対比でもある。 葉蔵は不幸をいちいち丁寧に掬い上げるが、幸せは簡単に取りこぼす。 葉蔵が堀木の自宅を訪問した際、年老いた母が薄いおしるこでもてなし、恥ずかしがるでも虚勢を張るでもなく、ありがたいと感謝して食べる堀木。 これまでの都会派遊び人イメージとは違う、家の内と外を使い分けている堀木に葉蔵は裏切りを感じる。 同類ではなかった。 正しく真っ当に人間社会を生きている。 勝手に裏切られたり幻滅し

          人間失格/太宰治

          デミアン/ヘルマン・ヘッセ

          挫折するかと思いきやまさかの一気読み。 お父様を信じてよかった(『この闇と光』)。 とはいえ、複雑な言い回しで理解に苦しむところがまあ出てくる。 そこで新潮文庫の高橋健二訳を読みながら、光文社古典新訳文庫の酒寄進一訳(Kindle Unlimited ¥0)を辞書的な役割にするという、私史上初の方法をとった。 ざっくりした違いとして、高橋健二訳は抽象的で古典的で直訳っぽい。 酒寄進一訳は具体的で現代的で意訳っぽい。 現代的な訳が最適かというとそういうことでもなく。 理解よ

          デミアン/ヘルマン・ヘッセ

          この闇と光/服部まゆみ

          解説・皆川博子! ここでお目にかかるとは光栄です。 幼い盲目のレイアは、自分と父とダフネしか知らない。父から与えられた世界しか知らない。父との世界が全て。 ミステリーばかり読んできた私は騙されませんよ。信頼できない書き手が要注意なのは基本中の基本。 レイアに父が読み聞かせしてあげる作品は、子供には難しくないか?というラインナップばかり。 『嵐が丘』のヒースクリフはわからないが、『罪と罰』の金貸しの老婆の嫌悪感は知ってる。 Kindle Unlimitedで『罪と罰(まんが

          この闇と光/服部まゆみ

          砂の女/安部公房

          蟻地獄に誘われ抜け出すことのできない砂。罠に足を踏み入れた男。逃したくない女。観察している村人。 口の中がざらつく。 ヤマザキマリ様が解説してくれた100分 de 名著。第3回までみて居ても立ってもいられなくなった。最終の第4回を共に迎えたい。 自由な生き方に憧れ管理社会に反発していた男が、いざ危機的状況に陥ったとき、社会に登録された自分の属性にすがりつく。 だがそれもここでは脅しにもならない。 自由を求めてやってきた村に捕らわれ、自由を取り戻したいと抗う男。 自由と

          砂の女/安部公房

          山頭火句集【700句・イラスト付】/久永堂書店編/春の部

          美容院にて、雑誌の代わりに山頭火。 花粉の気配もしているし、春の部をながめる。 蝶々とふきのとうの句がいくつもある。 蝶の羽が裏も表も見えるように二匹がくるくる舞う。 もつれるように舞うのは小さな菫色の蝶。 目で蝶を追い、その足元には頭を出し始めたふきのとう。 目が慣れてくるとここにもあそこにも。 春だなぁ。 鼻歌から徐々にテキトー歌詞になった母の歌声が畑から高らかに聞こえてくる。 サビがエンドレス。 お昼ごはんの支度のために長靴をカポカポ鳴らして戻ってきた母のエプロンの

          山頭火句集【700句・イラスト付】/久永堂書店編/春の部

          議論の余地しかない*Photograph index/森博嗣

          森博嗣自身が撮影した写真に、小説からの引用とメッセージをクロスさせた本作品。 巻末にPhotograph indexとして、写真にタイトルがつけられている。 引用文とはまったく関係ない、写真としてのタイトル。 これ、よくよくみると、写真で大喜利してますね。 一番気に入ったのは、『時間の残量』というページのハカリ?温度計?の写真。 Photograph indexには『近影』とある。 よーくみると、撮影者の顔が映り込んでいる。 つまり、作者近影。

          議論の余地しかない*Photograph index/森博嗣

          議論の余地しかない/森博嗣

          S&M、Vシリーズなど、これまでの作品から抜き取った珠玉の言葉たち。 引用元のタイトルを見ただけでしびれる。 そんな人向けのフォトエッセィ。 動機なんてさして重要ではない、と発言したのは犀川先生だっただろうか。 被害者が、世間が、納得するためだけに必要なのだと。 ミステリィばかり読んでいた当時の私は少なからずショックを受けた。 納得できる理由があれば、安心するのか? 多様性に対応したトイレ問題を思い浮かべる。 何が問題かわかっていないから、やることなすこと炎上する。 当時

          議論の余地しかない/森博嗣

          悪童日記/アゴタ・クリストフ

          読了後の儀式、タイトルと向き合う。 原題の直訳は「大きなノートブック」だそうだが、『悪童日記』と意訳されている。 この子らの賢さ、したたかさ、逞しさ、大人顔負けの物言いは、ホームアローンのケビン少年と重なる。 双子のケビン少年。 これは質が悪い。 でもこの子たち、なんか憎めないんだな。 最初から最後まで「ぼくら」で語られるこの子たちの作文(日記)。 ぼくらには、ゆるぎないルールと正義がある。 それが非道でも残酷でも。 生き延びることだけに全振りした「ぼくら」の生き様に

          悪童日記/アゴタ・クリストフ

          クララとお日さま/カズオ・イシグロ

          2022年第一位。 クララ愛しい、愛しいクララ。 読書メモにこれしか書いていなかった2022年の私。 表紙のひまわりを一年アイコンにするほどゾッコンだったのだから、もう少しまともな感想を残せなかったものか。 『わたしを離さないで』以来のカズオ・イシグロ。 表紙がとてもかわいらしい。 人工知能を搭載したクララの目線で描かれた作品。 クララがピュアで、優しくて、思いやりがあって、慈悲深く、誰よりも家族思い。 人間とどこが違うのか。 人間より人間らしい、いや、人間らしいとは

          クララとお日さま/カズオ・イシグロ

          老人ホームで死ぬほどモテたい/上坂あゆ美

          読書スランプのときに俳句と短歌が気になって、少しずつ触れるようになった超初心者。 俳句にちょっと感情や皮肉をのせたりするのが短歌なのかな、とか。 好みか好みじゃないかの浅い表面をなんとなくで触っていたら、渡辺祐真さん(スケザネさん)のコラムにであう。 『葛の花踏みしだかれて色あたらし』 足元の踏まれた葛の花、そう時間は経っていない、少し先を行く人がいたんだなと思いを馳せて、さて、と歩みを強くする。 自分ひとりの世界。 ここに「肉体の気配」。 『この山道を行きし人あり』 お

          老人ホームで死ぬほどモテたい/上坂あゆ美

          ロゴスと巻貝-ミツバチのエッセイは蜜のように甘かった-/小津夜景

          「え?」 小津夜景さんのブログを読んでいて、あわてて本棚にむかった。 ブログの文末に引用されていたX(旧Twitter)に、『ロゴスと巻貝』の緒言に『花と夜盗』のフレーズが、とあったのだ。 すぐさま『花と夜盗』をパラパラめくる。 本当だ。 「光の帆」の句も、「架空の島」の句もある……! 「なしのつぶて」の語源ばかり注目して、なにも気づいていなかった。 まてよ、「なしのつぶて」の句もあるぞ。 さすがにそこまでは考えすぎ?季語? いや、正直に、句集の読み込みがまだまだ甘

          ロゴスと巻貝-ミツバチのエッセイは蜜のように甘かった-/小津夜景

          ロゴスと巻貝-それは音楽から始まった-/小津夜景

          読書スランプに陥ったことがある。 集中力が途切れて紙の上を目がすべるようになり、それがすごく残念なことに思っていた。 他の人の読書との距離感を知ったのはそんな頃。 読みかけの本が何冊もある。 長編を読んで疲れたら合間に短編を読む。 ジャンルが違う本で気分を変える。 買ったとき理解できなかった本は、しばらく寝かせて数年後に読む。 マンガ版でもいい。 雑誌も図鑑も読書の範疇。 飾るだけでいい。 読まなくていい。 学生の頃のような徹夜してでもという読書体力はない。 心地いい距離

          ロゴスと巻貝-それは音楽から始まった-/小津夜景