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音楽と建築2 前編

たまに行く喫茶店


たまに行く喫茶店が吉祥寺にあります。井の頭公園に面して建つ、窓ガラスはシングルガラスという築年数の経ったマンションの1階にあり、席数は10席ほどでしょうか。入り口には、ここがおしゃべりをしに来る喫茶店でなく、一人静かに佇みたい人に向けた場所であることが書かれています。ある意味注文の多い喫茶店かもしれません。メニューの表にも『店内での会話はお控えください。イヤフォンで音楽を聴かないでください。』など、この店のルールが書いてあります。

おそらくは店主自らが作ったのであろう古い建具や合板であつらえた空間は
歩くと床板がギシギシと音を立てて、先客がいると静かな店内に響くのでちょっと気まずい。その音を聞くと中野にあった名曲喫茶を思い出します。あそこは2階へ上がる階段からギシギシと音を立てていて、来客から店員まで動き回る気配が、昼間でも薄暗いその店内のどこに座っても手に取るように分かった。でもなぜかそれも雰囲気づくりに貢献していた。不規則なギシギシ音が不思議とイヤではなかった。

クラシックがレコード盤で流れていた中野の名曲喫茶とは違い、ここではいつもjazzがレコード盤で流れています。その音量が絶妙で、聴こうとすると耳に入り、持ってきた本に集中すれば聴こえなくなる。中野の名曲喫茶との違いは、ネルドリップのコーヒーがとてもも美味しいこと、名曲喫茶の方はごく普通だった記憶しか残っていません。
黄昏ることを許容する喫茶店はあるようでなく。店内に人の話し声はなく、みんな本を読むか、手元で何かメモなのか書きつける人、小さなノートに絵を描いている人、そして静かに空を見ているか、目を閉じているか。およそどれかであって。隣の席の聞きたくはないのだけれど耳に入っていきてしまう会話もなく、ただ一人時間が楽しめるのがうれしい。

後編へ続く



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