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フードロスを活用した飲食店『Trash Kitchen』オープンまでの流れと振り返り

コンセプト - フードロスを活用した飲食店 -

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始まりはさくらとの会話からでした。さくらは私達の会社『nukumo』でインターンをしている、とても優しくて、考え抜く力を持っている素敵な大学3年生です。2019年の春からインターンをしていて、『nukumo』の一周年イベント等を成功させてくれました。そんなさくらと吉祥寺にあるタピオカ店で、飲み残しのタピオカミルクティーが入ったプラスチックカップを横目に将来の夢について話していました。

「私は将来、船に乗って旅をしたいんです。海がすごく好きなんです。だから環境汚染のニュースや海が汚れているのを見ると悲しい気持ちになります。なんとかしたいんです。」

さくらが悲しそうに話していたのを鮮明に覚えています。

ニュージーランドで育った僕にとって環境を大切にすることはとても身近で、エコを意識して生きていくことは当たり前でした。また、貧困にアプローチするボランティアなども小学生の頃から学校を通じて行っていたので、ご飯が満足に食べることができない人が世の中にたくさんいるのに食材が捨てられている現実にも問題意識がありました。

そんな中、さくらとの会話でフードロスというコンセプトの飲食店があったら何かしら世の中に残せるのではないか、という話になり、2019年の7月にこのアイデアは生まれました。

「インパクトがある名前にしよう!」と、最初は『Hi Kitchen』(廃棄キッチン)や、『Losstaurant』(ロスのレストラン)が候補に上がりましたが、もっとも強烈な『Trash Kitchen』に決定しました。

メンバー - 分散型組織 -

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8月の中旬、さくらから突然連絡がありました。

「大学で『Trash Kitchen』について発信していたら6人の学生が一緒にやりたいと言ってくれました。ミーティングをしましょう!」

そこで急遽、大分行きの飛行機を予約し、僕を含めた7人で会うことになりました。

大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学には、平和や環境について学ぶ機会が多いからなのか、社会問題に興味を持つ人達で溢れています。
集まってくれた学生たちはそれぞれの活動を通じて影響力を高めてきた6人でした。僕を入れて7人なので「7人の侍みたいだなぁ」と思っていました。SNSマーケティング、教育、飲食、エシカル、デザイン、もったいないぐらいのスキルを持ったメンバーです。そんな7人の長所を活かすために「役割分担」をすることにしました。

nukumoの特徴の一つに「分散型組織」があります。一人一人が役割を持ちながら目標に向かって行動し、責任をその人に完全にまかせる仕組みです。今回のTrash Kitchenのプロジェクトも7人それぞれ役割分担を行い担当する部署を作りました。営業、経理、人事、広報、デザイン、調理、外部とのやり取りの部署を作り、分散型組織が出来上がりました。

メンバーが初めて顔合わせをしたのは9月の中旬でした。ここから10月16日(世界食料デー)のオープンに向けて、一度の顔合わせのみでオープンができたのは分散型組織にした成果だと思います。ミーティングはいっさい無く、すべてオンラインでのやり取りのみ。意識決定権は各部署が持っているので、その部署が一番正しいと思った判断を自由にしてもらいました。メンバーが能力と責任感を持ち合わせていたということも重要で、僕は一人一人の判断を信じることで、1ヶ月という驚異のスピード感で飲食店をオープンすることができました。

場所 - 間借り -

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「場所をどこにしようかな〜」と考えていたら、Facebookの投稿が目に止まりました。

「どなたかうちのお店を使って何かしませんか?」という投稿です。

すぐにオーナーさんに電話をし、次の週にはそこを使うことが決まりました。ハワイアン風のカフェで、おしゃれな家具がそろった空間です。

飲食店を立ち上げるには500万ほどの資金が必要だと言われています。家賃、改装費、厨房機器、家具、食器、仕入れ等、簡単にはオープンさせてくれません。しかし、すべてが揃っている場所を借りてしまえば費用はグッと抑えることができます。

そのおかげでオープンするために使った資金はたったの30万円でした。
この資金はクラウドファンディングで集めたのと、nukumoが同時期に日本金融公庫から借り入れをした分でまかないました。

最近シェアスペースという言葉が流行っていますが、何か夢を持っている人たちはもっともっと活用するべきだと思います。常に稼働している「場所」は多くありません。ホテルの埋まらない部屋、夜しか営業していない飲食店のお昼の時間、早朝の会議室など、使われていない「無」の時間が存在します。

閑散期にホテルの埋まらない部屋を月額で貸し出したり、自分のお店を持ちたい人に夜営業以外の時間に貸りたり、可動していない時間を有効活用することによってwin-winの関係を築いていけるのではないでしょうか。

広報 - インスタグラム -

Trash Kitchenの広報は主にインスタグラムを活用していました(さくらが担当)。ターゲット層を考えた時、大分県別府市でフードロスのレストランに興味を持つのは学生だと確信していました。また、それ以外にも社会問題に興味を持つ人が多いことも知っていました。

私たちは広報をする際、もっとも伝えないと行けないのはコンセプトと理念です。持っているリソースの中で、それを一番伝えれる方法としてインスタグラムを活用しました。

Trash Kitchenのインスタグラムでは、料理やお店の写真を載せる前にコンセプトを知ってもらうためにイラスト(なおこが担当)とお店の説明を軸に投稿していきました。インスタグラムではイラストの投稿は比較的めずらしいので、キャッチーなイラストで手を止めて、概要欄、もしくはプロフィールでコンセプトを読んでもらう工夫をしました。新規フォロワー獲得のためにハッシュタグも活用し、オープンまでの着々と興味関心があるフォロワーを増やしていきました。もちろんストーリーズ機能も駆使し、メンバーが個人のインスタグラムで拡散することによって認知度を上げていきました。

そのおかげか、1週間で、オープン時にはフォロワーが約300人まで増えました。

Facebookを活用したり、テレビ等も出させていただきましたが、「認知」→「興味」→お店まで足を運ぶという「行動」を評価したときに、一番効果があると実感できたのはインスタグラムです。

https://www.instagram.com/trashkitchen_beppu/

オープン準備 - オープンに必要だったもの -

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お店を借りた時点で必要だったものはすべて揃っていたので、必要だったものはほとんどありませんでした。ただ、クラスがやや少なかったので購入しようとしました。しかし、コンセプト的になんでも買うのは少し違うなと思い、知り合いの飲食店やバーを経営している人達にコンタクトとりました。すると「使う予定のないグラスがあるから持っていきなよ!」と、タンブラーやワイングラスが約30個ほど集まりました。

お店の看板は木材を集め、デザイン担当が手作りで作ってくれました。装飾をメンバーで完成させたり、お店の完成度を高めていきました。

プレイベント - 感謝の気持ちを伝える -

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オープンの前にプレオープンのイベントを開催しました。フードロスを提供してくれる方、アドバイスをくれた方、サポーター、拡散力のある方などを招待し、そのタイミングでメディアの方々も招待しました。この人達がいなければ絶対にお店をオープンすることができなかったので、ちゃんと感謝を伝えよう!ということで招待制のイベントを開催しました。

集まった人数は系40人ほどで、テーブルに並べられた料理をつまみながら交流できる立ち飲みスタイルを採用。そこで新しく出会った方たちがビジネスに発展する場面もあり、すごくいい空気だったと思います。ライフネット生命の創業者、出口さんも来てくださり、会場が大いに盛り上がりました。

Trash Kitchenから皆さんに向けてのプレゼンタイムも設け、コンセプトや目標、解決したい課題等、熱い気持ちを持ってお伝えしました。そのおかげか、応援や協力をたくさん募ることができました。

テレビ大分、大分朝日放送、大分放送ニュースのメディア様にも取り上げて頂き、無事にオープンすることができました。

まとめ - シェアリングエコノミーが秘める可能性 -

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最後に、「シェアリングエコノミー」について少し触れたいと思います。なぜなら今回Trash Kitchenする上でもっとも重要だったキーワードは「シェア」だからです。シェアがなければTrash Kitchenを運営することは不可能に近かったと思いますし、逆に言えばシェアを行えばだれでも夢を実現しやすい世界になります。

シェアを簡単に説明すると、持っている物やスキルを人と分け合う、つまり「共有」するという意味です。今回のTrash Kitchenで行われたシェアは4つです。


グラス、家具、調理器具等、まったく購入することなく営業がスタートできたのは周りの人たちから物をシェアして頂いたおかげです。

スキル
集まったメンバーは異なるスキルを持った人たちでした。そのスキルをお互いにシェアすることで、強みを活かし、弱みをカバーすることが可能になりました。

場所
お店を構える場所を確保するのはとても大変なことです。使っていないお店をシェアしてもらうことによってTrash Kitchenは実現しました。

時間
メンバーの時間はもちろん、働ける人がいない日はサポーターの方々がお店を支えてくれました。


まず、シェアのおかげで爆速のスピードでお店をオープンし、コストを大幅に抑えることができました。コストを抑えれるのでお店の生存率もぐっと上がり、メニューの金額も安くすることが可能になりました。そして、色んなひとたちのシェアのおかげで無事に3ヶ月営業することができました。

飲食店だけではなく、どの分野もシェアが可能だと思います。特に、リスクがあまり取れない人にとって、一歩踏み出すハードルを大きく下げてくれるのがシェアだと思っています。自分のアイデア、変化、夢のために、もっともっとシェアが広めて行きたいと思っております。

最期に

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Trash Kitchenを応援してくださったみなさん、ありがとうございます。みなさんなしでは絶対にTrash Kitchenはここまでの実績をつくることはできませんでした。この事業を通してたくさんの希望、課題、そして感謝を知ることができたこと、そして一緒に戦ってくれた6人のメンバーと出会えたことが財産となっています。

今後、Trash Kitchenはnukumoの事業としてではなく、集まってくれた6人のメンバーに受け渡し、別会社という形で運営を続けてもらうことになりました。

nukumoはこれからも、社会問題を解決する事業を作っていきます。

今後ともよろしくお願いします。

山田あきと


あなたのサポートによって僕は普段食べている牛丼にキムチを乗せるという最高の贅沢ができます。