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いつか朗読になるかもしれない類の

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自作の詩を読み上げたものを、ぽつぽつと。
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記事一覧

【すばらしいものすべてで】

子どもを見ていると
この世の中の ありとあらゆると素晴らしいものはここへ 
たどりつくのだとおもう
そしてこれからのあらゆる素晴らしいことを子どもたちへ とおもう
わたしには もう何一つ 残らなくても
そんなふうに おもい 
置きそうになって
ふと
思いとどまる
そうではない
わたしが 子どもたちに負けないくらい
素晴らしいものをうけとって
いつまでも ああ いつまで

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【私の樹々を切りなさい】

木こりよ
私の内の山肌が
光に飢えて 細やかに震える
だから
腕のいい木こり
私の内に繁る樹々を
切っておくれ

お前は
大きな斧を振りかぶり
固い手は握りしめ
静かに脈を打つように
長く生きた私の樹々を
安らかに横たえてくれる

木こり
お前の朝は早く 
日が熟れる頃に手を止めて
必要な動きで一日をおさめる
夜は星を仰ぎ休んでくれ
山はその肩を抱くだろう
柔らかに草は

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【いとけない】

とにもかくにも 美しいんだ
うつせるものすべてに うつしこんでしまいたい
瞳に 湖に 月面に
夜の海 あの暗闇に浮かぶぽっかりとした明りにも

白百合を貼り合わせ
若木の露をあつめあつめ
経った今生まれたばかりの血を
小指にすくって

春のなだらかさを肩に
夏の生々しさを首裏に
深い深い黒の影を通して
身をきしませる寒さで
線を整えて
世界の決まりを 胸に縫い合わせよう

何とも

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風と行く】

さみしくても 重たくても 生きていく
のっしのっしと 足を力強く持ち上げて

生きても 生きても ついてくる
いらだちや 苦しさも 私をかこう

並んだ影法師の頭はひとつ
横には風が通り過ぎる
あたたかく在るために
見上げる梯子をかけていく

どの肩も たたいて
好かれよう 嫌われて憎まれて

どんな味ものみこんで 
どんな地面も踏み締めて

笑っている間に会いに行こう
別れたっきり

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【はじまるよ】

はじまるよ、と声がする
遠くて 明るい
青を透かして
どこか 端は消えてしまう

はじまるよ、と声がする
どこまでも届く
目を開いていなくとも
夢の波打ち際にも はねかえる

はじまるよ、と声がする
淡いがたつ
時間を割いて
全てがゆだねる

とじたままでは いられない
泡はいつか どんな深くからでも
動くことを忘れた扉を押し上げて
のぼる
その短い時間を泳ぎ切る

はじまるよ、

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『だきしめる』

花になったら
あなたに摘ませてあげる
ちいさなコップに
空気を泳がせて
眠っても ちいさな歌を歌ってあげる

星になれたら
あなたを育ててあげたい
忘れるほどちかくで
生から死まで泳ぎ切れるよう
足もとを支えていよう 我慢強く

静寂に溶けたら
森に棲みついて
あなたの影を待ってみようか
えぐれていくところに沈み込んで
痛い痛いを吸い込みながら

風に乗った小さなあなたも
あしあ

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『あいくるあした』

あしたがあるから
あいあしたいのじゃない
逆に
いましかないから
かなしいのでもない

あなたが
未来永劫をもっていても
わらっていられるとは
おもえない

あなたが
蝶の羽ばたきひとつで
満たされるとは
かんがえない

すべてのわたしの
すべてのみらいに
あなたはいるけれど
もうけして
あたらしいにはならない

わたしは
いつまでもうちのめされる
わたしは
それでもいつのひ

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『青い骨』

青い骨を磨く
白く 白く
鈍色の差す

白い骨は香るだろう
青い 白い
粉が舞う中

私の骨を
つよく抱きしめる
眠る夜のように

いつの日の
私の骨か
最愛に折れる

『わたしの肌を織る』

花には成れなかった
黄金の鱗の魚にも
透けた羽を震わせる虫にも
私は成らなかった

あなたは
嘘の正直なひと
真っ直ぐに笑い
平らかに口を開いていた

蓮の葉には乗れなかったし
虹の欠片は落ちてはこなかった
猫の瞳の中には街灯は灯ることはなかった
だけど あなたの言葉はほんものだった

私に触れた魔法は生きている
この耳を撫ぜた風の声を捕えることも
遥かに遠い宇宙の足音さえ

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『涙は留まる』

涙が留まる
しとしと と
涙が留まっていく

胸のへこみは丸く
角はいつのまに爪が剥いで
もう何も否とは言えない

止まない雨は無いと言ったひとを
探す気はないのだけれど
それが死ぬまで続くのならば
それは雨が止んだということなのか
悲しみが息を引きとっただけなのか

涙が留まる
しとしと と
底は膨らみ 深さをどこまで掘っていけるのか

胸の凹みは歪に化ける
内で回る涙は知らな

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