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今月の1冊~2020.09

夏の疲れと一緒にやってきた仕事のピークとともに過ごした9月。
それでも読みたい本はあるわけで。
難しい本を読む体力はなかったので、
ライトでステキな本たちに囲まれてみました。


読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!

今月は
翼をください  原田マハ著  

アートを舞台にして書かれるものが多いなか、これは飛行機の本。飛行機で女性パイロットが世界一周に果敢に挑戦するステキな本です。私自身、1月に飛行機に乗って以来、飛行機に乗れていないんです。そして旅もできていない。当たり前ですがボーダーを超えることもしていない。そんな私としては信じられないような状況で出会ったのがこの本。そんな旅に対する想いによって本が勝手に向こうから訪れてくれるから、これはほんとに不思議な出会いです。

時は今よりも少し前で、アインシュタイン博士が活躍しているような頃の話です。戦前で、飛行機そのものの飛行への進化が目まぐるしく進んでいる時代が舞台。今では飛行機で世界を一周できるのが当たり前というのが、まだ当たり前でない時に、世界一周を目指して主人公は空を飛び続けます。国境は人間が勝手に引いたもので、世界はボーダレスであるということを彼女は主張します。でも、時はいまにも戦争が始まってもおかしくないというような時期。ボーダーは人間の中に確実に存在しているのです。あの国は、、から始まって、やがてはあの人は、、になりかけているようなそんな時代に、彼女は、世界はひとつであることを証明するために飛び続けます。素晴らしい仲間に助けられながら、でもそれを邪魔してくる組織や人々をかわしながら、世界はひとつであることを胸に人生をかけて飛んでいきました。

もう旅がしたくて、したくてたまらないこの時期に、この本に出会ったのですが(しかもkindleの読み放題でたまたまタダだったから読んだのがきっかけ・・・)ボーダーについてまさか考えるきっかけが訪れるとは思いもしませんでした。
一番わかりやすいボーダーはまさしく国境ですが、もう少し意味を広げると様々なところにボーダーは存在しているような気がしています。このボーダー、一体なんなのでしょうか。本の主人公と同じように、空を飛んで地上を眺めていると、国境というものは目には見えない。ただ、鉄道やバスなんかで移動する際には道の途中で突如現れるゲートという存在があったりします。地球に自然には存在しないボーダーは人が作っていることは間違いなさそうです。

人が作っているボーダー。これってもちろん縄張りを主張して区別するために、そして自分たちの土地を守るためにはじまっている気がしていますが、最近は縄張りも物理的なものではなく心理的な縄張りを主張するものになってきているのなと感じています。そしてこのボーダー、近年ますます強くなっている部分があるような気がしてならないです。個人でいろいろなものが完結してしまうがゆえに、誰かとなんとかする必要が減っている。その結果、自分の縄張りは自分だけの超快適空間として守る傾向が強くなっているのではないでしょうか。

海外との行き来は年々ハードルが下がっていて、移動時間も短くなっているのもそうなのですが、スマホがあればどこに行っても困ることが劇的に少なくなっている一方で、一緒に時をすごしてしまえばトモダチ!みたいな感じは減っているなと旅をしていても実感しています。
以前は旅についてまわった不便や小さなトラブルを通して、言語や文化を越えたコミュニケーションがたびたび登場していたのですが、WEBだったりスマホだったりで、自分で解決できてしまうゆえ、減っているのが理由のひとつなのかなと思っています。このぶっ飛んだコミュニケーション、実はボーダーを超えるために必要だったのかと改めて思いました。

行き来が簡単になることでボーダーがなくなるではなく、コミュニケーションが密になることこそがボーダーがなくなるというこの気づき、今だから気づけました。オンラインで時間も場所も気にしなくなってまさしく物理的には一気にボーダレスになれど、気持ちの面では今世界中の人々が、自分の心にちいさな囲いを作っているような気がします。それは不安だったり、自由に動けなかったり、いろいろな理由はあると思うのですが、なんというかオープンにしてしまうことで自分が守り切れない怖さがこの時代には登場してしまったと改めて思います。物理的にも情報というものにもアクセスが簡単になったから、簡単には入れてしまうんですよね。その人のなかに。だからこそ自分だけの空間をつくろうと勝手に身体が動く、そんな感じなのかな、と。

現代版のボーダーはどうやったら超えられるのか?
そんな問いをわたしにのこして、この小説は物語を閉じるのでした。
そろそろ旅に出たいです。そしてボーダーを超えるヒントを探さないと。。。

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