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親として何が出来るのだろうか・・・?

 退院をし、少し落ち着いてからパソコンを買った。
2005年ではスマホもないし、一家に1台パソコンがある時代ではなかったのでちょっと勇気がいった。当然知識もない。
 なぜパソコンを買ったかというと、ホームページを作ろうと思ったからだ。パソコンの操作もおぼつかないのに、ホームページの知識なんてあるわけない。思いつきと勢いだけだった。少しでも手助けが欲しくてホームページ作成ソフトが入ってるパソコンを選ぶことにした。

 真翔が「アラジール症候群」という病気にかかり、色々と情報を集めようとした。ネットで調べてみたけどヒット数が少なく、ヒットしても外国のサイトで意味がわからない。入院中、医師だけが通うような病院内の書店。いっぱい並ぶ医学書の中に1冊だけalagillesyndrome(アラジール症候群)の記載があった。しかし、たった1行だけ。内容は専門用語で全くわからない・・・。
 情報を集めようとしても情報がない。我が子がこの先どうなっていくのか?がわからない。

 同じような経験をされている人が他にもいるかもしれない。そういった人のために、少しでも何かの役に立てればと思いホームページを作成した。
 使命感とかではなく、本当に思いつきでホームページを立ち上げようと思った。同じ様な経験をされている方、またふとホームページを読んだ方に、こういった病気のことや親の気持ちをほんの少しでも、ほんの一瞬でも、考えてもらえればいいと思っていた。
 そして、真翔や子供達が大きくなってこのホームページを読み、色々な気持ちや考えを知り、自分達が感じた色々なことを多くの方に伝えれる手助けができればと思った。

 今ではnoteやSNSがあり気軽に想いを発信できるが昔はそうではなかった。当時はチラシを作り、役所にチラシを置いてもらえる様にお願いをした。今思えば、10万人に1人の難病と言われる患者と出会う為の手段としてはかなり非効率だ。でも、そういう手段しかなかった。そして、そんな非効率な事でも親として行動したかった。

 試行錯誤して何とかホームページをアップすることが出来た。アップしたとはいえ、このホームページを誰が見てくれるのだろうか?
 でも、誰が見てくれるのかなんて関係ない。今の「想い」を綴り、真翔へ、我が子達へ「想い」を残していきたい。

 そんな自己満足なホームページだけれど、数日経って同病の患者家族から連絡がきた!

 今のようにSNSがない時代。連絡手段は電話やメール、手紙。
 日々の様子や検査結果を報告しあったり、互いの不安を話し合ったり。何気ない話のやり取りから力をもらうことが出来た。不安で押しつぶされそうな心。慰め合うのではなくて、情報共有出来ることで知識を深め、前を向ける力をもらった。時には交流会を開催し、実際に会って話しもした。実際に会うことで今まで気付かなかった発見もあった。みんな声が高かったり、天然パーマの率が高かったり。患者同士で話をすることで、「アラジール症候群」の情報を集めることができた。
医学書に1行しか載っていなかった時の不安が、少しづつ消えていく。

「目の前にいる笑顔の我が子の為に、何ができるのか?」
医者でもないし、専門家でもない。ただ親として目の前の我が子の様子を綴り、情報を集め発信していくことが我が子の為になり、また同じアラジール症候群の患者や家族の力になるのではないか?
 発信するのは慰めてもらいたいのではなく、情報がない不安や辛さを知っているから情報を集約・発信し、「あなたは1人じゃないよ!」っと、少しでも誰かの心の支えになるかもしれない。そしてアラジール症候群の事を多くの人に「知ってもらわなければならない!」と強く感じたからだ。知られていない事、知ろうとされていない事がどれだけ辛く、治療法の確立を遅らせるか。
知ってもらい、研究してもらわなければ目の前の我が子の笑顔が消えてしまう・・・

 勢いで始めたホームページ作成だったけど、そこで抱いた色々な「想い」や「考え」、それを形にしようと2007年に妻と任意団体「日本アラジール症候群の会」患者・家族会を立ち上げることになる。

【たんぽぽ】
この「たんぽぽ」のように
はじめはひとりぼっちだったけれど
いっぱい いっ~ぱいの種(思い)をとばして 
いっぱい いっ~ぱいのお友達ができているよ
その一つ一つの種(思い)が花をさかせて
また多くの種(思い)を生んではこんでくれる
このたんぽぽのように力強く生きていかなきゃ


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