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テキストコミュニケーションに埋め込まれたバグへの処方箋ー練乳5倍がけの法則ー


こんにちは。弁護士プロコーチのありです。

テレワークが一般化し,zoomとともに一気に拡大したのがslackをはじめとするテキストコミュニケーションです。このテキストコミュニケーションの広がりが、思わぬ行き違いや人間関係上のアクシデントを生む一つのきっかけとも言われています。たくさんのクライアント企業やコーチングを通して感じるテキストコミュニケーションによるアクシデントの正体と、新しい時代のwell-beingのためのコミュニケーションについてのちょっとした処方箋を書いてみます。

テキストコミュニケーションのメリット

今までは対面で行っていたやりとりがテキストに置き換わったことで,たくさんのメリットがあります。

・言葉が可視化されるため「言った・言わない」の論争が起きない
・やりとりが物理的に残るため,事後的に見返して確認できる
・対面や電話に比して,返信に時間をかけて慎重に回答を練ることができる
・公開する人数や範囲を自由に設定できるため,情報共有に便利

テキストコミュニケーションのデメリット

一方,テキストコミュニケーションによるデメリットもあります。ちょっとした行き違いによる不満の蓄積,いざこざや,ストレスの増加,生産性の低下などが挙げられます。ここで,私たちが知っておくべき大切なことがあります。

テキストコミュニケーションは、アナログコミュニケーションにおける非言語情報が欠如するため,そもそも不安定なものであるということです。

なぜなら,本来,大量の情報をやりとりしている「非言語=ノンバーバルなコミュニケーション」が一切欠如しているからです。特に,非言語情報の最たるものである表情が見えないのは大きな障壁です。

たとえば,同じ「ありがとう!」の言葉でも,満面のニッコリ笑顔でしっかり見つめながら言われた場合と,ぶすっとした顔で目をそらしながら言われた場合とでは,全く受け取り方が違いますよね。

人の脳は,相手の表情筋の動きに敏感に反応し,わずかな変化でも,心理的にダイレクトに大きな影響を受けます。わずかな眉間のしわ,目の周りの表情のゆるみ,口角が一度上がっただけでも,脳は瞬時に反応するようにできているのです。

また,実は,声にも表情があります。明るい声,嬉しそうな声,柔らかい声,ほっとする声,元気な声,暗い声,めんどくさそうな声,投げやりな声。

声の表情は実に多彩であり,テキストそのものの意味とは別に,聴き手の脳にさまざまなメッセージを送っているのです。

顔と声の表情以外にも,姿勢や体の向き,目線の動き,手の動かし方,首の動きなどが,同時に重要なメッセージを送っています。これらはボディランゲージと呼ばれ、もはや共通言語として受け入れられているものもあります。

たとえば,首を縦に振れば「相槌」,首を横に振れば「否定」,けげんそうな顔をして首をかたむけれ「懐疑」。話の途中でぐっと身を乗り出せば「興味」,キョロキョロし出したら「無関心」,じーっと目を見つめれば「好意?!」,など,それはもうあらゆるメッセージを送受信しながら,私たちは日々のやりとりを行っているわけです。

このような,非言語的コミュニケーションのことをアナログコミュニケーションとも言います。私たちは大量のアナログコミュニケーションによって,テキストの意味内容を補完しながら情報を与えあっており,その得られた情報を道しるべにして,一歩一歩交流を深め信頼を築いています。この信頼によってチームの心理的安全性も形成されていくわけです。

アナログコミュニケーションの割合は93%

この点を数字で見てみると,驚異的な事実が分かります。

実際,人が送受信する情報におけるテキストとアナログコミュニケーションの割合は,テキストが7%,93%がアナログコミュニケーションです。同じ「ありがとう!」でも,状況によって受ける印象がまるで違う、これは、むしろ当然の話なのです。

で,本題です。
ということはslackなどのテキストコミュニケーションでは,伝えたいことの

7%しか伝わっていない!

すごくないですか。恐ろしくないですか。7%,圧巻の数字です。

よく,

テキストだと真意が伝わらない気がする
冷たそうに読めちゃう
何が言いたいかよくわからない
OK!と言われても何がOKなのかわからない
最初は便利だと思ったが,だんだん疲れてきた
なんとなく,チームの温度が低下気味
伝わってると思っていたら全然伝わってなかった
意味がよく分からないけど聞き方がわからない&何度も質問するのに抵抗が・・・とプチ悩む
「わかりました!」と返信があったが,成果物を見ると指示とまるで違っていてガックリ

このようなことが,あちこちの組織やチームで同時多発しています。これはテキストコミュニケーションに仕掛けられた本来的なバグが顕在化したものであって,いわば起こるべくして起こっている小さなたくさんのアクシデント報告なのです。

じゃあどうするーテキストコミュニケーションの時代のスキル処方箋4つとマインド処方箋1つー

というわけで,テキストコミュニケーションの時代をよりHAPPYに生きるための処方箋はこちらです。まずは,スキルの処方箋4つ。

①5分の電話が二人を救う

ベタな方法ですが,アナログコミュニケーションをプラスすること。大事なポイントなら,5分の電話でぜひ補足しましょう。テキストと同じ内容しか言うことないんだけど,と思ってもそこをワンコール!
仮にテキストと全く同じ文言を繰り返したとしても、情報量は圧倒的に増えます。なぜなら声という聴覚情報が相互の脳に大量のデータを送ってくれるからです。

そして,わずか5分の電話でも実際に語る内容はかなりの量に上ります。
ちなみに,国内の通話の8割は5分以内。ほとんどのやりとりや5分で足りるとも言えます。さらに,人は1分間に300文字程度の発話を行いますから,3分で900文字,5分間で1500文字

1500文字のテキストメッセージとなるとかなり長く,書くのも大変ですが,電話なら5分で伝えられます。その上,声の表情=「聴覚データ」という貴重なノンバーバルメッセージ付き。テキスト情報7%+聴覚情報38%=45%の情報を伝えることができます。5分の電話でかなりの情報をカバーし,バグの顕在化を防止できるというわけです。

②(笑)顔を見せて話す

 顔の映るビデオ通話を3分プラスしてみましょう。zoomはもちろん,メッセンジャーやラインのビデオ通話でもOK。チームメンバー同士なら,かしこまってデスクに座る必要もありません。軽く電話するノリでOK,ただ,ちょっと表情が見れるだけでも,大量の視覚情報と聴覚情報が同時にやりとりされ,コミュニケーションをグッと安定させることができます。
 そして,この3分間,ぜひとも笑顔をキープしましょう。電話でなくビデオ通話にする目的は,テキストメッセージに笑顔という強力にポジティブな情報をプラスすることです。人は常にどんなときでも相手の笑顔を探している生き物です。笑顔には,承認,感謝,受容,共感,支援といった心理的安全の構成要素が詰まっています。この笑顔が持つ圧倒的なパワーを3分で注入し合う時間は,テキストコミュニケーション時代におけるアクシデントを大幅に減らし,お互いの信頼を倍増させるチカラを持っているのです。

(なお,「表情筋に責任を持つ」は大人のもはやマナーです!大切な3分をしかめっ面で過ごすとマイナス効果、キープスマイル!)

 
③進捗確認の工程を増やす

 そして,意外と抜けがちなのが,次の報告や確認のタイミングのすり合わせです。テレワークの世界では,お互いの仕事の進捗がブラックボックス化しやすく,それぞれが自分の判断基準で動くことも増えます。今までは,自然と広く共有できていたものが見えなくなり、阿吽の呼吸やら、空気で察する、と言った職人芸が通用しなくなります。
みなさんも,テキストコミュニケーション割合の増加により,以前より疲れを感じる割合は増えていませんか?実際,以前の環境では防止できていたバグや,思わぬ遅延,方向性のズレなど、それによるストレスが,テキストコミュニケーションの世界では,たくさん発生してくるものなのです。
そこで、テレワークやテキスト中心のコミュニケーション時代には,もはや,こうしたズレは当然発生するものと織り込むべし
その上で、最善の対応をとりましょう。そこで,提案は「進捗確認の工程を増やす」です。

今まで,完成までに3回の確認があったならば,その3倍,少なくとも2倍に増やしましょう。なにしろ7%しか伝わらない世界で勝負しているわけですから,3倍だって心もとない話です。せめて2倍の確認を入れることで,ズレを防止でき,バグの顕在化の頻度を下げることができます。

④テキストそのものに工夫する

テキストメッセージと対面のメッセージにこれほど違うがあることを意識せずに,以前と変わらないノリでslackなどを使っている方も多いのではないでしょうか。もちろん,今まで対面コミュニケーションが十分にあった状態で,補完的にスラックやチャットワークなどのテキスト媒体が使われていた時には,さほど違和感やコミュニケーションアクシデントは起きなかったかもしれません。

しかし,テレワークが一気に進み,テキストコミュニケーションが優勢になってくると,今までの対面メインのコミュニケーション時代のスタイルを維持したままでは、バグの顕在化率が圧倒的に高くなります。テキストコミュニケーションの在り方そのものを,新しく変えていく必要があります。

具体的には,説明は詳しく,抽象論と具体論を必ず両方入れることが重要です。人の抽象化のレベルは思いのほか違います。抽象論を語りながら,自分の中では具体的な絵が見えている人もいますが,相手にはまず伝わりません。細かい具体論をかたりながら,その前提の大きなビジョンが明確に見えている人もいます。しかし,相手に両方を言葉で明確に伝えられなければ、そのビジョンや未来図は、決して共有されません。

むしろ,本来,人は,伝えた(と思った)ことの半分も伝えられていないと常に覚悟して臨むべきであり,それがさらに,テキストコミュニケーションの場合は7%まで制限される,というイメージです。

「例えば・・・と具体例を複数列挙し,その先には●●の未来図があって,●カ月で・・・なり,半年で・・・で,9カ月で・・・3年で・・・」「前回の・・・プロジェクトの時の第二セッションンでやった時の・・・のように(と共通の体験が浮かぶようにしてできるだけ前提をそろえる」。抽象と具体を両方バランスよく入れること。
人はどちらかに偏りがちなので,意識して抽象、具体の両方にタッチしていくように書き手の訓練も必要です。

質問・確認の補足をアシストする姿勢も重要です。「聞きたいことはない?」「この際,何でも聞いて」「迷うところがあったらいつもより10倍早めに言ってくれたら嬉しい」

「今の点に関して,むりやりでいいので,なにか質問3つすること!」

というのも、確認の強化方法としてお勧めです。質問は,もっとも頭を使う仕事です
ので,質問を考える,聞かれた側も考える,という工程を3つはさむことで,かなり思考を近づけることができます。

愛と感謝と練乳5倍がけの法則

マインド処方箋1つ「愛と感謝と練乳5倍がけ」

スキルも大事ですが,もちろん一番重要なのは,マインドです。それは,愛と感謝をモリモリに伝えること。心理的安全性という言葉はすっかり浸透しましたが,ここで大事なのはお互いの信頼がしっかりと共有されることです。

そして,心理的安全は一度築いても,すぐに枯渇します。いったんうまくいっていた関係が永遠に続くとは限らない,むしろ,人の脳は常にネガティブに傾きがちであり,不安と他者不信に陥るのは当然の方向性なのです。みんさんも,長い付き合いだったのに,一瞬で信頼を失った経験(見聞きしたものを含む)があるのではないでしょうか。心理的安全は,絶え間ない適切なコミュニケーションで,日々新しく構築していくべきものです。

そこでオススメなのが

愛と感謝の練乳五倍がけの法則です。

ここで言う「愛」とは「存在承認」のことです。ただ,一緒にいてくれてありがとう,このチームで一緒にやってくれてありがとう。「結果」や「行動」ではなく,存在そのものを承認することが愛の本質です。

人は,存在自体を承認されないと不安に陥り,居場所がないと感じてしまいます。その不安を取り払うには,存在自体を認める愛を伝えることです。テキストコミュニケーションでは,意識して「みんなと仕事ができて嬉しいよ」「まじでいてくれてよかった!」などと,毎回くどいくらいに伝え続けるのが大事。くどいくらいでも,もともと普段の7%ですから,ためらうことはありません。

そして,圧倒的な「感謝」を伝えること。ここでいう感謝とは「小さな行動に対するすべての感謝」です。「すぐ返信くれてありがとう。」「話してくれてありがとう。」「先にやってくれたんだ,ありがとう」「ここの言い回しがすごくよかった,ありがとう」「クライアントが喜んでたよ,ありがとう」「この対応大変だったよね,いつもありがとう。」相手のあらゆる行動に対して,感謝をちりばめる。
そんなのめんどくさいと思ったあなた,大丈夫です!「さっきはまじでありがとう!」この一文を書くのには,3秒もあれば十分です。3秒で大きなバグが防げる,心理的安全が築ける,お互いにHAPPYに一日を過ごせるのです。3秒を惜しんだ代償は小さくありません。めんどくさがるほうが,めんどくさい結果をもたらすのです。
感謝の3秒を信じてやってテキストコミュニケーションのための心得は練乳5倍がけ!
ここで、
練乳はちょっと甘すぎて苦手という方、好きだけど5倍はちょっと、という方
へ。
テキストで伝わるのは7%、どうしたって、テキストというのは相手にとってはカキーンと冷たく、超絶酸ーっぱくて歯が痛い冷凍イチゴを送ってしまうものなのです。
テキストコミュニケーションでは練乳5倍がけを意識してみると吉、いえ、大吉です。

というわけで,テキストコミュニケーションにこそ愛と感謝の練乳5倍がけの法則というおはなしでした。この新しい時代,誰一人取り残すことなく,今日もひとりひとりがWELL-BEINGな時間を過ごすことができますように🍀

〇おまけ〇

なお,コーチ業ともに私の本職でもある弁護士業についてここで一言。弁護士も,時には関係者(依頼者や相手方)と,コミュニケーショントラブルに陥るときがあります。というか,常にその危険と隣り合わせです。

 その場面,つまり弁護士が難局を迎えたときの鉄則があります。それは

本人と会って直に話す

です。なんとシンプルな(古典的な)!それだけかい!とお感じかもしれません。そのとおり,シンプル極まりない。さらに言うと,顔を合わせて,難しいことを言う必要もありません。

困った時こそ,ひざを突き合わせて,

「困りましたね。」

と言えばいいのです。ああ,シンプルであることの大事さよ。

これさえ出来れば,危ない局面も何とか乗り切れる。これは,弁護士の収集時代にお世話になった大・大先輩弁護士からの言い伝えでもあり,私自身が13年の弁護士生活を経てつくづく実感することでもあります。テキストのやりとりが成立するのは,関係がどーんと安定している局面だけ,と心得るべしです。

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