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記事一覧

詩『魚の裁き方』

まな板の上
濁った瞳
動かない鰓
濡れタオル
そつ置かれた包丁
微笑み
「もう愛していない」
一瞬澄み渡りいる瞳
漂流物としての涙



やはり涙

まだ愛している



やはり鰭
えぎゅられた白子
絶望と後悔
鰓と肺
触れる指
逆手に持つ包丁
アナタは今から
最愛の人を裁く
この詩の終わりと共に

詩『やまなし製薬から新発売!』

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[クラムボンとは?]
 やまなし製薬が独自の修辞方(特許出願中)により、二疋の蟹の兄弟から抽出した幻燈刺激酵素です。
 歯ブ

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詩集『詩集』

『鰓と肺』
キミのセカイでは生きてゆけないボク
ボクのセカイでは生きてゆけないキミ
鰓と肺
キミのセカイに潜る
水浸しの肺で告げる
「愛してる」
言葉にならなくてもいい
ぷかぷか浮かびながら見つめる
キミの美しい背鰭
輪っかのない土星のような瞳で

『魚の裁き方』
まな板の上
濁った瞳
動かない鰓
濡れタオル
そつ置かれた包丁
微笑み
「もう愛していない」
一瞬澄み渡りいる瞳
流せない涙


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散文詩『蒼天貫唾』

 控えに言ってクソ野郎。気に食わないか?なら言い換えてやろう。うんこ野郎だ。いや、やっぱりクソ虫と言い換えよう。
 いずれにせよお前は、庭の石の下で太陽を呪いながら息を潜めている眼が小さくて脚ばかりたくさんある虫だ。
 無数の脚を持ちながら、どこにも行かず、ただただ太陽の熱を忌み、陽が沈むのを待ってゴミに顔を突っ込んで旨そうに貪り食う笑顔――虫唾が走るの語源はお前か?

 お前に生きる資格があるか

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散文詩『さらばジョンへ伝へかし』

 言葉の刃が触れる瞬間女の子は瞼で真剣白刃取りを試みた。
 けど死んじゃったよ。まつ毛が鋼じゃなかったから。

 僕ら電子言語をマスターしてる。で、それを石みたいに掴んで殴り合っている。まんまネアンデルタール。プロメテウスの飛び降り案件。

 和して目に映る色とりどりの花、愛しい人の笑顔、人生を変えた絶景、待ち受けに張り付いた画像がまだ残像のうちに、タップ、ピンチ、スライド、呪いの言葉で画面を満た

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詩『rule』

[ルールその一]
ずっと好きでいよう
お互いのことを
どちらかが死ぬまで

3秒以内に拾えば食べてOKみたいなやつさ

守り続けよう
二人で生きてゆくための
25億秒ルール

"ハナモゲラ和歌"っぽいの

にぎみしの
あすびゆらきて
みもほろろ
ほしふるわして
にぎうかぎろひ

あぱるとよ
ひとりはわして
めたんがす
おともなかりて
わらうぽすたあ

てっちりと
ちりとてちんと
とてちんこ
ちりぬとてとて
よはかぜまかせ

いてばえて
にじゅうぼうせん
かぜにふる
ちはやくれしぞ
なからむゆびで

しまむらに
さくらくれぱす
くろまによん
たべるらーゆと
のむよーぐると

"五言絶句"っぽいの

朝起君不在
目頭熱涙冷
君写真微笑
僕願聞君声

犬遊歩棒当
猿滑落木滑
猫小判譲渡
僕永遠君好

地震事故多
政治家腐敗
日々生活苦
豚汁湯気熱

蟹座星数八
天秤座八星
獅子座十六
君僕座二星

詩『気性永逝暇割り』

麻から蛭にかけて
飴は病み
ソラは腫れるでしょう
慣例前戦により
蜘蛛が広がり
所により
神鳴りを伴う俄かアーメンに見舞われますので
害出される肩は瘡(かさ)をお餅下さい

二本貝型の鬼熱肺血(きあつはいち)が診られ
小鮫や豹が振る恐れがあり
TUBE痴呆には京風Hello中尉砲が出ています
並の高さは斜め捕る
妻die夫即(さいだいふうそく)中一娶る

異常
気性永逝"暇割り"に依る
転機予報

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詩『もしも悲しみを取り外せるなら』

もしも悲しみを取り外せるなら
僕はそれをベランダの手すりに置く

野良猫が咥えるか
カラスが蹴り落とすか
それともいつまでも風に吹かれるか

悲しみを取り外した僕は
アパートを出
太陽の色に戸惑う

呪うかもしれない
笑うかもしれない
君の名を叫ぶかもしれない
涙を流すかもしれない

もしも取り外せるとしても僕は
悲しみを抱き続けるだろう
君を忘れないために

君の
あの美しい笑顔を
いつまでも忘

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詩『原罪豆腐』

澄水に浸かり
空の下なれば青を映し
草原にあらば緑に燃え
暗闇に落つれば漆黒に馴染む

スーパーの棚に並びいて
望むべく加護
そは籠のなかに在りしや

四角くあれ
白くあれ
脆くあれ
安くあれ
低カロリーであれ
愛おしくあれ

汝が楽園を追われしは
そが深き罪の為なり
我が夕餉の贖罪(食材)なればこそぞ

思い知れ
万物が引力を有するが如くに
遍く物は罪を宿せり

豆腐よ
答え給え
そを原罪といえ

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詩『今日こそ首を折ってやる!』

スマホのアラーム指で弾く
唇漏する糸状の呼気
寝息から吐息
吐息からため息
淡いグラデーション
天井に貼り付け
「どうして今日も好きなんだろう」
変わらない気持ち
分からない私
笑えない案山子
燃え盛る小石
この胸に埋まってる
燃え盛る恋しい
くるしい
やるせない
ゆるせない
絶対に
振り向かせてやる
首をへし折ってでも
振り向かせてやる
起床!

詩『絶望製作所(株)』

詩『絶望製作所(株)』

灰色の空の下に工場がある
灰色の塀 灰色の煙突
輪郭を空に押し付け
境界線を曖昧にしている
マリー・ローランサンが描いた背景のように

「あの工場は何を作っているの?」
子供が問う 貴方が答える
「昔はね、あそこで希望が作られていた」

カラスが塀に止まる
漂ってきた煙を吸って
ぼとりと地面に
 
「今は何も作っていない」
貴方は仮面を被っている
灰色の仮面
工場の色によく似ている
「でも煙が出て

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詩『球体地獄』

詩『球体地獄』

 瞼を喪失した眼球は、剥き出しのアイを粘度の高い涙で覆い隠そうと必死でした。
 
 そんなひ弱な眼球を一本の指が執拗に責め立てます。眼球の球体たる所以である曲部をなぜてはなぜて、でっぷりとした指の腹全体重でのしかかり、激しくそして時に激しく、永続器械運動をメタファーしました。(ここでモアイと金剛力士像の戦闘シーンを挿入)。
 そして時に指は爪を立て、眼球を苛みます。その瞬間には眼球は瞼よりも脚が欲

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