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新プロジェクトでペルソナ失敗。使いこなせなかった理由は。

あれはT社にいた頃。新事業プロジェクトが幹部肝入りでスタートした。企画部門・戦略部門・技術開発部門、、、組織横断でさまざまな職能が参加。デザインからは私が参加した。ほぼ全員が新事業をやったことのない中、メンバー全員で知恵を出しながら、少しずつ進めていったときの話。

最初の失敗

ペルソナをやることになったのは、どういうきっかけだったろうか。多くのことを試行錯誤しながら進めていたので、記憶が曖昧になっている。

ペルソナ(persona)とは、ユーザー中心設計やマーケティングにおいて、サイト、ブランド、製品を使用する典型的なユーザーを表すために作成された仮想的な人物像のことである

wikipediaより

たぶん、スペックや構造ばかり議論していて、使う人のことを考えてなかったからだと思う。典型的なプロダクトアウトだった。豪を煮やした優しい幹部から、ペルソナでもしたらどうか、というアドバイスがあったからかもしれない。

ここに至る前にも、デザインからは何度もお客さまの働き方や生活スタイルを元に発想する、という顧客志向で提案をしていた。ペルソナではないが、顧客視点という面ではまったく同じだ。

きっかけはどうあれ、ペルソナをやった。

ペルソナ、という考え方に設計や企画、開発メンバーは馴染みがなかったので、デザイン側で推進した。進め方を考え、目標を設定し、段取りしてリーダークラスとすり合わせ、他のプロジェクトメンバーと共有しながら大まかな人物像を作っていった。

人物像は、ターゲット顧客にインタビューしたデータ、広くリサーチした結果、もともとデザイン提案に含まれていた情報を、上手く混ぜ合わせた。

人物像ができあがったら、困っていることや課題を深掘りするプロセスに入る。のだけど、、、、プロジェクトメンバーの発言が少ない。なんだか盛り下がっていった。ものすごく盛り下がって、そのままファイルサーバーの肥やしになった。何も継続しなかった。そして次の取り組みに移行した。

2度目の失敗

その数ヶ月後。
もう一度幹部からアドバイスがあった。そしてペルソナをやることになった。

私「え、前にやったよね」
リーダー「あの時は気が熟してなかった」
サブリーダー「我々はペルソナの意義を理解していなかった」
私「」

今回はリーダーを中心に全員でやった。ものすごく詳細なプロファイルを作った。想定するお客さまをの24時間、何から何まで詳細に生活スタイルを洗い出した。ものすごい情報量になった。

ちなみに前回デザイン主導の取り組みは、サーバに入れたまま活用されなかった。

細かい生活スタイル等の情報がたくさん集まったので、そろそろ課題分析や調査の次ステップに進むタイミングに差し掛かっていったが、そうはならず、あくまで情報を加えていった。調べれば調べるほど湧いて出てくる情報の沼にはまっていくのを、私は止められなかった。

ペルソナの意義はペルソナにはない

分かったことがひとつある。
ペルソナという技法が、そもそも何を達成するツールなのかが分かりにくいのだ。

何度も失敗し、人の取り組みから学び、ペルソナとは「発想するための、ひとつのきっかけ」にすぎないことが分かった。

よくペルソナのやり方、等の記事で散見する「超詳しい人物像」なんてまったく必要ない。

ある人物を仕立て上げ、3つからなる切り口で分析し、課題を見つける。私たちがその課題を解決できるなら商品にする。解決できないなら、同じペルソナから違う課題を見つける。課題が見つからない場合は違うペルソナを作る。そうやって発想していく技法だ。

ペルソナは技法として未完成

文字通り、ものすごく疲れる割には得るものが少ない。

1:そもそも、そんなに簡単に課題は見つからない
 
 ペルソナだけではなくどんな手法を使っても、そう簡単に課題は見つからない。課題だけではなく発想に繋がるきっかけでも何でも、欲しいものは簡単には見つからない。

2:不要な情報を加えて過ぎて疲弊してしまう

 見つからないから、見つかるまでずっとペルソナをやってしまう。長時間やればやるほど、細かく些細な情報が溜まり、情報の鮮度もなくなる。そのうちに大きな視点がなくなり、大局が見えなくなってしまう。

3:一度ペルソナを作ると、そこに固執してしまう

 長時間に渡って情報を集めたコストを回収しようと、ますますのめり込む。他のペルソナを設定したり、他の手法を試すなんて言語道断。

4:他人事になってしまう
 
 ペルソナに肉付けすればするほど、そのペルソナはどこにもいない誰かになる。どこの誰か分からない人の、もしかしたら困ってることを解決するために、素晴らしいアイディアはでるのだろうか?本当に困っているのだろうか?

ペルソナをやるなら、STP分析の方がメソッドとして完成していて使いやすい。わざわざペルソナなんてしない方がいい。

ペルソナではないやり方で突破するべきだった

私たちはペルソナの使い方を知らず、人物像を肉付けすることにこだわった。必要のない余計な情報にまで手を伸ばしてしまった。そして処理しきれなくなった。

幹部がふと言った「ペルソナ」の遂行という目前のタスクを重要視し、本来見るべき目標を見失った時点で、プロジェクト自体がすでに失敗していてのかもしれない。

そういう意味では、ペルソナという技法に固執せず、「顧客」という視点を定め、技法は自由に選択するのが正しいやり方だった。

今回、ペルソナ自体があまり良くない、という内容に偏ってるが、これはペルソナを正しく理解してないことから始まっている。そのため、十分慣れた人が使えば、新事業もスムーズにいくのかもしれない。

技法の使い方は、難しい。
目的を忘れると良くない結果になり、使い方を知っていても、タイミングが悪いと無意味なのだ。

誰も書かないネタを探し、デザインを絡めたり完全無視しながら、生活や仕事・経営に役立つお話を書いていきます。