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秋の手をとる

今年は暑さが長く続くと聞いていた。
だから秋が遠い、もしくは来ないのではと、遠く秋へただ手を伸ばしていた。

しかし9月が近づき始めると、秋の足音がするではないか。空に浮かぶ雲は秋へと流れ、虫の声は移ろい秋を呼んでいる。まだまだ猛暑日と言われるなか、どことなく以前より過ごしやすく感じ、秋の気配へ目を移す。

そして思うのだ。
ごめんね。
ありがとう。

それはまるで、親が子を思う様に似ている。

観測史上例を見ない異常気象に、戸惑いを感じながらもその背で、人間がつくりあげた結果なのではと、責任を感じる。
しかし、この先どうなるのかと案じる私をよそに、自然は力強く巡り、私を人間たらしめてくれるのだ。

親が子をつくるのか、
子が親をつくるのか。

そんなことを残暑厳しい夕暮れに思う。
とは言え、一番好きな秋は今、夏の陽炎に滲み消えていきそうな程、儚く感じる。

この先も秋が力強く巡っていけるよう、こどもたちの豊かな未来を願う親のように、今できることを考える。