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ケース29.ウィンザー効果〜ワンチームで育成する人材開発〜

▶︎人の成長を最速化するためにできる工夫は?

上司ガチャ、部下ガチャ、と人の組み合わせの相性に左右されたり、どんなに信頼関係があろうとも特定の組み合わせの中でマンネリ化が生じたり、人間関係によって成長速度が鈍感していると感じたことはないでしょうか?

経営の視点:
・高いパフォーマンスを高められる早期に成長してほしい
・人と人の相性を測ることは難しい

現場の視点:
・やりがいや評価でリターンが得られるように早期に成長したい
・有益な気付きがないと成長できない

人的資産の希少性が高まるウォーフォータレントの時代では、組織開発や人材開発は強力な競争力になります。
しかし、新入社員の戦力化やリーダーシップ、マネジメント育成において、個性に合わせたアプローチができずに、苦戦してしまうケースが多くあります。
そこで、今回はウィンザー効果という概念に用いて人材開発を工夫を考察します。

▶︎ウィンザー効果

直接的な利害関係のない第三者によって伝達される情報は高い信憑性を得られるとの心理効果。

利害関係のある当事者同士のコミュニケーションでは「〇〇が狙いなのではないか‥?」と憶測が過ぎることがありますが、嘘をつくメリットがない第三者の意見は客観的で中立的な情報として信用されるため、マーケティングの分野で注目されています。

たとえば、A社に所属するBさんが自社のサービスを「他社よりもコスパの良いサービスです!」と伝えるとポジショントークに聞こえてしまいがちなことに対して、A社に所属していないCさんからの口コミで「A社のサービスが良かった!」と伝わる方が魅力的な情報に感じやすくなります。

ウィンザー効果を活用することで、特定の上司-部下関係以外の直属ではないマネージャーや先輩といった斜めの関係や同僚といった横の関係のアプローチによる人材開発を考えることができます。具体的には、どのようなアプローチが有効でしょうか?

▶︎信頼関係と具体事例の伴うアドバイス

日常的に同じ人から似たようなフィードバックを受け続けると、最初は刺激的であっても、徐々に慣れてしまい、吸収力が低下してしまうことがあります。
そのため、人材開発には直属の上司だけでなく、組織で連携して取り組むことが重要です。業務上の利害関係のない斜めの関係者からの新鮮な視点やアドバイスを受けることにより、フィードバックがウィンザー効果によって信憑性が増します。

ただし、人は感情的な存在であるため、何を伝えるかよりも、誰が伝えるかが前提条件です。
たとえ内容が妥当であっても、信頼関係がなければ、行動の変容に繋がる納得感は得られません。

信頼関係を築くためには、直属の上司と斜めの関係者が情報連携して、以下のSBI情報を用いて、相手が自分を見てくれていると感じられるアドバイスを行うことが効果的です。

①Situation (状況)
どのような状況で、どんなときに問題であったか
②Behavior(行動)
どんな行動が問題であったか
③Impact(効果)
問題行動がどんな影響をもたらしたのか


たとえば、「Aさんは期待されているから、もっと応援している」と伝えられるよりも、「Aさんは主体的にKPIを牽引して突き抜けた売上を出しているからこそ、次のステップに進むには、人を育成できるように成果創出の言語化ができると良い」と伝えられる方が嬉しいものではないでしょうか。
人は期待をかけられることでピグマリオン効果が生じて成長が加速するものです。
ピグマリオン効果に関する記事

普段から期待をかけられていても人は慣れてしまうものですが、第三者からの「マネージャーのBさんがAさんに期待していたよ」とのフォローの一言があるだけで、ウィンザー効果で信憑性が増します。

▶︎職場内のコミュニケーションの輪をデザインする

ウィンザー効果を引き出すためには、誰が誰と日常的にコミュニケーションを取るかをデザインすることが重要です。
斜めの関係からだけではなく、横の関係からのポジティブなメッセージも有益に機能します。
有事にだけのコミュニケーションでは恣意性があると感じられ、「〇〇が狙いなのではないか‥?」と憶測が過ぎることがあります。

コミュニケーションの輪をデザインするには、一時的な状況で検討するのでなく、定期的に個人の特性、交友関係、状態を可視化することが効果的です。
たとえば、成長性が著しくハイパフォーマー予備軍になっているメンバーが周囲で自身のWILLを話せる交友関係がなかったり、伸び悩んでいるメンバーのボトルネックが善意で献身的な活動をしていることによる業務負荷にあったり、個人の育成プランに応じて、コミュニケーションの輪を築く働きかけを考えられるかで、個々の日常が変わります。

コミュニケーションをデザインする際の重要なポイントは、人と人の相性を考慮できるかどうかです。

サイバーエージェント曽山さんの著書『強みを活かす』では、エニアグラムが組織づくりに活用されている事例がありますが、エニアグラム やMBTI、ストレングスファインダー、モチベーショングラフなど個性を理解するためのツール活用は人と人の相性の検討材料となります。

人の組み合わせ次第でピア効果が発揮され、自然と成長が促されることが、ピープルアナリティクスの分野で明らかになっています。
そのため、チーム編成においては、チームメンバーの個性のバランスや、チーム間のコミュニケーションのきっかけを想像することで、ウィンザー効果を引き出しやすくなるでしょう。
さらに、ウィンザー効果を活用するためには、斜めや横のコミュニケーションが起きやすいよう多様性を高めて相性のパターンを増やすことも重要です。
ピア効果に関する記事

▶︎人材開発力が競争力となる

得てして育成は属人化しやすく、上司ガチャ、部下ガチャと揶揄されますが、個性を理解して、個性を伸ばすタレントマネジメントを通じて、人材開発力を組織全体で高めることが、変化の激しい市場での競争力に繋がります。
ウィンザー効果は、そのためのテクニックになります。

また、ウィンザー効果は採用マーケティングにおいても援用できます。
採用企業から直接魅力を説かれるだけではなく、口コミやエージェントといった第三者から良い評判を聞くことでより魅力的に感じられます。

ウィンザー効果を踏まえると、個人戦で工夫するのではなく人を巻き込む力が、人を動かすために不可欠なのではないでしょうか。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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