見出し画像

“Wの聖地”ふり返り 〜2021年 鳥取旅①

今年から始まった「地域ものがたるアンバサダー」は、富山・福井・鳥取の3県が対象地域です。今年の10月にこの活動絡みで富山へ行きましたが、そういえばほぼ1年前にたまたま鳥取にも行ってたんです。
アンバサダー活動のレガシーとして、ローカル列車を活用したツアーを考えるべく、1年前に乗った観光列車の記憶をたどってみます。

❚  第3セクター鉄道の中ではかなり先進的

 1年前に鳥取を訪れたのは、観光列車に乗るためではなく、別の用事があったからで、たまたま最寄り駅が若桜鉄道だったというめぐり合わせです。

 まず、第3セクターで運営されている若桜わかさ鉄道」をご紹介しましょう。若桜鉄道の前身は旧国鉄若桜線で、1987(昭和62)年に開業。JR因美いんび郡家こおげ駅から若桜駅まで、19.2㎞のローカル線です(いきなり難読地名のオンパレードやね💦)。
 1930年の若桜線開業当時の雰囲気が残る駅舎やトンネル・橋など23施設が、国の有形文化財に登録されています。

 この若桜鉄道、今でこそよく見られる運営方式ですが、鉄道の運行・運営(上部)を若桜鉄道が担い、施設の維持管理(下部)を若桜・八頭両町が担う、つまり自治体が鉄道施設を保有・管理して、鉄道会社が列車運行に専念する「公有民営」の上下分離方式は全国初だそうです。

 上下分離方式については、以下の記事に詳しい解説があります。とても勉強になります。

 ネットで調べると、旧国鉄若桜線を走っていた蒸気機関車「C12」を、保存していた兵庫県加美町から誘致し、ほぼ職員の手で圧縮空気で動く機関車にして、その機関車を使った「SL運転体験」という、日本では珍しい取り組みをしています。さらに、2015年には若桜鉄道本線の若桜駅から八東はっとう駅間を1往復する、地方創生の社会実験を行いました。

 本線にSLが走行するのは45年ぶりだったのことですが、このSL走行社会実験の実現にはマーケティングがご専門で、公募によって若桜鉄道の社長に就任した山田和昭氏の尽力も大きかったようです。

 SLの本線走行も素晴らしい成果ですが、当日混雑が予想される撮影スポットを予約制の有料撮影(1か所500円)としたアイデアなど、鉄道マニアの熱量を巧みに収益へ変換する手腕が秀逸だと思いますね。💰
(詳しくは下の日本旅行のコラムをご覧ください👇)


❚  鉄道駅なのに、バイクの聖地でもある

 訪れたのは、若桜鉄道のはやぶさ駅。私はどちらかといえば鉄道寄りなので、若桜鉄道の写真が中心です。偶然乗った車両は観光列車八頭やず号」でした。乗客がいたのであまり車内は撮れませんでしたが、車内に入った瞬間「これは水戸岡鋭治さんやろー!」とすぐわかるデザインです。

普通料金で乗れる観光列車
このシートのデザインは水戸岡風でしょ
照明のカバーは組子細工で和テイスト

 八頭以外にも2種類の観光列車があるんですが、いずれも普通料金で乗れます。この理由は以前「べるもんた」の記事で紹介したように、若桜鉄道ならではの事情がありました。

 実はこの隼駅、鉄道駅ですがバイクの聖地でもあるんです。2008年、あるバイク専門誌が隼という駅名にちなんで、「8月8日はハヤブサの日」と名付け、スズキのバイク「GSX1300Rハヤブサ」オーナーに「隼駅に集まろう」と呼びかけて7台のバイクが集まったのが、ハヤブサライダーの聖地となったきっかけです。

 その後も年に1度の「隼駅まつり」として行われていましたが、コロナ禍で2020年は中止に、2021年はオンラインのみの開催でした。そして、2022年はいったん時期が10月30日に延期されましたが、3年ぶりに復活!1500台・1800人が集まった(過去最多は2018年の2000台)といいますから、聖地としての存在感は今も健在です。👍

 誰かが言った何気ない発想が、地域をこんなに盛り上げることになるなんて、まさに「バタフライ・エフェクト」といえますね?

 ハヤブサの聖地として当然(?)、ハヤブサ仕様のラッピング列車を運行しています。列車にキャラクターのラッピングはよく見かけますけど、バイクのラッピングは実に珍しい。正面から見るとなかなかイカツい

【ご注意】このあとの内容は、しばらく鉄分多めになると思います。


❚  旧国鉄駅のたたずまいが 随所 ずいしょ

 駅舎は登録有形文化財に指定されています。🏰外観は焼杉板の壁でしょうか、往時の様子をよく残しています。改札も木枠で、今時これを見られる場所は数少ないでしょうね。タイトル写真を白黒にすると、ほら、より昭和っぽく見えてきます。

駅舎が国の登録有形文化財です
よくぞこれを残してくれました!
小荷物の重量を量るばねばかり

 駅舎の中もなかなか渋いです。見た瞬間、子どもの頃に田舎の祖母の家から自宅への帰途に列車(もちろんディーゼル)を待った、国鉄の駅舎を思い出しました。

綺麗な状態で保たれていますね

 事務室跡が売店になっていました。あいにく土日祝のみの営業のようで、この切符売り場から硬券の入場券を買いたかったなぁー、と悔やまれます。

今でも現役のようなたたずまい

 さて、駅舎のすぐ脇には朱色の電気機関車に連結された、青い客車が1両あります。電気機関車は北陸鉄道石川総線で廃車になったED301を、市民団体である若桜鉄道「隼駅を守る会」に、無償譲渡されたそうです。

北陸とも縁があったんだね

 客車は元々、ブルートレイン「はやぶさ」の車両を入手する計画だったのですが、諸事情で叶わず、代わりにかつてJR四国で走っていた臨時夜行快速「ムーンライト」の12系客車が2011年に設置されたようです。

くっきり青色が映える

 ここでは、「ムーンライトはやぶさ」という名前で、休憩所やライダーハウスとして活用されていたのですが、コロナ禍で今は閉鎖されていました。これまた残念!!

コロナ禍の影響がこんなところまで


❚ シビック・プライドと幅広いファンづくり

 フェイスブックには、若桜鉄道「隼駅を守る会」というアカウントがあり、同駅の維持保存を通じて地域の活性化を図ろうとする、地道な取り組みの様子が分かります。

 実際に隼駅を訪れて気づいたのは、無人駅なのに駅舎はもちろん、ムーンライト号の塗装なども実によく手入れができているし、地域の内外を問わずいつも誰かがこの駅を見守っている「大事な宝物」だということです。

 隼駅のほかにも、若桜駅には貴重な車両がたくさん保存されていますが、単に登録有形文化財だから、ということではなく、素晴らしい地域資源を守るという、シビック・プライド(矜持きょうじがうかがえますね。

 同社のホームページには、オンラインショップや自由にダウンロードして楽しめるペーパークラフト、「若桜鉄道沿線ガイドブック」もあります。
 地域に根差す鉄道会社をめざすのはもちろんですが、全国に鉄道とバイクのファンを作っていく姿勢もはっきりしていて、これらが両輪となって若桜鉄道を支えているのでしょう。🚊

この記事が参加している募集

このデザインが好き