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ぼくとおじさんと - マンションと共同体

番外編④マンションと共同体 ep.4

マンション連合・・・参考資料として

参考資料として
「武志、文乃さんへ。
本日の飲み会兼説明会は、マンション生活での私自身の経験案内を予定していました。過去と今があまり変わらない中、以前に提起した文書があるので参考にしてください。当時、私自身は会社の立て直しと病魔に襲われて企画を進める事が出来ませんでしたが、この企画の次の年に東日本大震災を経験してマンション生活者の持つ脆弱性を実感しました。
このポイントは理解し合える人を募り、持続して検討することです。 安堂のオジサンより」

マンション連合(案)に関して

川口市には約52万人の市民が暮らしています。そのうち川口市民の5人に1人はマンション生活者です。川口駅東口の中央口(本町、栄町、幸町)では、2人に1人がマンション生活をおくっています。
各マンションは個別ばらばらに運営され、相互に交流が無いのが実情です。
川口市では、行政センターに「川口市民パートナーステーション」を置き、マンションの管理組合の支援や自治会のコミュニティ活動の啓蒙を図り実績を積み重ねています。
パートナーステーションの経験を参考に、今、様々な問題に頭を悩ませている関係者を糾合し、ここに改めてマンション同士のネットワークの必要性と、マンションオーナー及び居住者自らの手になる「マンション連合」の構築を提案したいと思います。

現在、それぞれのマンションは「区分所有法」に基づき管理組合が置かれていますが、そのほとんどが1年の任期で、中・長期の課題を継続して検討することが難しい現実にあります。また、管理運営の適正化を検討するにしても他マンションと比較し、参考資料を得るのも難しいことも事実です。これは、どこのマンションも抱えている問題で、長期修繕計画の検討についても同じ悩みを持っています。検討する手段を持たないが故に、出された案を呑まざるを得ないのです。出来る事は合い見積もりを取ることだけです。
マンション間相互で管理情報の交換やアドバイスし合えるネットワークの必要は、各マンション自体が感じている事と思います。
他方、マンションには、知らない者同士が入居しているマンションの特性として、知らないまま暮らすことが当たり前で、コミュニティ形成がなかなかできずコミュニィティ活動もしづらい現実があります。
そのため、多くのマンションでは自治活動の拠点たる自治会がなく、ほとんどが町会に加入しているようです。ただ、町会に入ったからといって積極的に地区活動に参加している話もあまり耳にしません。災害時のマンション内救護活動や防犯の観点からも大きな問題を残したままです。
自分たちの足元の問題、生活レベルでのコミュニティ形成が、今マンション生活者に問われている重要な課題のひとつです。自治会がすべてを解決するわけではありませんが、住民同士の疎外された関係を止揚する大きな力になります。
ところで、管理組合と自治会とは表裏の関係にあります。管理組合は、住民にとってのマンションという財産の維持・保全の役割を担い、自治組織はコミュニティ活動を通してその財産を活かすこと、さらに住民の意識の向上を図ることによってマンションの資産価値の向上につながるものです。
別の言い方をすれば、住民が住いを守り良好な住環境を維持していくために管理組合があり、住民の住みやすい生活環境、共同して生活するコミュニティの創出・形成を担うのが自治会で、この両者はマンション生活者にとって必要、有意義な相補性を持つものです。
マンション連合の意図は、このような2つを柱に、個別ばらばらな現状を乗り越え、お互い検討検証し合いながら、より良いマンション運営とコミュニティ活動を追求していきたい事と、マンション同士が団結した力で地域と係わっていき、しいては行政に対して私たちの負担が少しでも軽くなるようなマンション行政をお願いしていきたいと思っています。
特に、市民としてマンション生活者が多い事実は、この数の力の大きさを表しています。

ここにマンション連合としてのスケールメリット、及び課題のいくつかを記してみます。

■ 管理組合にとってマンション連合の役割
1、 管理組合にとって、組合員から集めた組合費の適切・妥当な運用の検討 や大きな費用のかかる長期修繕計画に対してのノウハウや検討資料の共有は大きな課題です。
それまで個別で検討していたことを、個別のマンションの課題を多くのマンション全体から考えることで、管理組合運営に、より合理的な指針を提示することが出来ると思います。
2、 管理組合の役員は、1年任期がほとんどです。それも忙しい自分の仕事を持っての組合活動ですので、決められた定期的理事会に出ることが仕事となります。そこでは、管理会社の持ってきた決済を必要とする議題を処理することがテーマで、より身近に問題となっているマンションのことが議題にはなかなかなりづらいものです。その上、時間内に済ませることが至上目的となり、議論を深めることを難しくさせています。したがって中・長期的な問題は大抵先送りとなるのが現状です。中・長期的な組織をつくり、そのような問題をフィードバックして管理雲合いを活性化させることが必要です。
3、 より根本的な問題、管理規約の検討をすべきでしょう。管理規約の多くは、マンション販売会社の作った原始規約をそのまま使っています。ここではマンション住民の義務と責任がことさら強調されていて、中にはとんでもない規約を無自覚にそのまま適用しているケースも多くみられます。それらの検討は必要です。問題点をチェックし合える関係が大事なことです。
4、 スケールメリットの利益として、例えばこれから必要になるLED電球への交換に関し大量仕入れで単価を下げることも出来ますし、専門家を呼んでの研究・講演も皆で費用を出し合えば安く済みます。
情報交換、暮らし・建物・設備に関する勉強会は必須のことと思います。
これらのことは当座の課題と考えて良いと思います。
これから高齢化や無関心で機能しなくなる管理組合が多くなり、管理会社が理事会を運営していく今の流れに対し、マンション住民の立場で、そのような管理組合のてこ入れを考えるのも、これからの展開の可能性のひとつかもしれません。

■ コミュニティ形成にとってマンション連合の役割
マンション生活では、個人のプライバシーが守られることが殊更強調される事と安全が金で買えるという幻想で、隣人に対する無関心と管理会社へのまかせっきりの依存性にマンション病という名前を付けられています。
お互いを知り合うという当たり前のことをコミュニティ形成の出発点としなければならないのがマンション生活の現状です。
ほとんどのマンションではコミュニティ形成を自ら図る事より、町会に参加することを勧めています。もともと関心がない上に、そこでは新住民と旧住民の軋轢もあり、マンション自治が放棄された結果地域だけではなくマンション内のコミュニティそれ自身が形成されていないのが現状です。
マンション連合構想の起点はマンション生活者の団結であり、マンション生活者の自治活動とマンションの保守・管理という表裏一体の関係を全体として担保していくものです。
1、 現状の行政との関係では、自治会を作ることが良いでしょう。自治会を作る事で、初めて行政とのパイプが出来るのです。悲しいことに自治会がなければ行政からも相手にされないということでもあります。そのかわり、行事を組めば補助金や助成金が出ます。居住者から集める管理費の負担削減の一助となります。そのサポートをマンション連合の役割のひとつに位置付けなければなりません。
2、 まず、形を作る事。自治会が行政とのパイプとして必要ですが、そもそも中身がなければ何もなりません。中身としてのコミュニティ活動の提案においても、それぞれのマンションの経験、ノウハウは大きな力となるでしょう。
3、 マンション生活者にとっては、暮らしが第一です。暮らしやすい環境は暮らしている人々が作り出すものですが、それは資産価値を高めることで、人の力によるものです。
コミュニティ形成とは、資産価値を高める原動力です。そのノウハウを提供する役割がネットワークにあります。
4、 川口には多くの外国籍の方々が暮らしており、マンションにも多くの方が私たちと共に暮らしています。ある意味では川口は国際都市で、マンション生活もそんな彼らと共生する町の一部です。私たちの多くは外部からきて見知らぬ同士で生活していますが、国籍を除けば条件としては同じです。多文化の交流とマンション生活者で作る新しい文化の土壌が私たちに用意されているのかもしれません。
5、 このことは、他文化にこだわらず、新住民として古いしきたりにこだわらない新しい私たちの文化を創るという意味でもあります。
6、 現在、初期に作られたマンションは老朽化してきており修繕・建替えの問題が現実化していますが、同時に老人・高齢化の問題も表面化しています。多くのマンションは町会に入っており、町会・民生委員がその対応をしています。多くの老人を抱える民生委員は人手も少なくその対応に苦慮しているのが現状です。また無縁社会の煽りを受け、孤立老人や孤立した人がマンションの閉鎖性の中で孤独に暮らしています。マンション連合はこのような問題をその組織性、ネットワークをスケールメリットとして考え、対策を考えていきたいのです。

■ 体外的な働きかけ
地域・町会に対して、住民という数を擁するマンションは、地域においてはひとつの町会と同じ地位を占めます。それは自治会として対等な関係を結べるということであり、マンション連合として町会を巻き込み地域貢献できるポテンシャル、力を持つということでもあるでしょう。
また、マンション全体として、商店街、スーパーに働きかけ共同購入や宅配などを組織化することが出来れば、地域の経済の活性化にもつなげられます。
更に、マンション連合として行政・医療機関に働きかけて各マンション毎の定期健康診断に来てもらうことで、住民の健康管理にも便宜を図る事が可能です。
対外的な働きかけで、数と組織力で大きな力を持つのは行政に対してです。
1、 マンション住民の大きな関心は、管理費と長期修繕積立金です。現在、市からはそのための補助や助成はありませんが何億という金が動くわけで、市での経済効果の面から市の係わりを促す施策を考えたいと思うのです。
2、 町会では様々な活動に補助が出ます。マンションにはそのようなことはありません。
街路灯の補助と同じように、マンション共用部分の電気代への補助等、行政にお願いすることは多くあります。
3、 マンションに対する固定資産税の見直し。
4、 現在、管理組合の市の窓口は住宅課、自治会は自治振興課、その他色々な問題解決のために様々な窓口を歩き回ります。市にマンション課を置いて窓口を一本化して、マンション生活者及びマンションに対し総合的に対処してほしい。
5、 マンションに関わる法は区分所有法です。これは民法で律しきれなくなったマンションの実体に照らし合わせて作られたものです。その意味では限定的な法律です。マンションの建設―販売―管理―修繕、全体を統括できるマンション法のようなものを求めます。
6、 外国のように、各家、マンションの修理履歴の行政への登録制の導入。物件に対する客観的な評価を得ることが出来ることと、資産価値を高めることが出来ます。
7、 リバースモーゲージ制の導入。住宅用不動産を所有している高齢者を対象に、その物件を担保に生活・介護資金を貸し付け、死後に清算するものですが、武蔵野市等で実施されています。不安な老後生活での選択肢の一つとなるものです。
8、 その他いろいろありますが、あれもこれもというのではなく、必要なこと優先順位を決めて、スケールメリットを活かすことで実現できることから始めていくことがその課題です。

要約した提起文ですが、マンション生活者の共通課題を解決するために、マンション連合をその踏み台としてすべてのマンション生活者に呼びかけるものです。

2010年10月 ******************マンション   安堂 文人


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