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背表紙のあらすじほどの一日

できるだけ分厚い本を

旅路の孤独を埋めるためだけの不純な動機。

平積みされた本はどれも読んだことがあるような錯覚をおこして意味もなく何周も廻る。やがて観念したように手に2冊の本を持ってレジへと向かう。丁寧な対応に合わせて受け取る私も同じだけの丁寧さをもってお辞儀をする。

いつもより重い荷物を抱えて歩くと少しだけ涙が出そうになるのはどうしてだろう。

ひとりで生きることは秘密を増やしていくようなことだと思う。そしてそれは、手に持ったコーヒーがゆっくりぬるくなることでもある。

9月に向かって走り出してしまった。

それに意味はきっとないし、誰も気づくことはない。閉まった電車のドアに小さな隙間があるのと同じように。けれどもかつての私はその隙間が命綱かのように無理をして電車に乗っていたのだ。

全ては誰かにとって何かの糸口なのだろう。
それを見失いたくないから、余分な干渉も鑑賞もされたくはない。だからまた明確に境界線を引いてみせる。私は被害者だと大声で騒ぐだろうことも予測しながら。

たんなるにっき(その141)

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