たとえばのお話

画像1 あお、アオ、青、蒼、碧。私は数ある色の中で、青が一番好きです。空も海も、心を癒してくれる気がするからです。
画像2 慌ただしい毎日で、少し疲れていましたが、心も体もリフレッシュするような、楽しい出来事がありました。
画像3 先日沖縄旅行に行っていた娘が、久しぶりに帰って来ました。ずしんと、それはそれは重いバッグには、たくさんのお土産と思い出話が詰まっていて、私も元気がみなぎってきました。私はパニック障害を患っており、船や飛行機になかなか乗れないので、娘の話を聞くのがとても楽しいのです。旅行した気分になります。
画像4 パパが大好きなビールにジュース、ラーメンが、ドラえもんのポケットから溢れ出るように次から次へと並びます。他にもチューハイやシーサーの絵のTシャツなど、部屋に並べたら露店のようになりました。ハイビスカス柄のトランクスは、子供用だったので、はけませんでしたw
画像5 派手なネイルのおかげで、上手く小銭を財布から取り出せず、かなりの量のお金をレジ前の床にばらまいてしまい、見ず知らずの人に拾って助けてもらった話をしてくれました。みんな優しかったよと、得意満面です。
画像6 パラグライダーに挑戦したのはいいのですが、着地に失敗してインストラクターの方の背中を踏んづけてしまったり、ゲイバーで泥酔し、財布を忘れて次の日ホテルに届けてもらったり、話のほとんどが失敗談でした。でも楽しかったぁ!また来年絶対行くー!!と、前向きでした。
画像7 美味しいお酒に料理と、とても楽しい時間を過ごしたようです。少し日焼けした顔が、どことなく頼り甲斐のある表情に成長したように思えます。旅は心の栄養なのかも知れません。
画像8 なにはともあれ、無事に帰って来てくれて安心しました。失敗談もたくさん、楽しい経験はもっといっぱいあり、家に着いてからも、ご飯を食べる時も、シャワーの途中も、娘はずっと話していました。去年と同じシーサーの置物を買って来たことも笑い話です。永遠にこのお人形が増え続けるかも知れません。それも楽しみです。笑っているシーサーを見ると、勇気が湧いてきます。
画像9 娘は、産まれて間もなく大きな病気が見つかり、ほとんどを病院で過ごしました。ママも病気を抱えており、同じ病院へ入退院の日々でした。私も仕事を長期で休む状況でした。ひとつ上のおにいちゃんと過ごし、抱っこひもに入れてお見舞いに通っていました。
画像10 ママ以外の誰にも懐かない娘でしたが、おなかがすいてミルクを飲む時だけは、私が抱っこしても泣きませんでした。しっかり目を開いて私を見ながら、一生懸命ミルクを飲んでくれました。そうやって少しずつ少しずつ、私にも心を開いてくれました。やっと父親になれた気がして、私はそんな普通の出来事が嬉しくてはしゃいでいました。
画像11 息子が間もなく二歳、娘もそろそろ一歳の誕生日だという晩秋、ママは病気のため天国へと旅立ちました。私は、なにかドキュメンタリー映画を観ているような不思議な錯覚の中にいて、自分達家族に起こっている現実が、どこか遠い世界の作り話のような気分でした。大きな悲しみが、押し寄せる波のように心を濡らしていくのを感じたのは、随分と時間が経ってからでした。
画像12 娘は、妻に瓜二つです。明るく、前向きでおしゃべりで、こうと決めたらどんどんと前に進んでいく性格です。道端や野に咲く花のように、いつも私に元気を与えてくれます。すぐに泣いてしまうのが欠点と言えば欠点かも知れませんが、私にとっはそれも長所に思えます。たくさん泣く分、いっぱい笑うからです。花もお水がないと育ちません。
画像13 いつも派手なネイルで、料理を手伝ってくれます。好きな食べ物はキムチ鍋、カレー、お好み焼き、たこ焼きなどで、我が家では年中、大きな鍋とホットプレートを使うので、いつも汗びっしょりになります。鍋をつつきながら、いろんな話が出来るので、長年愛用した鍋にはたくさんの出汁と笑い話が染み込んでいます。時に涙も。
画像14 息子と娘が帰って来た日の晩御飯の時、○○ガチャの話題になりました。私はこの○○ガチャという言葉を初めて聞いた時、なんて便利な言葉なんだろうと感心した反面、とても切ない気持ちになりました。私達の生まれて来た意味や、生きる価値のすべてが、この小さなカプセルの中身で決まってしまうなんて、と、ふと思いました。その一方、努力したくても、そのスタートラインにさえ立てない世の中も、確かに存在しています。
画像15 「パパ、確かにさ、ガチャなんて気にせず頑張って、自分の道を切り開く人もいるしすごいと思う。でも世界にはさ、たとえば戦争の真っ只中で産まれる赤ちゃんもいるし、病気とか事故で小さい時に亡くなる子供もいるよ。努力するチャンスが無いなんて不公平だとおれは思うよ。運命ってさ、命を運ぶって書くけど、命を他の何かに左右されてしまう人が世界にはたくさんいて、もっと楽しく平和ならいいのにな」
画像16 いつもゲームやアニメの話で盛り上がる息子が、たまに考えさせられる話をするのでびっくりします。しゅんとわかなはさ、えっと、生まれて来てよかったって思うね?ママが早くに亡くなって、寂しい思いをしてここまで大きくなったでしょ?と、私は二人に訊ねてみようと思い、やっぱり質問するのをやめてしまいました。二人がどんな表情をするのか、それを見るのが怖かったからかも知れません。ダメな、弱気なパパだと、自己嫌悪に陥りそうでした。
画像17 たとえばこの子にママがいたら、もっと幸せな人生を歩んでいたんじゃないだろうか?料理や裁縫なんかも、小さい時にママに教わり、苦労することもなかったかも知れない。
画像18 もしもこんな頼りない父親の子供として生まれて来なければ、もっと裕福で涙なんて流す必要のない勝ち組の人生を送れていたかも知れない。
画像19 もしも、仮に、たとえば、私はふと、そんな非生産的な思考に支配され、パパ、前向きに!明るく!あれこれ仮定の話なんか真面目に考えるより乾杯しようよ!!と、子供たちに励まされます。
画像20 パパ!見てみて!わたしナスが苦手だけど、食べる前に可愛くしたら愛着わいて全部食べれるかも!だってもったいないもん!自称アートセンスの持ち主、娘の作品です。
画像21 パパ、ケーキ食べるんだったら可愛いのがいいと思って、クマさんのチョコケーキ買って来たよ。食べるの少し可愛そうやけど。甘い物大好きな、息子のお土産です。
画像22 パパ、すごい!え!?ずるい!!パパのカプすけじゃん!これレアなんだよ!わかなにちょうだーい!!私が大好きなカプリコに可愛い顔が施されていて、どうやらラッキーらしいです。
画像23 たとえば、生まれ変わってもう一度人生があるのなら、私はまたこの子たちのパパでありたいです。たとえ苦労しても、たくさん泣く日ばかりでも、もう一度子育てをやりたいです。願わくば妻と二人で。
画像24 私にとって子供たちは、虹のような存在です。辛くてもきつくても、顔を見るだけでいつの間にか疲れも吹っ飛び、笑顔になれるからです。人生を照らす、七色の光です。
画像25 娘が産まれた日、か弱い小さな手に人差し指をそっと入れたら、ぎゅっと握り返してくれたので、その大きな力にびっくりしました。それは赤ん坊が幸せを掴むために与えられた生まれながらの尊いパワーなのかも知れません。
画像26 人間の手も、存在も、自然や地球、宇宙の広大さに比べるととてもちっぽけです。この手は、他人を傷つけたり殴り合ったりする為の武器ではなく、握手をしたり頭を撫でて励ます、心の形だと思います。
画像27 娘が作ってくれた朝ごはんのように、泣いたり笑ったり、少ししょっぱかったり、それが人生だと思います。人が精一杯生き、努力が報われ、流した汗や涙が、いつか大きな実と育つような、そんな世界になってほしいなと、私は思います。
画像28 たとえばいつか、命の灯火がろうそくの火のように、ふっと消える日がやがて訪れる時、笑って旅立てるような生き方をこの子たちにはしてほしいし、私自身、そんな歩みをこの先続けていきたいと思っています。
画像29 きれいごとかも知れないし、大袈裟で夢物語で建前の話だとたとえ一笑されるとしても、こうやって生きている限り一生懸命生き、バタバタしながら汗と涙と笑顔に溢れた、苦労の旅を目指したいなと思う。バンザイなんかしながら。
画像30 たとえ大雨でも大雪でも嵐でも、その遥か頭上には蒼天が大きな手を広げている。今日たくさん泣いた人に、虹と星の祝福の明日が待っているような、そんな世界になってほしいな。そんな世界と未来を創るのは、私たち人間だから。

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