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【TXT】THE NAME CHAPTER 考察① 鏡の国のアリス・パンドラの箱

冬らしい寒さを日毎に実感しますね。週末にかけてかなり冷え込みそうなので、皆さまどうかご自愛を。そしてスビンの初カバー曲は、クリスマス頃のリリースでしょうか。首を長くして楽しみに待っている今日このごろです。


※[災いと希望]の文中に誤記載があったため訂正しました(12/21)。
※ ① 記事の最後にボムギュの車とヨンジュンについての考察を追加しました。目次の「追記」からとべます。②[~映画『IT』]の記事中盤にDREAM CHAPTER: MAGIC への引用場面を追加しました(12/23)

物語全体のモチーフは鏡の国のアリス

さて。以前に「Deep Down」 の和訳記事にて、今アルバムは”アリス”がテーマだとスビンがネタバレしていたのではと書きました。

この曲と対になるデビュー曲「CROWN」 もアリスがモチーフでしたが、NAME CHAPTER や DREAM CHAPTER 以外にも、これまでリリースされた曲のMVや歌詞を振り返ってみると、アリスのモチーフがたくさん散りばめられていたことに気づきます。

特にMVで目につくのが鏡や水、ガラスのモチーフ。水もガラスも、ストーリー的には鏡(に映る別世界)を示唆しているように思えます。つまり、トゥバの物語は鏡の国のアリスをベースにした成長物語だったのですね。またそこからは、鏡の国のアリスをモチーフにしたさまざまな映画から多数のオマージュがあったことにも気づかされます。

物語には二面性がある

では、なぜ鏡の国のアリスがメインモチーフなのでしょう。
鏡といえば前述の Deep Down 記事にて、THE NAME CHAPTER のコンセプトトレーラーでは5人が鏡をはさみ、表の自分と影の自分、ふたりの自分という自我に葛藤する姿が描かれているとご紹介しました。

鏡がイメージさせる表と裏、その二面性から、実はトゥバの物語では、希望と絶望、本音と建前、夢と現実、過去と現在、喪失と再生といった相対するテーマが描かれていたのだとわかります。

映画版「鏡の国のアリス」のメッセージ

また、鏡の国のアリスの映画版『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016) では、生きることに不器用なアリスが、不思議の国での冒険を通してたいせつな仲間と出会い、お互いに助け合いながら、ありのままの自分を受け入れ、現実世界で今をたいせつに生きることを学んでいきます。トゥバの物語からも、そうしたメッセージが伝わってきますよね。

アリスと鏡合わせの映画『IT』

さて。鏡の国のアリスでは、アリスが最後に王冠をかぶってクイーンとなったように、トゥバの物語で少年たちは、Deep Down で自分の王冠を見つけます。いわば、アリスは”希望”の象徴。一方、少年たちはそれまで心の奥底にツノ(コンプレックスなどの生きづらさ)という絶望を抱えていました。

この絶望の象徴として引用されていたのが、ホラー映画「IT」(2017) です。
怖くて気持ち悪いピエロが出てくるので、万人におすすめできる映画ではないのですが…、どこか、同じスティーブン・キング原作の「スタンド・バイ・ミー」も彷彿とさせる、青春映画のような物語になっています。

それで、この IT がトゥバの物語にどこに出てくるかと言えば、まずは「Do It Like That」。冒頭の「僕を振り回して楽しんでいたんでしょう」という歌詞は、投稿記事にて「もうひとりの僕(ツノ)が、今まで僕を振り回して楽しんでいたんでしょう。ねっ、そうでしょ」と再解釈しましたが、今にして思えば、「IT」の怪物のことのようでもあります。曲名にもしっかり”It”が入っていましたし。

また、THE DREAM CHAPTER: MAGIC のコンセプト「SANCTUARY」は、落書きトイレが「IT」で少女ベバリーがいじめられた現場、図書室は怪人ピエロについて少年ベンが調べていた場面からのオマージュだと思われます。

そして注目すべきは、CHAOS CHAPTER 期の 「0X1=LOVESONG」と「LU$ER=LO♡ER」。MVでは、LUSERのSの上に赤字のVを重ねてLOVERと読ませるギプスをテヒョンがしていましたが、あれね、映画「IT」に出てくる少年エディがしていたものとまったく同じなんです。

「IT」では、ピエロが街を絶望に陥れる異世界の怪物として描かれます。そんななか、学校や街でイジメの標的になっていた7人の少年少女がルーザーズクラブ(負け犬クラブ)を組み、そのピエロ(IT)をやっつけようと闘いに挑むのです。

仲間との絆

その過程では、不器用な少年少女たちが、それぞれ心の痛みに目覚めつつも、仲間との絆を深めていきます(ITも鏡の国のアリスがモチーフの話です)。印象深いのは、ピエロとの死闘を繰り広げた後、7人それぞれがガラスで手のひらに傷をつけ、輪になって、血のにじむ手で互いに手を繋ぐという場面。彼らは「もしもそれ(IT=ピエロ)が生きていたら、僕らも戻ってこよう」と誓いをたてるんですね。「LU$ER=LO♡ER」の歌詞に、”君の手をとった僕の手 傷だらけだけど 君さえいれば問題ない”とあります。 ここでも IT の物語をほのめかしていたように思えます。

そういえば「Run Away 」には、”泣いてしまいそうなら 手握るんだ 逃げようか( Japanese ver. より)の歌詞がありましたね。傷ついたヨンジュンの手にボムギュ(Run Away MV)やテヒョン(Sugar Rush Ride 日本語版MV)が絆創膏を貼ってくれたりもしていました。

そして今アルバム7曲目の「물수제비(Skipping Stones)」には、”今日の君を 明日の僕が抱きしめられるように ~ ふるえる両手を握ってあげるから" とあります。

いずれも”手”が、絆への導線になっているんですね。

映画『アメリ』から、『Magic Island』・「REALITY」フォトへ

こうした表現方法は、どこか映画『アメリ』(2001) にも重なっていきます。映画の冒頭、スタッフクレジットを紹介する場面では、音楽担当の名前とともに、画面には女の子(アメリの少女時代)がグラスの縁をなでています(グラスハープのように音を出す)。ストローで音を立てて飲み物を飲む場面には、音響担当の名前が表示されるという具合。

アメリもまた鏡の国のアリスをモチーフにした、自己受容のお話。緑と赤の2色が効果的に使われていたことも印象的でした。トゥバのMVにも、赤と緑の2色が幾度となく登場していましたね。また「물수제비(Skipping Stones)」の歌詞のように、映画でもじれったい自分に葛藤するアメリが川で水切り(石投げ遊び)をしています。

余談ですが、映画監督のジャン・ピエール・ジュネ氏は、「アメリ」より前の95年に『ロスト・チルドレン』という映画を制作しています。2色を使って物語の世界観を表現する手法は、この映画で初めて試みたのかもしれません。子どもをプラグに差し込んで夢を吸い取るというモチーフとともに、映画『マトリックス』(1999)の元ネタのひとつであるとも言われています。

そしてグラスハープと言えば。「Magic Island」のMVで、森のなかスビンやヨンジュンだけが耳にしていた不審な音。あれはグラスハープの音ではないでしょうか。だとすれば「音楽で夢を叶えることを思い出して」というメッセージを、ふたりが無意識のうちに受け取っていたということでは。

そういえばFREEFALL「REALITY」のコンセプトフォトには、ウィリアム・バトラー・イエーツの詩から、「In dream begin the responsibilities.」のフレーズがバナーに掲げられていましたね。

現実になかなか向き合えないでいた不器用な少年たちに、「夢を白昼夢や悪夢の幻想にするのではなく、生きた夢として追いかけよ」と、夢の方から幾度となく、彼らの背中を押してくれていた。そういうことだったのではないでしょうか。

鏡の国で”蝶”が示していたもの

さてさて。鏡の国のアリスにも、ちゃんと”IT”が出てきます。

「鏡の国の昆虫たち」という章でアリスはブヨに「それ(”バタ付きパン蝶”)の食べものは何('what does IT live on?’)」とたずねます。ブヨは「クリーム入りの薄い紅茶だよ」と答えているのですが、この蝶、頭が角砂糖でできています。生きるために紅茶を飲めば、自分の頭が溶けてしまう。美しく はかない生きものに思える蝶も、鏡の国の世界では、蝶(IT)が悪夢や絶望の象徴なのだと解釈できそう。

物語や楽曲に隠された暗号

アリスのストーリーを英語で読んでみると、作者ルイス・キャロルの本業が数学者だからか、物語には文字や数字を使った謎掛けや言葉遊びがたくさん隠されています。トゥバの物語や楽曲にも、言葉遊びやダブルミーニング、アナグラム、暗号など、アリス方式に倣ったと思われる仕掛けがたくさんあります。

例えば、王冠(Crown)とピエロ(Clown)。どちらも韓国語(日本語)読みは同じクラウンです。希望と絶望の象徴が、同じ読み方の言葉に隠されていたなんて、これもパンPDから投げかけられた言葉遊びのひとつだったのではないでしょうか。

災いと希望

そして英語の butterfly は、時にスラングとして、不安や緊張でドキドキする胸がざわめくなどの意味としても使われます。

それらを暗示するかのように「We Lost The Summer」「Frost」「Sugar Rush Ride(日本語ver含む)」のMVにも、蝶が登場していましたね。そして蝶はよくボムギュといっしょに画面に現れていました。

5人の個性を示唆していたデビュー前の「Questioning Film」 で、ボムギュを象徴していた生きものが、まさに”蝶”。

Questioning Film の最後に流れたモールス信号の意味は「希望」。また、WEBマンガ・WEBノベルで展開したトゥバのもうひとつの物語「THE STAR SEEKERS 」で、ボムギュの真名は「箱の一番奥に入っていた物」でした。これは THE STAR SEEKERS と連動させたトゥバの「FROST」MVからも、「パンドラの箱(災いの最後に出てくるのは"希望")」のことだとわかります。

ボムギュの”災い”と”希望”の二面性は、誰かのために行動したことが結果的に火事という災いを招くなど、これまでのMVで繰り返し描かれていて、最後の”希望”は、まだ明確に描かれていなかったように思います。

先日のMAMAステージでは、スビンがまだ現在進行中だとWeverse Live でテヒョンとヒュニンカイが明かしていました。FREEFALLのテーマのひとつが、”自己受容=ありのままの自分を受け入れる”であったことから、楽曲のストーリーを通じてスビンが苦悩から立ち直り、4人といっしょに夢を追うと決意したのではと、MAMAの考察記事に書きました。

けれどもしかしたら、スビンを救ったのは、今度こそボムギュの存在だったのかもしれません。

パンドラの箱ついに

というのも、「Chasing That Feeling 」のMV前半、ボムギュが車にkeyを差し込む場面がありましたよね。car に key を加えると carkey 。そこからは「ark」の単語が浮かび上がってきます。ark とは特別な箱の意味。ボムギュの特別な箱とは、もちろん”パンドラの箱”のことでしょう。

「Sugar Rush Ride」 MVでは、水辺で果ててしまったようなスビンに、ボムギュが別の場所なのか別世界からなのか、彼を助けようと手を伸ばしていた。そんな場面もありましたよね。

そして「Chasing That Feeling」 の MV後半、ボムギュの車は逆さまになります。これは、パンドラの箱が開け放たれたという意味なのでは。

けれどパンドラの箱では、希望の前にまず災いがあるということ。またしても、大火事の災いが起こるのでしょうか。

ヨンジュンとテヒョンの稲妻

ここで気になるのが、ボムギュの車のキーと同じように、小さな稲妻のような光が走っていたヨンジュンとテヒョンです。

同様に暗号が隠されていそうなので、考察を広げてみます。

ヨンジュンはタクシーの後ろからズルズルと引きづられるように進んでいましたね。これを英語にするとbe dragged on the taxi ─そこから、drag on だけを抜き出すと。そう、2つの単語をつなげれば dragon になるのです。
drag on には、「(後遺症が)尾を引く」の意味もあるので、まだ失恋の痛手を引きずっている、それが火種の原因とも考えられそうです。

そしてテヒョン。彼は壁を登るように駆けていました。
run and climb on the wall ─ climbから、彼らが追っていた光の球 light ball の頭文字、"l"と"b"の部分を文中の他のスペルに置き替えると、crime  ”罪”の単語が浮かび上がってきます。

さて。ここでもうひとつ。ずっと気になっていたのが「Do It Like That 」にあった "You're the cover of a magazine. Got me feelin' like, "Damn", hey." (公式訳:君はまるで雑誌モデルみたいだ。僕を感嘆させる)の歌詞です。

damn は公式訳のような良い意味でも使われますが、ちくしょう、クソといったネガティブな感情表現でも使われる言葉。そしてcover of a magazine。cover を表紙ではなくおおい”magazine を雑誌ではなく”フィルム枠”の意味で捉えると。。。

もう気づきましたか。そう、GBGB日本語ver のMVに出ていたスビンのデート写真です。なんかヘンだなって思いませんでしたか。あの写真は一体誰が撮ったんだろうと。そしてなぜ彼女の顔がわからないように窓枠をかぶせて撮っていたんだろうと。

私は写真を撮った人物、もしくは誰かに依頼したのがテヒョンなんじゃないかと。そして、ヨンジュンはその写真を見てスビンに彼女を横取りされたと勘違いし、スビンを罠にはめた(警察に捕らえられた)。スビンはそのことでずっと、苦悩していたのでは。そう考えるには理由があるのですが、長くなるのでこれは次回の記事で書きますね。

ともかく。そんなわけで、彼らはくすぶっていた火種を一気に爆発させてしまったのでは。となれば、「Do It Like That」の「一体どんな手を使ったんだ」の歌詞は、彼らの心の叫びが隠されていたとも解釈できそうです。
MVの後半、ヨンジュンが頭にツノを立てるジェスチャーをしていましたが、自分のツノを受け入れる自己受容だけでなく、ダブルミーニングとして怒りの意味もこめていたのかもしれませんね。

けれど、最後には希望が残された。つまりボムギュがスビンを救い、結果的には5人の絆が深まることになったのではないでしょうか。

スビンのカバー曲にヒントが出そうな気もしますが、こうなると物語にはまだ最後のNAME CHAPTER かミニソード3が残っていて、そこで本当の結末が明らかになる。そんな可能性もありそうですね。

今回の考察まとめ

書きたいことがたくさんありすぎて、あちこち話が飛んでしまったので今回の記事で言いたかったことをまとめますね。

・トゥバの成長物語は鏡の国のアリスがベース
・鏡の国とは、二面性の物語
・「アリス」は希望、「IT」は絶望の象徴
・ツノ(絶望)と王冠(希望)以外にも、本音と建前、夢と現実、
 過去と現在、喪失と再生
など、相対するテーマが含まれている
・映画版「鏡の国のアリス」は「たいせつな人たちを見つけて絆を育み、
 ありのままの自分を受け入れ、今を生きることを学ぶ
」がメッセージ
・映画「IT」、そしてトゥバの物語でも、↑同様のメッセージが描かれた
・「夢を生きた夢として追いかけよ」と、彼らは無意識のうちに何度か
 メッセージを受け取っていた
・鏡の国では、蝶が悪夢や絶望の象徴だった
・災いと希望の象徴だったボムギュのパンドラの箱がついに開け放たれた
・大ゲンカの後、ボムギュがスビンを救い、皆の絆が深まる結末を予想
・アリスの物語同様、トゥバの物語にも言葉遊びがたくさん隠れている

※考察は個人の解釈によるもので、間違いの可能性もあります。また、シェアを除き、記事の無断引用、無断転載はご遠慮くださいませ。

次回はテヒョンのギプスから見えてきた事件の考察をまとめてみたいと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

追記

ボムギュのパンドラの箱ですが、なぜ「車」が選ばれたのでしょうか。
ここでふと思い出したのがタロットカードです。トゥバの物語にはタロットカードも関係しているのではと思っているのですが、その中で、物語の終わりを示すタロットカードの10番に描かれた運命の輪は、Wheel of Fortune。

同じ”輪”を意味する ring(指輪)ではなく、ホイール(車輪)が描かれています。だから、車輪を持つ「車」が、運命を決めるパンドラの箱だったんですね。となると、これまでのアルバムが9枚であることから、やはり物語の結末として、10枚目のミニアルバムがありそうな気がします。

また、 car+key(カーキー) ですが、ボムギュのトップスの色 khaki(カーキ)も、韓国語(日本語)読みからヒントを暗示していたよう。
さらに carkey から ”ark” をのぞくと残りの文字は c ey 。そこに、khaki から ark のaとkをのぞいたスペルを組み合わせると、"Chei. Y" ヨンジュンの暗示が。※正しくはChoi. Yになるはずですが、アリスの謎掛けも正確なスペルではないものがあるので、暗示を匂わせれば良しの世界なのでしょう。

「Do It Like That 」のMVサムネイルで真ん中に立つヨンジュンとボムギュ。先日のKBS歌謡祭でのヨンボムのステージ(あとひとつ、ヨンボムのステージが残っていますよね)からも、ヨンジュンとボムギュのコンビが運命の鍵を握っているかもしれません。

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