見出し画像

リモート同棲で共依存になった話

遠距離恋愛中の彼氏とリモート同棲中だ。
リモート同棲というのは、LINEなどのアプリの通話やビデオ通話機能を使って、常にお互い繋がりあっている状態を指す。

仕事終わりの帰宅後〜翌朝の起床まで、というのが一般的のようだが、
私たちの場合は少し違っていて、24時間常にLINEを通話状態にしている。
どちらかの通信環境が途切れたり、イヤホンをうっかり二度押しして通話を切ってしまったり、他の人から重要な電話が掛かってきたりしない限りは、本当に常に繋げておく。
切れていることに気づいたら、LINEのメッセージを入れてからどちらかが掛け直す。そしてまた、繋げておく。

ただし必ずしも相手の姿が見えるビデオ通話や、常に音を出しているわけではなく、繋がっている時間の大半は、実はお互いにミュート状態になっている。
それでもただ、繋げている、ということ自体が不思議な安心感に繋がるのだ。

実はミレニアル世代である私(女)からすると、最初この感覚は少し理解し難いものがあった。
一回り以上歳の離れたZ世代ど真ん中である彼氏から、寝落ち電話に初めて誘われた時には、何それ?!と少し身構えてしまったのも事実。
通話を繋げながら寝るまで色々と会話を楽しんで、やがて彼氏の方がスゥ…と寝始めるのだが、初めてその瞬間に居合わせた時は、その寝息をとんでもなく愛しく感じて、受話器越しに真剣に耳を傾けてしまった。
穴が開くほど見つめる、という慣用句があるが、それの耳バージョン…?
…..何を言ってるのか自分でもよくわからないが、とにかく息をするのも忘れるほどに真剣に耳を凝らして、彼の寝息を聴いてしまうのだ。

スピーカー状態にして耳の横にスマホを置いていれば、もう実際に彼が隣で寝ているかのような感覚を味わえる。
こんなに幸せなことがあるのかな…と思う。
遠距離なことなんて、いつの間にか忘れてしまっている。

最初こそ、彼が寝たら私の方はミュートにしてから寝ていたが、いつだったか、うっかりミュートし忘れて寝てしまい起きた時に、彼が私の寝息を聞けた!と興奮しながら心底嬉しそうに伝えてきたことがあった。曰く、この上なく幸せを感じた、と。
いびき、聞こえなかった?と不安になって聞いたら、
全くだよ!スヤスヤ寝てた!可愛かった。でも、もしいびきなんて聞こえたら、俺嬉しくて三日は寝ずに仕事頑張れるなぁ。などと言うものだから……その言葉に甘えてしまった。幻滅されないのであれば、もういいかな?と、私はそこで諦めがついた。

そもそも私自身も彼の寝息を聞いては感動するほどの幸せな気持ちを味わっていたのだ。それは彼とて、同じなのだろう。お互いに愛し合っているのだと、確認できる出来事でもあった。

それからはお互いにミュートを解除して、毎晩一緒に寝ている。
おいで、と優しい声で呼び寄せてくれる彼の言葉に甘えて、私は抱き枕を彼だと思いぎゅーっと抱きしめて、心地よい眠りに落ちていく。
大体彼がいつも先に寝て先に起床するので、おはようの挨拶と愛のメッセージをLINEに入れて、彼側の通話をミュート状態にしてから仕事に行く。
私はその後に起きて自分側をミュートにして、通話は切らずにそのまま仕事に向かう。といった流れだ。

仕事を終えたり、通話できるタイミングが合う時にはミュートを解除してとりとめもない話をしたりする。
私が家事をしたり料理をする時や、彼が運転をする時にはたまにビデオ通話にしたりもする。
あえて双方の生活音を出すために、マイクオンにしておくこともある。
こうして私たちは四六時中、繋がっている。

繋がっていることが当たり前すぎて、
アクシデント等で通話が切れてしまって数時間経つと、何やら底知れぬ不安を感じてしまうことがある。
実は私たちは不思議と、メンブレするタイミングも一緒だったりする。
どちらかが落ちている時は、須くもう片方も落ち込んでいる。
通話して相手の声を聞いて、ちゃんと会話さえすればすぐに気持ちは上向くのに、上手くそのルーティンに乗れない時がある。仕事や家庭の事情で物理的に通話ができなかったり、といった具合に。
そんな時は、二人して地の底にいるかのような気持ちで揃ってどんよりしているのだ。

共依存と一言で言うと、自立していなくてお互いに相手にしがみついたような状態を指すが、私たちの場合お互いに仕事もあって経済的に自立はしている。日常もそれぞれに家族や住む家があって、ごく普通に過ごしている。

ただ、ひとたびお互いのことで病んでしまうと、こういった日常や仕事にも少なからずの影響を与えてしまうという意味では、もうお互いに、かなり依存し合ってしまっているのは間違いないのだろう。
そして病んでしまう理由自体は数あるにせよ、通話が繋がってるかどうかが肝になってくる。病む理由が重なった時に、タイミング悪く通話が切れてしまうと、それがトリガーとなって私たちはどちらも、救いようの無いくらいに、落ちるところまで落ちてしまう。
再び繋げようとするのにも、互いのブレっブレになったメンタルを揺り起こさないといけないので、かなり苦労をする。

彼は年齢差もあるのだろう、自分の関与し得なかった私の過去を気にして病むことが多く、
私はまた、今後の彼との関係性や将来について悩むことが多い。どちらも病むポイントはそれぞれ異なるにしても、互いを愛していて大切で仕方がないという大前提の上にあることは共通している。
恋愛の難しいところである。

さてそんな形で、繋がっていない時にすぐに不安定になってしまう私たちは、もう立派に共依存状態と言えるのだろうと思う。
今この記事を書いているこの瞬間でさえ繋がり続けているのは、この時代ならではというか、無料通話アプリに感謝というか……

そもそも私は元はといえば全く違う傾向の人間だった。
MBTIで言うところのENTPの私は、基本メンタル鬼強の自由人で束縛を嫌うので恋人同士の共依存などとは無縁と思っていた。
ところがINFJの今の彼と出会って面白いくらいに今までに無かった自分が引き出され、見えなかった自身の深層心理なども見えてきたので、その話は、改めて別の機会に書き記したいと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?