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『アナと雪の女王』ハンス王子に学ぶ「影響力の武器」6つのテクニック

『影響力の武器』という承諾誘導の心理学を解説した本を読んだので、内容をシェアします。ハンスの戦略をお手本に、本で紹介されている「6つの武器」を覚えていきましょう!


「影響力の武器」という本はご存じですか?

みなさん、一度は耳にしたことのある方も多いはずです!

「影響力の武器」はアメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニによって書かれたロングセラービジネス書。

人々の心を動かす「影響力」について、心理学にもとづく原則から分かりやすく説明しているんです!妙に納得してしまう実例も盛りだくさんで、プロの「承諾誘導」のノウハウがキュッとまとまった一冊。

この本では、「承諾」メカニズムのキーとなる6つの原則を紹介しています。

私自身もこれを初めて読んだとき、セールス、広告、勧誘など、身の回りでも平然と使われている数多くのテクニックが丸裸にされたような衝撃を受けました・・・。

そんな風に読み進めていたら、ふと、このテクニックを使いこなす人物像にピッタリの人が思い浮かんでしまいました。


それは、ディズニー映画『アナと雪の女王』に登場するわれらが王子"ハンス”です!

映画を観た人は、覚えていますか?

はじめからアレンデール王国の王位を狙っていたハンスは、戴冠式の日に出会ったアナと婚約まで勝ち取りました。

ストーリー前半では、ハンスは「隣国の貴公子」としてロマンチックに描写されているため気付きにくいのですが、正体が分かったうえで観なおしてみると、かなり巧妙で周到な行動計画があったことがわかります。

そうです。ハンスは賢かったんです。

『影響力の武器』では相手の承諾を誘う「6つの武器」が挙げられています。ハンスの行動には、そのすべてが詰まっている。しかも、冒頭たった20分の間にです・・・!

これは良い勉強材料になるぞ!と思ったので、個人的な備忘録も兼ねてハンスの行動をおさらいしてみます。

・『アナと雪の女王』を観たことがある人
・『影響力の武器』の内容が気になる人

ぜひ読んでいってくださいね。

それでは一緒に、学んでいきましょう!

1.返報性のルール

1つ目の武器は「返報性のルール」

これは「他人に何かしてもらったら何かを返したくなる」という人間心理のメカニズムのことです。

「返報性のルール」は、自分に何かを与えてくれた人に「借りがある」といった強い義務感を生じさせることで知られています。

しかも、このルールは自分からお願いしたものでなくても同じように働くことがわかっています。

つまり、借りを作る相手は選べないんです。

ハンスの行動を例にとってみましょう。

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戴冠式のパーティーにて、アナがエルサと揉めてヘコんだあと、人の波に巻き込まれてしまい転倒しそうになるこのシーン。

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ここでハンスが颯爽と登場。アナの手を取って助けます。

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落ち込んでいたアナにとって、まさにベストタイミングのアシストですよね。

ここでアナは「助けてもらった」ことへの恩義から頼みを聞き入れやすい状態になります。

出会ってすぐに相手に何かを与えることから始める。これだけで、相手に次の頼みを聞いてもらいやすくなります。

「返報性のルール」は6つの武器のなかでも最もシンプルなテクニックといえます。

2.コミットメント

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「ねえ、ちょっとおかしなこと言ってもいい?」「そういうの大好きだ!」
"Can I say something crazy?" "I love crazy."

有名な挿入歌「とびら開けて(Love is Open Door)」の歌い出しですね。

実はここにも、承諾誘導のテクニックが隠されています。

紹介する2つ目の武器は「コミットメント」

これは、「一度自分が表明した意見や行動に対して、それと一致する要求を受け入れやすくなる」ルールのこと。

もう一度、ハンスの言葉を振り返ってみましょう。

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[アナ]ねえ、ちょっとおかしなこと言ってもいい?
(Can I say something crazy?)

[ハンス]そういうの大好きだ!(I love crazy.)

ここで「おかしなこと(crazy)」を発言(コミットメント)させていることがポイント。(英語原文のほうが直球で分かりやすいですね)

人は一度コミットメントをしてしまうと、その発言に一致した行動を取りやすくなります。

つまり、一般的におかしいことだと分かっていながら口に出した「ハンスへの言葉」によって自分の立場をコミットメントしたアナは、直後の(これもポイント)ハンスの求婚を受け入れやすい状態になったといえます。

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[ハンス]おかしなこと言ってもいい?僕と結婚してくれ!
    (Can I say something crazy? Will you marry me?)

[アナ]もっとおかしなこと言ってもいい?もちろん!
    (Can I say something even crazier? Yes!)

歌詞に繰り返し出てくるフレーズに注目してみると、コミットメントにコミットメントを重ねるアナの様子がよくわかりますね。

これは承諾誘導のテクニックの一つ。コミットメントを行うと、人は自分自身の決定にこだわり正当化するようになっていくんです。

現実にも、「一貫性を保ちたい」という人々の気持ちを利用した承諾誘導はありふれています。

スーパーの試食コーナーで、「いかがですか?」と聞かれて何気なく「おいしいですね」なんて答えてしまうと、そのあと購入を勧められたときに断りづらく感じますよね。

相手に受け入れさせようとしている要求と一貫するような発言や行動を引き出しておいたあとで、要求を行うのです。

3.社会的証明

「皆が同じように考えているときは、誰も深く考えていないときである。」
ーウォルター・リップマンー

3つ目の武器は「社会的証明」

これは、人々の他者の行動に合わせようとする行動原理のことです。

著者ロバートは、このルールが特に大きな影響力をもつ状況の2つの条件を挙げています。
その一つは、「不確かさ」。人々は、曖昧な状況で自分の判断に確信が持てないとき、他人の行動をみてそれを正しいものと考える傾向が高くなります。
二つ目は、「類似性」。つまり、人は皆、自分と共通点が多い人のリードに従いやすい傾向があります。

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アナにとって戴冠式という日は、生まれてはじめての知らない人だらけのパーティーでした。

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そんな「不確かな状況」で出会ったのが王子ハンス。それからふたりは「兄姉関係の悩み」などの「類似性」を見つけ、急速に距離を縮めていきます。

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[アナ&ハンス]あ!またそろった!

他にも会話の中、数多くの場面でお互いの「類似性」を強調していたハンスですから、当然この仕掛けには気づいていたことでしょう。

日本人の文化は、ほかの多くの国と比べても同調性が強く、いわゆる「群れたがり」であるといわれます。

「あなたと同じ工学部の男の子〇〇くんが『あの映画はよかった!』とおすすめしていたよ」

なんて言われたら、私も「観てみようかな」という気になってきますね。

4.好意

4つ目の武器は「好意」

好意のある相手からの要求は聞き入れやすい。私たちが考えている以上に、この影響は大きいことがわかっています。

ここで著者は、好意につながりやすい要素を外見の魅力・類似性・単純接触などいくつか挙げています。

なかでも興味深いのは、「連合」です。

よい出来事やモノと結びつけて考えたものは好意をもたれやすいということがわかっています。

例えば、「朝の目覚ましにセットしていた曲のことが、自然と嫌いになってしまう」といった経験はありませんか?
これも、「起きなければいけない」という嫌な事象と「音楽」が心の中で結びつけられたから。無意識のうちに連合は起こっているのです。

ハンスの印象も、本来関係のない良いニュースと結び付けられるよう操作されていた可能性があります。

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アナにとってずっと楽しみにしていた戴冠式の日に出会ったことは、「幸せな日」と「ハンス」を結び付ける理由になったといえるでしょう。

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アナは順調に、ハンスへの好意を高めていきます。

5.権威

5つ目の武器は「権威」

人々は、権威のある者の要求に自動的に従ってしまうことがさまざまな研究からわかっています。

「人々は何を言ったかではなく誰が言ったかで判断する」ともいわれますよね。

みんな、何かスゴそうにみえるシンボルから判断してしまうということです

ハンスの例をとってみれば、権威のシンボルは気品あふれる「服装」や「馬」などが当てはまります。

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港にて、アナとハンスのファーストコンタクト

権威のシンボルをもつ人は、そうでない人よりも頼みを聞き入れてもらいやすい。私たちが考えている以上にこの影響は大きいということが研究からわかっています。

著者は現代のアメリカにおける権威のシンボルの例として、「肩書き」「服装」「自動車」を挙げています。

私たちにとっての権威のアイテムとは、何でしょうか?

「高級車」「腕時計」「ネクタイ」・・・

ふだんの自分が、他人の何に注目して判断しているか意識してみるのも面白そうです。

6.希少性

6つ目の武器は「希少性」

これは、例えば「数量限定」や「期間限定」のように、希少性が高く見えるものの価値を高く評価してしまうルールのこと。

本の著者はこの原理の理由の一つに
・選択の機会や自由を奪われることへの反感
があると説明しています。

「今を逃したらもう買えなくなるかも・・・」そんな思いが消費者の感情を揺さぶるというわけです。

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アナにとって戴冠式の日に体験したパーティーやハンスとの時間は、それまで夢にも見なかった自由を手に入れた経験でした。

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当然、これが続けばいいのに・・・と思うはずですよね。

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そんなアナの願いに対して、エルサは断固拒否します。

今後城を開くことも、アナのハンスとの結婚も認めません。

それに対し、強く反論するアナ。

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冷静に考えてみれば、アナとは幼少期からの信頼関係があるエルサからの忠告ですから、もっと受け入れてもおかしくはないはずですよね。

ですが、一度抵抗感が湧き上がるとアナの感情はもう止まりません。反抗期の子どもと同じです。自由を奪われることへの反感なんです。

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ここでアナが強情になったのは、希少性の原理に心を動かされた行動の結果だといえるでしょう。

ハンスにとってはここでの姉妹喧嘩は超ラッキーでした。

ハンスは後半のシーンで、エルサは初めから事故死に見せかけて消すつもりだったということを話しています。だからエルサがアナと衝突を起こして城を出ていったのはとことん都合がよかった

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もっとも、アナが既にハンスの術中にハマりこんでいる状態なので、二人の衝突がなかったとしてもアナが婚約にこだわることはハンスの目算通りだったことでしょう。

7.まとめ

以上、『アナと雪の女王』に登場した王子ハンスの行動に沿って『影響力の武器』の内容を要約してきました。

人間ならば誰しも心を動かされてしまう承諾誘導のテクニックは、現実にもたくさん存在します。

ここで紹介したテクニックはいろいろな場面で、自分の身を守ったり、誰かの手を借りたりするのにも使えるかもしれません。

そんなときにはわれらが師匠ハンスを思い出してみてください。

それでは、また👏

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