ショートストーリー | 共生 | シロクマ文芸部
春と風。
サイコロと下駄。
フランス人と生クリーム。
なんの話?
サイコロを二つ、手の中で動かしながら歩くおじさんは、怖い顔をして下駄を鳴らす。
一方、なんにでもスプレータイプの生クリームをかけてしまうフランス人留学生は、いつだってハッピーだ。
春と風。
コロコロとブシュー。
カランコロンとハッピー。
なんの話?
今日ね、道端でね。
髪を乱して、目は虚ろ、くわえタバコで道のど真ん中にタバコの箱を積み上げているおばさんがいたよ。
うん。おばさん。
だって、悲しそうだったし。
しゃがんで見えたパンツがおばさん色だったし。うん。タバコ吸ってたし。
わたしから見たらね、タバコ吸ってる女の人はみんなおばさんだよ。
こんな話。ほんとの話。
春と
風。
きれいだな。
いらいらしながらサイコロこねる人も、生クリームだらけの顔で笑ってる人も、ついには積み上げたタバコの箱を枕にして寝ちゃったおばさんも、みんな春の陽気の中で風を感じていたんだね。
それでいいよ。
春だって。
風だって。
おじさんだって。
留学生だって。
おばさんだって。
わたしだって。
[完]
note。休んでいるつもりなんですけど、ついお題を見てしまって。
しばらく読み専門です。
まだ長文を読むことは控えてます。
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